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zoom RSS 映画評「アンナ・カレーニナ」

<<   作成日時 : 2014/02/26 14:06   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年イギリス映画 監督ジョー・ライト
ネタバレあり

ロシア語とロシア文学は大学時代の専攻分野だからレフ・トルストイの大長編小説「アンナ・カレーニナ」は当然読んでいる。そして、戦前グレタ・ガルボ主演で作られた二作、戦後間もないヴィヴィアン・リー主演版、1967年タチアナ・サモイロワ主演の本場ソ連(ロシア)版、そして比較的最近のソフィー・マルソー主演版、日本で劇場公開された主な映画化作品を全て観ている。ソ連版を除くと、トルストイの目指した思想は尽く無視されてメロドラマに化している。泉下のトルストイ先生としては面白くなかろうし、ロシア文学専攻者として不満に思わざるを得ないが、一大衆映画ファンの立場ではロマンスとして楽しめれば良いとも思っている。

映画史を紐解くと英米ではその時代を代表する美女スターがアンナ・カレーニナを演ずることになっているようだから、本作でアンナを演ずることでキーラ・ナイトリーもその仲間入りの証明をしたと言えるのかもしれない。

大臣アレクセイ・カレーニン(ジュード・ロー)の妻アンナ(キーラ)が、美貌の将校アレクセイ・ヴロンスキー(アーロン・テイラー=ジャクスン)と道ならぬ恋に落ち、愛する息子まで捨てて彼との生活に入っていくが、社交界から排斥された挙句、肝心のヴロンスキーまでもが別の結婚を画策する母親の言うがままになっていることに絶望する。幕切れは原作やこれまでの映画化による飛び込み自殺というより事故に思えるような感じである。

それでも物語の主題展開ぶりは僕が観た英米の映画化の中で一番原作に近いように感じられる。トルストイ自身が投影された悩める荘園主リョーヴィン(ドーナル・グリースン)とキティ(アリシア・ヴィカンダー)との恋愛をきちんと描いているからである。この二人はアンナとヴロンスキーを道徳的に断罪する為に置かれているので、主題が原作にかなり沿ったものと言えるのだ。ソフィー・マルソー版にもこの二人は出てきたが、道徳的対照としての姿勢が希薄であったし、何よりアンナのアヘンへの逃避が強調され、気に入らなかった。

プライドと偏見」でキーラと一度古典文学映画化で組んだことのあるジョー・ライトとしては、人生の悲喜劇は演劇のようなものであるという主張を観客に感じ取らせるように演出を施している。実際に舞台上である部分のほか、主人公とヴロンスキー以外の人物が止まった中で二人が動くというアニメ的な発想や、ヴロンスキーの振付されているように見える動作はそれを具現化するものである。

ジョー・ライトのショットや場面の繋ぎは相変わらず華麗。しかし、素晴らしいと言うかやりすぎと言うか、匠気が勝ちすぎた印象は否めない。近年現れたドラマ映画の才人であることは確か。

ガルボの最初の映画化は、アンナが子供のもとに戻るところで終わるハッピーエンド版だった。こちらは華麗なるカレーニナ(華麗にな)。

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2014/02/27 16:41
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
私が観ているのはソフィー・マルソー主演版だけですね。観る前はソフィー・マルソーはフランスのアイドルっぽい映画スターという先入観があって、どんなものかと不安でしたが、観てみると違和感はなくて、さすがに役者だなあと感心した記憶があります。
それにしても何度も映画化されているのですね。ロシア版は映画雑誌で写真だけ見てる、女優の顔がロシアの顔で、いちばんそれらしいのかもしれないと想像してしまいました。
nessko
URL
2014/02/26 22:45
ねこのひげはロシア版を観とりますな。
やはり一番よかったように思います。
ねこのひげ
2014/02/27 16:25
nesskoさん、こんにちは。

ソフィー・マルソーに関しては同じような印象でしたね。
しかし、アヘン耽溺を強調しすぎて作品としては残念な印象を持ちました。

ロシア版は長尺ですし、女優もロシアの土の香がしましたし、原作のテーマもきちんと打ち出してあり、一番がっちりした出来でありました。
オカピー
2014/02/27 17:27
ねこのひげさん、こんにちは。

いやあ、作品としては断然ロシア(ソ連)版ですよ。
比較的長尺だからトルストイの思想をきちんと反映してメロドラマに陥っていなかったですし、モスフィルムのあの色彩も何とも言えないものがありましたしね。
オカピー
2014/02/27 18:06

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