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zoom RSS 映画評「ジョルダーニ家の人々」

<<   作成日時 : 2014/02/22 10:19   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2010年イタリア=フランス合作映画 監督ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ
ネタバレあり

インターミッションを挟むとは言え、一気に観た作品として個人的に一番長いのが375分(WOWOW放映版)の「輝ける青春」。同作を書いた脚本家コンビ、サンドロ・ペラトリアとステファノ・ルッリの手になる脚本をジャンルカ・マリア・タヴァレッリが四部構成のTVミニシリーズ(各100分)として映像化した本作は、日本では399分の大長編映画としてやはり一気に上映された模様。
 今回僕は一部ごとに四日間に分けて観ることにしたが、映画評としては一応全体を観てから書かなければならない(と思っていたが、諸事情により、観た直後個別に書いたものを採録せざるを得ない。そんな次第で要領を得ない文章になって甚だ恐縮であります)。

三人の息子と一人の娘のいるジョルダーニ家が、高校生の三男ロレンツォ(アレッサンドロ・スペルドゥーティ)の交通事故死により崩壊の危機を迎えることになる。
 ショックで精神のバランスを崩した母親(ヴァレンティナ・ダゴスティーノ)は療養施設に入所し、大学生の次男ニーノ(ロレンツォ・バルドゥッチ)は大学で建築学を修め無事卒業するものの、書店の女性と浮気し家を離れていく父親(ピエトロ・ファンタスキーニ)の資力に頼らず現場での仕事から始めるつもりである。その彼は外務省に勤める長男アンドレア(クラウディオ・サンタマリア)が見張る移民船から逃げ込んできた不法移民の中年女性シャーバ(ファリバ・ラウアジ)を一家の使わない建物に匿う。セラピストの長女ノラ(パオラ・コルテレージ)は無事出産を済ませる。
 というところまでが第一部のお話。

第二部では、次男ニーノが保護した中近東からの密航女性シャーバが重要度を増していく。
 ニーノの兄である外務省勤務のアンドレアが彼女の難民認定に走る中、彼女が探す娘アリナ(レイラ・ベクティ)に刑事カタルド(フランチェスコ・シャンナ)が司法取引的に麻薬捜査協力を依頼、アリナが拒んだことで代りに引き受けたルームメイトが組織側に殺されるという事件が起きる。
 これが第二部の基軸となる物語で、そこにニーノの恩師たる建築学教授の夫人との不倫関係、アンドレアとフランス人男性ミシェル(ティエリー・ヌーベック)との同性愛関係が傍流的に挿入され、ニーノとアンドレアの姉妹でミシェルを顧客に持つノラが本流と傍流を結びつける機能を果たすために登場しているような印象を覚える。
 この脚本家コンビは、個人の生き方のうちに政治を見つめるのがお好きなようで、本作でもイタリアとイラク戦争との関係を背後に漂わせ難民・移民問題を浮かび上がらせていく。

次男ニーノが相変わらず物語の中心にはいるけれども、この第三部ではより群像劇度を深め、密航女性シャーバの娘アリナの重要度が増している。
 結局、麻薬犯罪組織一網打尽の為に彼女を利用するうちに好意を覚えるようになったカタルド刑事が奔走した結果母娘ともども滞在証明書が発行されるに至る。
 これが物語の中核をなす一方で、ニーノは教授(ヴィンチェンツォ・アマート)の細君フランチェスカ(アントニア・リスコヴァ)との関係を深めた結果彼女が妊娠、必然的に教授夫婦の関係はゴタゴタする。自分の何かを残したいニーノ君としては産んでもらいたいが、家族の崩壊を望まない彼女としてはそれはできない。
 ただこの夫婦を巡る三回関係を描く部分は些か舌足らずで、特に別荘から娘を無理やり連れだした後の教授の心情が解りにくい。
 シャーバ母娘にとっては恩人の一人であるアンドレアの同性愛の恋人ミシェルの病状(肺がん?)が悪化して病院へ担ぎ込まれるところで終わる。
 いかにも四部構成の中の第三部と言うべき勢いのある終わり方をしているが、第二部まで家族の傍観者的に立場に置かれていたノラが傍流の登場人物的に扱われている。彼女としては兄弟より、戦闘により記憶障害に陥った帰還兵への関心が深くなっている模様。

いよいよ最終第四部。
 密航女性シャーバと娘アリナがジョルダーニ家に落ち着いたことにより焦点は再び一家の人々に当てられる。外務省勤務のアンドレアは同性愛の恋人ミシェルを病死で失うと、その遺児を引き取ることにする。ノラは相談相手の帰還兵の前に昔の恋人が現れたことで事実上の失恋、その不満が夫との仲にひびを入れる。帰って来た父親は三男のメールを偽装していたことを療養中の妻に告白、これにより彼女は現実を直視することができるようになり、シャーバ母娘のいる自宅へ戻ることを決意する。これを見て父親は再び家を離れていくが、一家は漸く再生の途に着く。全編を通じて万遍なく登場する次男ニーノも一家の再生に自身の傷も癒え、長く半恋人関係にある大学の後輩女性アニタ(ダニエラ・ジョルダーノ)と新たな関係を築いていく。

この第四部は作品全体のテーマを鮮やかに集約する。一家の夫々が新しい対人関係を見出し、それが家族再生の契機となり、それがまた円滑な対人関係の構築に繋がっていくという連鎖が流れるように描写され、誠に見応えがある。或いは、家族と疑似家族が民族・階級を超えて共生・共存する博愛的な、理想的な家族像を主題に展開しているとも言える。家族では補えないものを疑似家族が補い、疑似家族では足りないものを家族が足す。
 多分に中近東外交政策に関する反英米的な思想が背後に揺曳しているのも、コスモポリタニズムとの絡みで言えば決して偶然ではない。人々の寄港地の観を呈していくジョルダーニ家が言わば作者の考える理想的世界の縮図になっているのだ。

イングマル・ベルイマンが健在の頃スウェーデンのTVドラマの水準に驚かされたものだが、イタリア・フランスのTV界もなかなか凄い。日本のミニシリーズと言えば、時代劇にそこそこのものがあるが、一般ドラマでここまできちんと作られたものがあるかどうか。

お疲れ様でした。

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「Le cose che restano」…aka「Longlasting Youth」 2010 イタリア/フランス ...続きを見る
ヨーロッパ映画を観よう!
2014/02/22 23:10

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