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zoom RSS 映画評「草原の椅子」

<<   作成日時 : 2014/08/07 10:37   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・成島出
ネタバレあり

上映時間が年々長くなっている邦画らしく、139分という上映時間の長さが気になったが、映画「泥の河」(1981年)で気になる小説家になった(と言いつつ一作も読んでいない)宮本輝が原作なので観てみることにした。

カメラメーカーの中間管理職・佐藤浩市は所謂バツイチ。一緒に暮らしている大学生の娘・黒木華から、心を閉ざした四歳の児童・貞光奏風君を預かってくれないかと頼まれる。バイト先の上司の後妻が残した子供で、母親の暴力に怯え、誰とも口を利かない。少年にとって心が許せる娘が試験中で、義父に当たる上司も家を空ける為の臨時的処置とのことだが、少年の扱いに試行錯誤するうちに次第に少年と心が通い合うようになる。そんな二人にとって、取引先のカメラ店社長・西村雅彦も良い緩衝役になってくれる。
 バツイチの寂しさは雨の中に発見した着物姿の美人・吉瀬美智子を追いかける気持ちにさせ、彼としてみれば彼女の経営する陶器店で高い買い物をする羽目になるが、足繁く通って親しくなった彼女も訳あり離婚をしていて、少年の良き相手となる。
 少年とは次元の違うところで大人三人は各々の悩みを抱えており、佐藤の知り合いの青年が出版した写真集に収められたパキスタンの秘境フンザに、施設に入れる予定の少年との“最後の旅”に皆で出かけることにする。

1980年代に少なからぬ欧米映画が示したように異郷は訪問者の心理・感情に大きな影響を与えがちであり、本作でも正にそうした化学変化が登場人物の間に起こる。つまり誰もが想像するであろう結末を迎えるのである。

児童虐待問題を背景に据え、この作品が見せようとしたのは寧ろ大人たちが少年を通して何かを決断し、決断することで再生していく道である。最初に社長が女性問題で失敗するところから始まり、一筋縄ではいかぬ男女の問題が通奏低音としてずっと鳴り響いている。そこに3・11以降取り上げられることが多くなった“絆”をモチーフ的に加えて、人間は何のために生きるのか追及する。

本作がそこまで示しているかどうかはともかく、最近思うに、多くの人間は自分で気づいていないだけで自分以外の人の為に生きるのである。最初から自分以外の人の為に生きていると思っていれば、自分に何があっても不幸には感じない。少なくとも利他的に生きる人は、利己的に生きる人より幸せなはずである。ただ、こういう人は本当に少ない。だから世の中には不幸が蔓延しているのだ。

閑話休題。

幕切れを筆頭に調子の良すぎるところがあるものの、良い意味での“作りものらしさ”を発揮して案外きちんとしたお話になっているが、脚本に五人も関わっているせいか、内容に比して上映時間が長い点がどうしても気になる。120分くらいで同じ程度の印象をもたらすことができたら★一つくらいは余分に進呈したくなったろう。

最後の山峡フンザの景色は見応え十分。大スクリーンで観たらこれまた★一つの価値はあったかもしれない。しかし、フンザのあるパキスタンは隣国インドと張り合った結果核保有国になったし、イスラム原理主義のテロリストが何をするか解らない怖い国でもある。今そこにある危機として、テロリストと核が結びついた時こそ怖いものはない。人間というのは全く面倒くさい生き物である。

「そして親になる」でしたね。

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草原の椅子
公式サイト。宮本輝原作、成島出監督。佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子、小池栄子、AKIRA、黒木華、貞光奏風、中村靖日、若村麻由美、井川比佐志。一応、「世界にひとつのプレイブ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2014/08/07 12:06
『草原の椅子』
□作品オフィシャルサイト 「草原の椅子」□監督 成島 出□脚本 加藤正人、奥寺佐渡子、真辺克彦、多和田久美□原作 宮本 輝□キャスト 佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子、小池栄子■鑑賞日 2月24日(日)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2014/08/07 12:20
草原の椅子/佐藤浩市、西村雅彦
芥川賞受賞作家である宮本輝さんが阪神・淡路大震災で被災したことをきっかけにシルクロード6,700キロ、40日にわたる旅を体験して執筆された同名小説を『八日目の蝉』の成島出監督が ... ...続きを見る
カノンな日々
2014/08/07 15:25
草原の椅子  ★★★.5
宮本輝の同名小説を、「八日目の蝉」の成島出監督が映画化した人間ドラマ。人生の岐路に立つ大人3人と幼い少年が、最後の桃源郷と呼ばれる地で新たな一歩を踏み出す。日本映画初の長期パキスタンロケによる雄大な自然の映像に心が洗われます。出演は、佐藤浩市、西村雅彦... ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2014/08/08 15:33

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ちょっとというか、かなり長すぎる映画でありましたね。
もう少し短くまとめて欲しいですな〜

イスラエルの原子力発電所にロケットが撃ち込まれましたな〜
ホンマに知らんで〜であります。
ねこのひげ
2014/08/09 18:46
ねこのひげさん、こんにちは。

暇があったら2010年代の映画の平均上映時間を国・地域別に出したいと思いますが、日本映画は他の国より長いと思います。
暫くはアメリカ映画の長さにうんざりしていたのですが、最近は大作と小品の棲み分けが出来ていて長いのは長い、短いのは短い、という感じになっていますね。

>イスラエル
僕の知る限り原発の被弾はなかったようですが。
日本もアメリカにのこのこ付いていったら、原発にアラブのテロリストが乗っ取った飛行機で突っ込まれるかもよ。そんなことされたら秘密保護法なんて何の役にも立たない。やだやだ。
オカピー
2014/08/09 20:40
原子力発電所・・・・付近が抜けておりました。
原子力発電所付近でありますね。
いつでも破壊できるんだという脅かしでありましょうが・・・
破壊すれば、自分たちも巻き添えになるのですが、聖戦で死ねば天国で美女に囲まれて生活できると洗脳されている連中ですから困ったことです。
ねこのひげ
2014/08/10 05:59
ねこのひげさん、こんにちは。

わざわざ追加コメント済みません。

>聖戦
殆ど国家の体を成していない北朝鮮ですら一応体制保持に努力しますから、抑止力が働く可能性が高いですが、テロリストは体制保持なんて当座は関係なく、何をするか解らないので、怖いですね。
オカピー
2014/08/10 21:51

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