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zoom RSS 映画評「狼たちの午後」

<<   作成日時 : 2014/06/10 11:24   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1975年アメリカ映画 監督シドニー・ルメット
ネタバレあり

1972年に実際にあった強盗事件を基にシドニー・ルメットが映画化した際物ドラマの傑作である。間違って使っている人が多いが、本来“際物”とは際どいもののことではなく、事件の起きたすぐ後に物語化・劇化・映画化されたものを指すのですぞ。

リアルタイムで観て以来か、或いは三回目か、いずれにしても随分久しぶりの再鑑賞。

真夏のニューヨーク、閉店間際の銀行を元銀行員アル・パチーノをリーダーとする二人組が襲うが、豈はからんや、金庫には1000ドル余りしかなく色々とかき集めるうちにチャールズ・ダーニングを交渉役とする警察が現れた為に9人の銀行関係者を人質にせざるを得なくなり、海外渡航用の飛行機とそこに行くまでの乗り物を用意するように話を運んでいく。

犯罪映画ではあるが、一般的なサスペンスやアクションではない。犯罪風俗劇と言って良い内容である。
 パチーノ演ずる強盗リーダーは、太った妻が言うように悪党タイプではなく、恐れをなした仲間一人を早々に帰しているし、銀行員に対する態度も紳士的とは言えないまでも恐怖を余り与えない様子に終始する。ちょこまか動く様子はどこか微笑ましく、人質にも余裕が生まれ、周囲を取り囲む野次馬連の共感も生む。この辺りの反官憲的な様相がまずベトナム戦争末期当時の社会的気分をよく反映していて興味深い。パチーノもベトナム帰還兵らしいし、上述した本来の妻以外に男性の妻クリス・サランドンもいて、同性愛絡みの騒動が取り沙汰されて面白味を発揮しているのも風俗劇たる所以。

相棒のジョン・カザールは狂気を宿しているとは言わないまでも神経質そうな印象で、猟銃を手放さない。パチーノと対照的な配置で、言わばサスペンス担当である。警察のチャールズ・ダーニングを含め、誠に適材適所の配役と言うべし。

また、ルメットの各場面の処理が鮮やかで、125分という当時としては比較的長めの作品ながら一瞬たりとも緩む瞬間を我々に覚えさせない演出力に脱帽するしかない。昨今の作品と比較すると、余計に感じる。

開巻直後にかかるのはエルトン・ジョンの「アモリーナ」。この頃の映画は使われた音楽をクレジットで紹介しないことが多く「何だったけか」と思ったが、すぐには解らない。エルトン・ジョンであることは間違いないので、1972年前後のLPをチェックしてみたのだった。

エキセントリックな魅力のあるカザールはこの3年後に死んでしまう。映画界にとって損失だったなあ。尤も、余りに昔なので、死んだことも忘れていましたけどね。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
おウチのほうはいかがですかその後。
ほんと住む所は大事ですから。

余り知られていないガブラス作品と
やっぱり傑作、誰に言わせても傑作の
「狼たちの午後」。また板に乗せてゴチャゴチャ
言ってる拙記事持参しました。

トラボルタが確か「ソード・フィッシュ」で
映画ウンチクのたまっていた場面ありましたね。
何だかんだ言っていたような気がしますが
覚えているのは、ただひとこと
「『狼たちの午後』、あれは名作だった!」(^ ^)
vivajiji
URL
2014/06/10 18:16
vivajijiさん、コメント有難うございます。

いつ工事が始まるか解りませんけど、現在二階の無償リフォームの為に物品を整理しているところで、映画鑑賞もブログも読書も集中できない状態です。
一階は一応無事ですので、生活はできています。
二階のオーディオ・ヴィジュアル製品は結果的には動きましたが、いつ壊れるか解らないので、二カ月以内に壊れた場合は補償して貰うことにしました。
しかし、あの部屋の状態でどうやってチェックしろと言うのだ!(怒)
永遠に片付かないであろうと思われるくらいものがありまするTT

>ガブラス作品
彼が敢えて作らなくても良い作品でしたよね。
「Z」「告白」「戒厳令」「ミッシング」のパワーを考えるとかなり寂しい出来でした。

>「『狼たちの午後』、あれは名作だった!」(^ ^)
名台詞ですなあ。
アメリカでも評判が好さそうで、良かった。
オカピー
2014/06/10 20:12
>ジョン・カザール
ちょっと変わった顔なので、そういう風な役が多かったような記憶が。
これはリアルタイムで観ています。映画を観るのがおもしろくてしかたがなかったころかなあ。ただし大人になってから見返して、ますますドラマのおもしろさがわかりました。
ジョン・カザールがやった役が、ちょっと泣かせるんですよね。外国へ逃げよう、どこへ行きたい? と聞かれて大真面目に「ワイオミング」と答えるところ、それに対するアル・パチーノのリアクション。いいねえ、というか、つーんときますよ。
nessko
URL
2014/06/10 20:28
nesskoさん、こんにちは。

「ゴッドファーザー」「ディア・ハンター」も神経質そうな役柄でしたよね。
nesskoさん同様、映画が面白くてたまらなかった頃彼は活躍していました。

ワイオミングが彼にとっては外国であるという、アメリカの小市民的な発想。微笑ましいけれど、泣かせる場面でした。「何が彼をそうさせたか」というところが胸を打つのでしょうね。
オカピー
2014/06/11 11:03
初めて観たときは驚きましたね。
アルパチーノだから、ただの銀行強盗ではないと思っていたけど・・・
まさか同性愛の彼の性転換費用のためとは・・・・
場内で失笑が漏れていたのを覚えております。
ねこのひげ
2014/06/15 05:41
ねこのひげさん、こんにちは。

実話だと聞いたのは、公開から何年か経ってからでしたよ。
同性婚にもショックでした。現在はアメリカで認める州が増えていますが、それでも全部の州ではないですよね。
オカピー
2014/06/15 21:03

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