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zoom RSS 映画評「黒いスーツを着た男」

<<   作成日時 : 2014/06/27 10:52   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年フランス=モルドヴァ合作映画 監督カトリーヌ・コルシニ
ネタバレあり

2週間ほど前に観たフランス映画「クロワッサンで朝食を」はエストニアが製作に絡んでいたが、今度はもっとマイナーな東欧の国モルドヴァが絡んでいる。背景には欧州における人々の社会的移動の激しさがあり、中でもフランスの移民問題が大きいことがこれらの作品から伺われる次第で、興味深い現象と言うべし。映画は社会を映す鏡とはよく言ったものである。

さて、本作は、心理的なサスペンスこそあれ、純然たるドラマであって、色々な映画サイトで紹介されている“サスペンス”、まして“クライム・サスペンス”などでは決してない。そう思って観始めると当てが外れますぞ。

10日後に社長の娘アデル・エネルと結婚を控え、勤務先の自動車ディーラーの支配人になった青年ラファエル・ペルソナーズが、深夜に自動車事故を起こし、同乗していた修理工レダ・カテブの勧めに従ってそのまま現場を後にする。それを目撃していたのが若い哲学教授の子供を宿した学生クロティルド・エスムで、利他的なのであろう、担ぎ込まれた被害者が意識不明のまま横たわる病院に赴き、その妻アルタ・ドブロンと懇意になる。
 根が善良なペルソナーズは心配で病室にこっそり入り込み、その姿をクロティルドに見られてしまう。彼を追った彼女は幾ばくかのお金を引き出すが、後日それを知ったアルタはそれだけで終わらせたことに怒りを隠せない。問題が複雑になったのは被害者が不法就労のモルドヴァ人であるという事実で、支配人になったとは言え、若い彼には金銭的な面についても被害者家族を満足させることが出来ず、金銭の工面で苦境に立たされ、結果的に間に入ることになったクロティルドも難しい立場に追い込まれる。

原題は「三つの世界」であり、これは「三人の苦悩」と意訳しても良いと思うが、被害者(=事故被害者の妻)は言うまでもなく、加害者と仲介者が人並みに善良であるが故に苦しむことになる。

毎日どこかで起きている交通事故を素材に、加害者と被害者だけでなく、その間に入った第三者も苦しむというアングルを加えた点が変化球として上手く機能、共同脚本も兼ねる監督カトリーヌ・コルシニがじっくりと三人の苦悩を描き、人間探求の“ドラマ”としてなかなか見応えあり。その苦悩の背後に移民問題や貧富の差が揺曳してもいる。バルザックが今生きていたらこんな人間喜劇を書いたのではないか。

このところパッとしない作品が続いているので、採点は少々甘めになっているかもしれない。

ペルソナーズはアラン・ドロンの再来とかや(宣伝文句)。貧困から抜け出ようともがく野心を発散させていたドロンに比べると中流階級的だが、久しぶりにムードあるハンサム男優を見た感あり。後の作品を楽しみにしたい。

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黒いスーツを着た男 ★★★.5
『彼女たちの時間』のカトリーヌ・コルシニが監督と脚本を務め、フランスで人気の美形俳優ラファエル・ペルソナーズが主人公を熱演したクライムサスペンス。ひき逃げ事故を起こした加害者男性と目撃者の女性、さらに被害者の妻らの運命が交錯し合う。『ミステリーズ 運命... ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
車を運転していると、そんな運転をしていると事故を起こすぞ!と思う車に出会いますね。
事故を起こして反省していればかわいげがあるんですがね〜

浅野忠信さんがモスクワ映画祭で主演男優賞を受賞したそうです。
『私の男』もグランプリだそうです。
愛の葛藤は辛いものです。
ねこのひげ
2014/06/29 07:52
ねこのひげさん、こんにちは。

>車を運転していると
ありますね。
昔、狭い一方通行の道を猛スピードで逆進してくる車に出会って慌てましたよ。
結構多いのがブレーキを踏んで曲がり始めてから方向指示を出す人。ブレーキを踏む3秒くらい前に出して貰わないと泡を食いますよ。方向指示を出す意味が解っていないっ!

>浅野忠信さん
モンゴル人の血を引いているそうで、ロシア受けしそうですよね。
オカピー
2014/06/29 13:49

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