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zoom RSS 映画評「だいじょうぶ3組」

<<   作成日時 : 2014/01/16 14:01   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり

機関車先生」の実績があるからだろうか、小学校教師の経験がある「五体不満足」の作家・乙武洋匡の同名小説を廣木隆一が映画化した児童学園もの。作劇的には「機関車先生」と同じように、基本をセミ・ドキュメンタリー・タッチに置き、その中でドラマ性の高いエピソードがうねりをもって進行する形である。そのドラマ性とドキュメンタリー・タッチとの間にしっくり来ない部分があった「機関車先生」より、本作は大分うまく行っている。生徒に対して敢えてドキュメンタリーと思わせるようなタッチで迫らず、ドラマ的に撮ろうとしていて無理がないのである。その中に本物のような味わいが浮かび上がってくる。演出家として進境を示しているような印象がある。

手足のない乙武が、元教師で今は教育委員会に回った友人・国分太一を補助教員に、ある小学校の5年3組に赴任してくる。生徒は当然戸惑うが、桜の下での「どのような学級にしたいか」というホームクラス、3組対抗での運動会を巡るクラスを挙げての活動、山への遠足に手足のない乙武先生を連れていく為に知恵を絞る挿話と進む。

お話の図式としてはバラバラだったクラスが一つにまとまり、先生への尊敬が出来上がるというものであり、その中で、人間に求められるのは結果ではない、人と違うことは何でもない、できないことがあるのも何でもない、という主張が繰り広げられる。直截的と言えば直截的であるが、悲観している現在の僕をこれらの言葉がどれほど元気づけてくれたであろうか。

社会人になると「結果を伴わなければ(努力は)意味がない」とよく言われる。会社では真実であろう。しかし、学校では違う。目標をもって行動すること、これが大事であって結果は二の次であると言うべきである。何故なら会社と違って学校は自分の為に行くはずだから。学校の為になろうと勉強したり課外活動をする者は基本的にいない。その個々の活動の中で他の生徒たちとうまくやっていくのが協調性ということになる。

この映画の主張の中で重要な役割を負っているのが、好きなダウン症の姉が周囲の好奇な目に晒された時に周囲への憎悪が姉への憎悪に変わっていることに気付いて苦しむ少女(上白石萌音)である。この控えめな大人しい少女が影の主役である。「他人(ひと)と違うことは何でもない」とクラスでの言葉を聞いて少女は涙を流す。
 リタイアした僕はここ2、3年の失敗の数々に自分には欠けているものが多いと思うようになった。だから「できないことがあって良い」という言葉を聞いて彼女のように涙を流すほかなかった。

採点は技術重視、コメントには好悪を盛り込むというのが僕の映画評スタンスなので、たまに本文の印象と星の数が齟齬することがある。さらに、技術が足りなくても素直な作りに星を多く進呈したい心境になることがある。基本的にはシンプルと言って良い本作はその典型であろう。
 本作に特に映画的に凝った部分はないと思う。ただ、自転車に乗った児童グループが一人ずつ分かれていく長いシークエンスにおけるトラックバックの繰り返しには映画的興奮を禁じ得ない。ここを観る為にも永久保存する価値がありそうだ。廣木監督の旧作「きみの友だち」では少女が友人の為に傘をもって迎えるシーンの為に僕は永久保存を決めた。あのシーンを観れば人間が好きになるのだ。

その昔「だいじょうぶマイ・フレンド」と映画のタイトルにかこつけて同僚の女性に言ったら、「あんたとは友達ではない」と言われたっけ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
乙武さんならではの作品でありますな〜

「努力したからといってかならず成功するわけではない」「夢は願っていればかならずかなうとは限らない」と言って炎上した元アスリートがおりますが・・・
正論や異論を唱えると炎上させたがる連中にも困ったものです。
ねこのひげ
2014/01/19 08:09
ねこのひげさん、こんにちは。

映画としてはどうかなという部分もありますが、凹んでいる最中ですから人間オカピーとしては感じるものがありました。

>炎上させたがる連中
欲求不満なんでしょうなあ。
政治家以外の他人の言動など気にする必要はないのだけど。
オカピー
2014/01/19 17:43

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