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zoom RSS 映画評「横道世之介」

<<   作成日時 : 2014/03/23 10:49   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・沖田修一
ネタバレあり

今月二本目の沖田修一監督作品は、一字違いの吉田修一の同名小説の映画化。例によってのんびり(最近の言葉で言うと、まったりか)した展開で、それも160分という、事件らしい事件もない作品には珍しいまでの長尺である為少々眠くなった。余りに慢々的に進行するので、起承転結をきちんと考える向きには不満が生じるであろう。

1987年、高良健吾演ずる主人公・横道世之介は、長崎から法政大学に進学して入学式で知り合った池松壮亮と朝倉あきのキューピッド役になり、バイトをするホテルで知り合った年上の謎の女性・伊藤歩に興味を抱く一方、ダブルデートで紹介された令嬢・吉高由里子と健全ながら深い仲になり、故郷にまで一緒に行って、母親・余貴美子と知り合わせる。

本当に1987年の時系列では大事件がない。文学用語を用いれば、100年くらい前に流行った(日本流)自然主義小説的タッチといった感じだ。

基本的にメリハリのないお話にメリハリを付けるのは、およそ30分くらいに一度15年後の“現在場面”を挿入するアイデアで、これがなければ実際退屈したであろう。
 その中に主人公の列車事故救助時の死亡を報道される箇所があり、以降はそれを前提に観ることになるので少々しんみりした気分が出て来るが、この辺りから主人公をその呑気な性格から周囲を幸福にする人物として扱おうという作者の狙いがはっきりしてくる。
 それを最後にまとめるのが、母親の「呑気であった息子と“会えて”幸せだった」という吉高嬢への手紙という次第。ここで主題を明確にした形で、手紙なしに観客に解らせたほうがより効果的ではあったと思うが、昨今の作品だからこれくらいの親切はやむを得ないといったところだろうし、原作にもきっと手紙はあるのだろう。

世代的には1970年代に大学に入った僕より一世代くらい後ながら僕らの時代とムード的にはさほど変わっていない感じがする。しかし、社会はこの後バブル崩壊を経て劇的に変わっていく。バブルは大人の倫理感に影響を与え、新技術特にパソコン、携帯電話は風景だけでなく、人間関係まで変えてしまった。特に人間関係は無機質な、悪い方向に向かっていると思う。

幸福の一つは他人との交流である。精神に支障をきたさない程度のゴタゴタならまるで交流がないより良い。勿論、素晴らしい交流ならなおよろしい。僕の実感である。本作の母親は感謝しているが、世之介君、親より先に死ぬのは一番の親不孝だよ。2009年に死にそうになった僕がしなかった不孝はそれだけだ。

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内 容 ニックネーム/日時
長尺映画のソ連版の『ソラリス』は、何度観ても途中で寝てしまったと映画評論家の小野公世さんは書いておられましたが、ねこのひげは寝なかったですね。
こういうのもありかとおもいますが・・・・手紙はいらんかったかな?
ねこのひげ
2014/03/25 02:00
ねこのひげさん、こんにちは。

>『ソラリス』
なかなか衛星映画に出ないので、去年図書館から借りてきました。まだ再鑑賞していませんが、ディスクに収めてあります。
ビデオなので画質はひどいですけどねえ。

>手紙
僕の趣味では「なくもがな」ですが、原作にもあったのでしょう。
最近の若い人にはあれくらい説明しないと主題把握も難しいでしょうし、一応引き締める効果はあったと思います。
オカピー
2014/03/25 19:59

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