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zoom RSS 映画評「故郷よ」

<<   作成日時 : 2014/03/12 11:01   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年フランス=ウクライナ=ポーランド=ドイツ合作映画 監督ミハル・ボガニム
ネタバレあり

邦題からはどんな映画か想像しにくいが、1986年4月のチェルノブイリの原発事故直後の模様と、接近制限地区のプリピャチや少し離れたスラブティチに十年後も過ごす人々の様子を描くドラマである。その間にこの地区はソ連の一部から今問題になっているウクライナに体制が変わった。

中心となるのは、86年4月に結婚した直後に消防士の夫を失ったアーニャ(オルガ・キュリレンコ)。十年後彼女は母親とスラブティチに住み、故郷プリピャチやチェルノブイリを案内するガイドをしている。放射能飛散を抑える石棺を管理する知人やフランス人の恋人がいるが、結局フランスへ行こうという恋人の誘いを断る。事件の語り部にならないといけないと思うからである。
 他方、ティーンエイジャーのヴァレリー(イリヤ・ヨシフォフ)は10年前に別れ別れになった原発技師の父親アレクセイ(アンジェイ・キラ)の行方をつかもうとアーニャが案内する一団から離れプリピャチを彷徨する。アレクセイは技師故に秘密保持する必要上黙って雨を避ける傘を提供するなど静かに活動を始める。しかし、10年後の今プリピャチに立ち寄るにも止まる列車がない。父と子は会うことができない。

アーニャの物語が基幹にあり、傍流とは言え重要な役目を負ったヴァレリーやアレクセイは彼女とすれ違う形で物理的にも絡んでくる。

ドキュメンタリー出身らしいミハル・ボガニム監督の展開ぶりにはアーニャの二人の男性との関係など少し解りにくいところがあり映画的にこなれているとは言いにくい印象があるが、テオ・アンゲロプロス映画でお馴染みの撮影監督ヨルゴス・アルヴァニティスとアントワーヌ・エベルレによる人々の思いが沈潜するような映像には迫力かつ陰鬱な美しさがある。アルヴァニティスの影響だろう、映像のトーンはアンゲロプロス映画に近い。

そして、本作の視点はあまたある原発の問題の中で【故郷に帰る】若しくは【故郷に残る】ことに関する人々の思いにほぼ特化している。我が国政府は避難指示区域などの見直しをしているようだが、事故当初から隠蔽や嘘ばかりついている政府の何を信じていいのか。大した放射線量でないから帰っても良いよと言われても特にお子様を抱えた一家はそう簡単に「では、そうします」とは言えないだろう。そうしたいのはやまやまでも。

市井の底辺にいる人はともかく、政治家や政財界人はもう少し利他的になってもらいたい。色々綺麗事を言っているが、結局はおためごかし。読むとどうしても厭世的になってしまうから、最近は新聞を碌に読んでいない。

この映画を観た日、購読中の新聞が福島に関する映画の特集をしていた。また、IMDbにおける投票数が僕が投票する段階で311。何とも不思議な気がした。

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故郷よ ★★★★
旧ソ連ウクライナのチェルノブイリ原発事故が起きたのは、1986年4月26日深夜である。事故からすでに25年以上経っている。 ...続きを見る
パピとママ映画のblog
2014/03/12 19:18

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
チェルノブイリのツアーに日本人が増えているそうでありますね。
3.11以来、関心が増えているということでありましょうね。

本棚を見たら『きいろいゾウ』がありました。
内容を忘れたというか、買ったことすら忘れていたようなので読み返しております('◇')ゞ
ねこのひげ
2014/03/13 03:06
ねこのひげさん、こんにちは。

>チェルノブイリ
関心が増えるのは良いことですが、興味本位でも困るというところでしょうか。
尤も、放射能が怖い人は、興味があっても行きませんよね。
篤志家(この表現が正しいかはともかく、笑)と信じて。

>『きいろいゾウ』
映画より面白いか後でご感想をお聞かせくださいね^^

僕も昔、新潮文庫のチェーホフを買って帰ったら家にあったなんてこともありました。安いとは言え貧乏学生だったから結構「痛かった」。
買っていないと思っていたのに買ってあったCDもありますね。近年は意図的にダブって買うことが多かったですが。
過去形なのは、色々と出費がかさむので、今後数年はCDを買わないと決心したからです。隣町の図書館はびっくりするくらい大量のCDが揃えられているので、コピーすればほぼこと足りそうです。
オカピー
2014/03/13 16:18

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