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zoom RSS 映画評「サンセット大通り」

<<   作成日時 : 2014/04/16 08:47   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1950年アメリカ映画 監督ビリー・ワイルダー
ネタバレあり

映画界を扱った少なからぬ映画の中でも1、2位を争う傑作である。4回目の鑑賞。

真価は全く別のところにあるのだが、本作を語る時一番最初に言いたくなるのが本作が僕の言う“幽霊映画”であるということである。「ネバー・ダイ・アローン」(2004年)という犯罪映画がこの手法を踏襲していて嬉しくなった。つまり、死体が語り手なのである。ただ、その叙述手法に拘ると本作の価値がぼけてしまうので本当は余り言わない方が良い。とにかく、回想形式が大好きなビリー・ワイルダーの一大傑作と言うべし。

落ち目の脚本家ウィリアム・ホールデンが借金で愛車を奪われそうになった為にある屋敷の車庫に逃げ込む。彼をチンパンジーの葬儀屋と間違えた屋敷の主人はサイレント時代の大スター、グロリア・スワンスンである。執事エリッヒ・フォン・シュトロハイムが、かつての大監督で彼女の最初の夫であることが、後で判明する。
 彼女の数少ない友人たちも今は仕事のない俳優たちで、その中にバスター・キートンがいる。勿論、僕は役者の名前で書いたが、本人役で出ているわけではない。しかし、この映画を観るような映画ファンなら、グロリアがサイレント時代の本当の大スターであり、シュトロハイムが同時代の大監督であり、キートンが本作同様に落ちぶれていたことを知っているわけで、かかる虚実を皮肉とも思えるタッチでダブらせる趣向の面白味――本作の場合は凄味と言って良いと思うが――を満喫することができるという次第。

しかも、趣向の面白さに留まらない。映画界にあっては避けられない、まして、サイレント時代の大スターの多くが味わった零落を、当事者ともいえるスワンスンやシュトロハイムに演じさせるというワイルダーの暴力的なまでの発想に、作られて60年以上経つ今観ても吃驚させられるのである。
 主人公がチンパンジーの死体を観る辺りから漂う、かつての栄光にしがみつき勘違いをし続けている老女優の狂気に時々武者震いを覚えながら観終わった。

伊丹十三が遺作「マルタイの女」で引用したのではないかと思われる、幕切れのサイレント映画的処理が圧倒的であると同時に、ワイルダーが大いに楽しんで作っているのが解ってゴキゲン。本人役で登場する大監督セシル・B・デミルに絡むシークエンスは壮絶、パラマウント社の女子社員ナンシー・オルスンの存在もお話の進行に大いに寄与して面白い。

実話でもないのに実名をばんばん使えるアメリカ映画の強みよ。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
グロリア
数年前になりますが 息子にこう言われたことが・・・ ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2014/04/16 15:05

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
すみません、確かグロリア・スワンソン
拙記事に書いたはず、と検索しましたら
カサヴェテスの「グロリア」。(笑)
単にグロリア繋がりで参上しました〜(笑)
加えて
この頃のプロフェッサー、体調もおよろしかった
ようで楽しいコメントの応酬もあり僭越ながら
懐かしくもありまして〜(^ ^)

「サンセット大通り」、大名作です!!
私も諸手上げて10点満点に1票投じます。
要するに気狂いの女の話、それがここまで
ゴージャスな語りに昇華できたのは
やはりワイルダーの手腕。

本日、激ヤセして主演男優賞オスカー獲得の
「ダラス・バイヤーズ・クラブ」鑑賞。
とにかく、ことごとく最近の映画は
「映画が小さい」!
比すこと自体、無謀ですが
「サンセット大通り」、例え狂ってても
人間像でかい!映画はまさに映画的に豊穣っ!
ああ・・・出るは、溜息ばかりなり〜(^ ^);
vivajiji
2014/04/16 15:23
冒頭のシーンでプールに浮かんでいるホールデンの死体を、プールの底から見上げているショットがあって、こんなに古い映画にこんな洒落たショットがあるなんてと驚いた記憶があります。
映画自体は期待が大きすぎたせいか、それ程唸った所もなくて、今一度見直したいと思った次第。双葉さんの☆☆☆☆★★点作品の一つですもんね。
十瑠
URL
2014/04/16 19:34
vivajijiさん、こんにちは。

拝読したところ2006年ですね。
全ての面で絶頂だったと思います。
色々文句を言いながら映画を観るのも読書するのも楽しく、ブログ仲間も数多くいらして、このまま人生が続くものと錯覚していたのかもしれません。
死ぬ時にならないと解らないですが、僕の人生を変えた一つにリーマン・ショックも入るだろうと思います。

本作は皮肉っぽい内容を面白く鮮やかな語り口で展開、十瑠さんの仰るようなプールの下から死体を撮るなんて洒落たショットもあり、グロリア・スワンスンに敢えて大時代的に演技をさせたり、映画ならではの迫力が満杯。
良き時代の映画に乾杯!

昨今の映画は、内容のお粗末ぶり陳腐ぶりをはったりに満ちた語りと加工した画像で誤魔化した作品ばかりで本当にげんなりしています。
オカピー
2014/04/16 20:00
十瑠さん、こんにちは。

>双葉さん
双葉師匠は商業映画としての枠を超えているお話であること、それを冷徹に突き放したハリウッドらしからぬタッチで進めたところを買われたようですね。
僕もよく作れたなという思いがあります。シュトロハイムはともかく、グロリア・スワンスンの度量が大きかったのでしょう。実際の彼女はあれほど落ちぶれてはいなかったようですが、それでもかつての栄光を考えれば、ハリウッド映画に精通している方なら誰でも虚実が混同するように作られていて度肝を抜かれますよ。

双葉さんにしても、これを1970年代に初めてご覧になったら☆☆☆☆★★ではなく、☆☆☆☆になったかもしれません。

確かに、凝りに凝った(割りに本当は大したことない)映画を観慣れている若い人が観たらどう思うか心配になる印象がなくはなかったですね。
nesskoさんのお話では「サイコ」でさえもうピンと来ない若いファンもいらっしゃるようですから。
オカピー
2014/04/16 20:13
オカピーさん、こんにちは。
わたくしこと、4月1日付け人事異動がありようやく自宅から通うことができます。残念なことでもあるのですが、姐さんのいる札幌から出ることになりました。
いやあ、内示から新赴任地まで、そしてこの2週間あまりの慣れない仕事、全く、疲れましたよ。ほんと映画化したらB級アクションでしたね。

さて、マダム・グロリア・スワンソン・・・良くこの作品を引き受けましたよね。そして、良くこれだけ醜い老女をこんなに上手に演じていますよね。プレミア試写会でこの主演女優に話しかけることのできる勇敢な俳優や映画関係者はいなかったんじゃないでしょうか?「女優魂」とか「迫真の演技」なんて言葉・・・軽くなリ過ぎてしまって、彼女の凄さを言い表せられませんよね。

>凝りに凝った(割りに本当は大したことない)映画
>「サイコ」でさえもうピンと来ない若いファン
オカピーさん!何とかしないとまずいですよ!

では、また。

P.S.ボルサリーノのクロード・ボランの音楽完全版DVD購入しました。素晴らしいです。
トム(Tom5k)
URL
2014/04/20 11:57
トムさん、少し(笑)お久しぶりです。

それでブログ更新やお遊びに来られる機会は増えそうですか?

こちら益々大変です。
大雪で屋根が壊れて来月復旧ができそうですが、費用が莫大なので、頭が痛いです。あれがなければ・・・いけない、いけない、考えると益々痛くなる。

>人事異動
僕も会社の再編で慣れない仕事と人間関係と遠距離通勤が嫌になって会社をリタイヤしたのですが、もう何年か勤めていればだいぶ楽ができたなあと思います。
しかし、あの過酷な状況を我慢すると病気になりそうだったので、死ぬ時にどちらが正解だったか解るといったところでしょう。
とにかく、支出に対し収入が少なすぎる・・・

最初は別の女優の候補もあったようですが、色々と問題があってスワンスンになったらしいです。
「みんな、実際のお話と思っちゃうのよね〜」とご本人はあっけらかんとしていたらしい、とあるHPで読みました。
凄い映画だと思います。

>音楽完全版DVD
いいなあ。
当方、余裕がないので、後数年間は市販ソフト購入致しません。
60歳になった時の預貯金次第ではまた考えるかもしれませんが、死んだ後余りお荷物を残すのも嫌だなあと思う今日この頃。
オカピー
2014/04/20 16:08

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