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zoom RSS 映画評「赤い月」

<<   作成日時 : 2014/05/06 09:14   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2003年日本映画 監督・降旗康男
ネタバレあり

近年の文学に疎い僕も作者なかにし礼が作詞家として有名なので「赤い月」という小説の題名は記憶に残っていた。半自伝小説と思われる。映画版は地上波で放映されたような気もするが、いずれにしても観ていないので、遅ればせながら観てみることにした。

香川照之が渡った満洲で関東軍との関係により酒造業に成功する。その夫人として豪勢な生活を享受する常盤貴子は、昭和19年に事業協力者として酒造を訪れた本職は関東軍保安局の伊勢谷友介を秘かに恋慕し、それ故、彼が私通していたロシア人女性家庭教師をスパイとして密告、保安局員の正体を現した伊勢谷が彼女を殺す。

本作で一番面白いのは実はこの部分で、説明を端折りすぎて解りにくいところがありながらも、彼がロシア女性がスパイでないと承知していたのに彼女を殺した心理は、厭世的になっていた彼女が願望する自殺を彼が愛するが故に幇助したと十分理解することができる。そして彼は自分以外の、恐らく自分より価値があると信じる人々が死んでいく絶望に耐え切れず、拷問に使っていたアヘンにより自ら中毒患者になり、死への道を歩もうとするのである。全体のパッケージは大衆小説的であるのに、彼が彷徨する部分では彼の心理が深く沈潜する映画的ムードが強く出ていてなかなか印象深い。
 お話が流れにぎこちないところがある為上手く伝わって来ないので、ここに着目した人は少ないかもしれないが、意外や純文学である。

後半。日本の敗戦が決まって関東軍が一般国民を置いてとんずらした後ロシア人に連行された夫が死んだことを知らされた常盤女史は、ひどい中毒に陥っていた彼を懸命に中毒から救い出そうとし、その思いはやがて中毒から抜け出した彼に伝わる。
 死を美化することの多い当時の日本人の中にあって生きることに貪欲な彼女にしてみれば、性=生である。多情と言えば多情だが、そうとばかりは言いきれないものがある。

惜しむらくは、満洲に残りソ連当局への出頭を希望する伊勢谷氏が別れ際にヒロインに愛と死との関係を述べる台詞が上滑りして、白け気分が出てしまう。この幕切れ次第では、見かけより良く出来ている映画という評価もする気になったのだが、幕切れで“九仞の功を一簣に欠く”結果となり、惜しい。

関東軍は本政府が御しかねる第二の政府だったとも聞く。しかし、敗戦すれば即とんずらとは全くひどい。国とは事実上政府・官僚上層部のこと。彼らにより苦しめられるのは庶民。との政府も「国を愛せよ」と言うが、良い国だったら言われずとも国を愛するよ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
戦争というのは、まさに狂気の世界で、慰安婦など問題にならないくらい酷いことを世界各国の兵隊たちはやっているわけで、ソ連兵はベルリンの進行したとき女と見れば犯しまくっていたし、戦車で逃げる難民を轢き殺して後に残って光っているものがあるのでみたら金髪と結婚指輪だったとか・・・映像で残っているんですな〜
もちろん、アメリカ兵もフランス、中国、日本も似たり寄ったりのことをやっているわけでありますがね。
始めたらまた似たようなことが起きるでありましょう〜
ねこのひげ
2014/05/10 06:09
ねこのひげさん、こんにちは。

日本が悪いとか、中国が悪いとか、韓国が悪い、といったのは低次元のお話で、どこが悪かろうが反省して戦争しないようにしないといけないのに、ナショナリズムに傾く、どこの国のお偉方もそれに賛同する方々もまるで子供ですよ。
いまのまま行ったら10年後くらいには韓国・台湾みたいに兵役が義務になるのではないですか? 僕ら年寄はお呼びでないにしても平成生まれの人は“やばい”かもしれませんね。
オカピー
2014/05/10 20:01

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