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zoom RSS 映画評「エデンの東」

<<   作成日時 : 2014/05/16 10:11   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1955年アメリカ映画 監督イーリア・カザン
ネタバレあり

ジェームズ・ディーンの主演した三作はいずれも秀作であるが、中でも中学の時リバイバルにて映画館で初めて観た本作が好きだ。その後三回くらい観ていると思う。
 原作はジョン・スタインベックのかなり長い小説「エデンの東」で、その後半部分が実に巧みに圧縮されて映画化されている。その意味でも大変素晴らしい。

1917年。キャル(ディーン)は、父親アダム(レイモンド・マッシー)が死んだと言っている母親が生きていることを知り、隣町で酒場もどき(原作では娼館)を経営している母親ケイト(ジョー・ヴァン・フリート)を尾行し、後日自分の正体を明かして交流が始まる。優等生的である為父親が愛情を傾けている双子の兄アロン(リチャード・ダヴァロス)はそのことを知らない。
 母親だけでなく父親の愛情に飢えていたキャルは父の歓心を買おうと、レタス収穫で知恵を絞ったり、冷凍レタスで大損害を受けた分を戦争景気による大豆の売買で儲けて誕生日プレゼントに現金を贈るが、彼のけなげな善意は尽く拒絶される。婚約をプレゼントにし父親を喜ばせた兄の現実を知らない能天気さに怒りが爆発、水商売をしている母親の存在を知らしめる。亡くなったものと信じ天使のような母親を想像していたアロンはこれにショックを受けて出征、そのショックで今度は父親が脳卒中を起こし倒れる。
 少女の時に実母を失った兄の恋人アブラ(ジュリー・ハリス)は、キャルに同病相憐れむ仲として親しみを覚えていたので、アダムに彼の父を思う真情を説くと、遂に病床の父親は偏見を解く。

中学生の僕は、キャルの切ない青春像にいたく心打たれた。父親にしてみれば夜の街に繰り出すような不良息子ということになるが、その背景にある愛情の渇望に気付いてもらえないことがキャルの悲劇である。その悲しみをディーンが余すところなく演じ切って見事。今更ながらその感を強くする。

もう一つの収穫は当時始まったばかりのシネマスコープの長さを最大に生かしたテッド・マッコードの撮影で、抜群の環境描写を筆頭にディーンを交えたショットに素晴らしいものが多い。キャルが母親を追いかけていくショットの積み重ねなど圧巻と言うべし。
 さらに彼が大豆畑に嬉しそうに寝そべっているワン・ショットが個人的にお気に入り。40年以上前一緒に観た姉もこのショットが好きと言っていたのを憶えている。個人の好悪を別にして、敢えて分析すれば、彼の嬉しそうなこの繊細なショットがあるだけに、後段でその彼の好意が拒否される場面の切なさが際立って来るのである。

撮影上の工夫として、非常に端正な画面設計の中にあって、キャルと父親の心がすれ違う場面では必ずダッチ・アングル(斜角)を用いている。少なからぬ優れた監督作の中でも一番の作品と言いたいイーリア・カザンと撮影監督マッコードが親子の心が噛み合わない場面ですよと親切にも教示しているのである。

初鑑賞時僕も未来に夢を馳せていた・・・不安を抱きつつも幸せでした。

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午前10時の映画祭「エデンの東」
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
>彼が大豆畑に嬉しそうに寝そべっているワン・ショット

私も好きです。芽が出て来たのを見てたのですよね、たしか。
すごくかわいらしい、いじらしいかんじで記憶に残っています。
それだけに、お父さんにその気持ちが伝わらないのが見ていてとてもつらくなってくるのです。
nessko
URL
2014/05/16 23:07
走る列車の上で寒そうにしているディーン、
拒絶されながらも認めて欲しいディーンの
あの切ない表情、
ちょっとパット・ブーンに似の兄アロンが
失意の余り汽車の窓に顔面をぶつける場面・・・
とても印象に残っていますね〜
(プロフェッサーと違って、私のは暗い。笑)

映画界に多大な功績残してもカザンは
あの忌むべき汚点が今なお後をひいていて
彼を検索しても明るい話題があまりないのが
残念ですね〜

J・ディーンのファンといえば
亡き小森のおばちゃまがTVなどで
キャーキャー言ってた記憶が。(笑)
ついでにプレスリー・ファンでは
湯川れい子さんが有名でしたよね〜
プロフェッサー、覚えてます?(^ ^)
vivajiji
2014/05/17 07:50
nesskoさん、こんにちは。

正に仰る通りです。
最高でした。傑作の中でも傑作の場面だと思います。
オカピー
2014/05/17 21:07
vivajijiさん、こんにちは。

列車のショットも好きでしたよ。
アロンはそれまでが能天気すぎましたね。

>カザン
そうなんですよね。
そもそもあんな思想が幅を利かせたこと自体が可笑しいと僕は思っています。カザンもある意味被害者ではないですか?

>小森のおばちゃま
TV以外にもラジオの番組があり、聞いていました。ディーンは大ファンだったので、よく話題になっていましたなあ。
湯川れい子さんのプレスリー・ファンぶりもよく憶えていますよ^^
オカピー
2014/05/17 21:14
名作でありますね〜

小森のおばちゃまは毎年ディーンの命日にディーンの墓にお参りをしていたそうで、テレビの番組で取材していたのを覚えています。
ねこのひげ
2014/05/18 04:41
ねこのひげさん、こんにちは。

そう言えば、「スクリーン」にも毎年書かれていましたし、ラジオでも語っていました。
十数年前にわが生涯のベスト100というのを選んだことがあり、ちょっと気取った選出でありましたが、ベスト10に入れた映画は殆ど十代の時に映画館で観た作品なんですね。実力的にはもっと凄い映画があっても、若い感性で捉えられた新鮮な感動・驚きに優ることはなかなかできないみたいです。
勿論、「エデンの東」は、ベスト10に入っています^^/
オカピー
2014/05/18 10:25
オカピーさん、こんばんは。
わたしは、この作品を高校時代にリバイバルで観ました。ジェームズ・ディーン特集で同時併映は「理由なき反抗」でした。同時の感性にはこちらの方が心に響き、自分を同化させていたように思います。(高校時代、思い切ってリーゼントにしてみたのもこの作品の影響です。)
さて、「エデンの東」の記憶を辿ると当時どうしても理解出来なかったことは、アブラ(ジュリー・ハリス)の存在でした。当時のわたしには彼女がキャル(ディーン)への対応が不貞に近いのではないか?と、しかし背徳の雰囲気は全くなく単に純粋にキャルに接していることが不思議でなりませんでした。映画としてのミステイクではなく、子供に理解できない人間関係の深さを感じたことも間違いのないことでした。
オカピーさんは、どう理解しました?教えてください、
高校のとき以来観ていない作品なので今観ればまた異なる発見もあるでしょうね。
では、また。
トム(Tom5k)
URL
2014/05/24 22:43
トムさん、こんにちは。

普遍性という点では、確かに「エデンの東」より「理由なき反抗」のほうがあり、観る年齢や感性によってはピンと来るところがあるかもしれません。
 ただ、「理由なき反抗」は良い作品ではあるけれど、少々型通りと言える部分があるように思います。だから、僕は、映画的な鮮やかさで「エデンの東」を買うのであります。

>アブラ(ジュリー・ハリス)
あくまで映画からの印象ですが、彼女は最初に登場するところで「キャルは少し怖いところがある」と恋人のアロンに言います。しかし、キャルに接するにつれ、自分と同じ境涯にあると感じるようになったのではないでしょうか。彼女は父親が再婚した時にすごくがっかりしているんですね。アロンとどの程度ステディな関係だったのかはあの上映時間の中では解りかねますが、たまたま会ったのが少し前後しただけのことで、道徳レベルまで行く印象を僕は持ちません。逆に、キャルに同情していた僕は、アロンの能天気ぶりにキャル同様にイライラしました(笑)。
オカピー
2014/05/25 17:58

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