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zoom RSS 映画評「クラウド アトラス」

<<   作成日時 : 2014/01/10 10:58   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年ドイツ=アメリカ=香港=シンガポール合作映画 監督アンディ・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ
ネタバレあり

デーヴィッド・ミッチェルの同名小説をトム・ティクヴァ、ラナ(元ラリー)・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキーが映画化した野心作。昨年末に観た「ミステリーズ 運命のリスボン」も入れ子構造の大作で難儀するところがあったが、構造の複雑さから言えば6つの時空に分かれているこちらが遥かに上である。ただ、お話を理解するのはこちらのほうが容易であろうと思われる。そこに弱みもあるかもしれない。

古い方から進めると、19世紀前半奴隷貿易船で奴隷を買いに出かけたユーイング(ジム・スタージェス)が一緒に乗船した悪徳医師(トム・ハンクス)に毒殺されそうになるが、それを奴隷に助けられたことから奴隷解放に目覚める。
 およそ1世紀後の1930年代、ユーイングの航海記を愛読する若い作曲家フロビシャー(ベン・ウィショー)は自分の作曲した交響曲六重奏を老作曲家(ジム・ブロードベント)に奪われそうになったため思わず射殺し、同性の恋人シックススミス(ジェームズ・ダーシー)と再会するまえに自殺する。
 その40年後老年となったシックススミスは物理学者として原子力の問題を公表しようとして、わざと原子力の問題を放置させて自らの石油利権を守ろうとする実業家(ヒュー・グラント)の刺客に殺されてしまう。その情報を得ようとしていた女性記者(ハリー・ベリー)も危うく殺されそうになる。

ほぼ現在の2012年のお話は独立性が強く、文芸評論家を殺した作家(ハンクス)の弟たちから、その印税を独占しようとした出版業者(ブロードベント)が脅された挙句に頼りにした兄(グラント)の資本が入っている老人ホームに監禁されてしまうコメディ・リリーフ的な一編。未来とのブリッジ的役目を負っている。

22世紀の未来、クローン人間のソンミ451(ペ・ドゥナ)が純粋種の革命闘士(スタージェス)に助けられ、やがて革命的言論を世界に発信して処刑される。朝鮮半島を意識した一編。
 そのソンミを女神と崇める24世紀の文明崩壊後の地球、人食い人種に怯える平和部族の猟師ザックリ―(ハンクス)が別惑星にある地球コロニーからやって来た黒人女性(ハリー)に疑惑を抱きながらも、姪を助けたもらった恩義から、秘密の場所へ案内する。数十年後コロニーに移住した彼は彼女の血を引く孫たちに祖母と知り合った冒険談を語る。

現代を境目にした前半と後半とでは直接関係がないように思われるが、輪廻転生という考えにより全てのエピソードが互いに結び付いている。
 その為、トム・ハンクス、ハリー・ベリー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジム・スタージェス、ヒュー・グラントの五人は全ての挿話、ジム・ブロードベントとベン・ウィショーは五つの挿話、ジェームズ・ダーシー、スーザン・サランドンは四つの挿話に、男女・年齢・人種を問わない別人物として凝った扮装をして登場する。

一種のマッチ・カットや重なる台詞やシチュエーションによって奔放に別挿話に移る形式は、1967年の「いつも2人で」の応用編みたいな感じがあるが、相互の親和力が思ったよりは薄く、(通常この手の作品が狙うように)最後にすべての挿話がものすごい流れになって収斂する感じにも至っていず、最後に老齢化したザックリーの幸福な晩年を見せられるだけでは少々肩すかしの印象を回避できない。

“幸福に生きて死んでも、不幸な死に方をしても、別の生が待っている”という考え方がハッピーなのかアンハッピーなのか何とも言えない心境ではあるが、いずれにしても多くの人間はそれを意識せず生きているのだから、物語性の高い哲学映画を観ていると思えばかなり満足できると思う。映像も多様だから視覚的魅力も満載と言うべし。

めぐりあう時間たち」にSF趣味を加えたと思えば、当たらずとも遠からず。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
今日は拙ブログにコメントありがとうございます!
ブログを始め1年。ヒッチコックの記事で受けた
初めてのTBがオカピーさんでした。
恥ずかしながら今年やっとTBのシステムと
方法を知りまして…(笑)
遅れ馳せながらこちらもさせていただきたく。

私もひたすらWOWOWの観賞レビューを
同オンンラインと併行しツタヤさんのほうにも
寄稿していますが。
共感の拍手(Good)のアイコンクリックは
自らも観た作品に送っています。
未見の観たい作品のレビューは無視したい派で。

共有できた作品で語り会えうのは
本当に楽しいものがありますね。
これからもどうかよろしくお願いいたします。
小枝
2014/01/11 15:06
小枝さん、どういたしまして。

>TB
小枝さんのブログはかなり凝っているのですが、そんなものですかねえ。
尤も僕も始めて暫くは解らなかったなあ。

>投稿
僕は、専ら自分のブログです。
ブログを始める前に、IMDbに英語でコメントしたことはありますが、どうもブログ以外では逡巡してしまいます。度胸がないんでしょうね。

>共有できた作品
意見は一致しなくても良いんです。
着目点が違えば感想もおのずと違うわけですし、勉強になることが多いから。

よろしくお願いいたします。
オカピー
2014/01/11 20:59
これは気に入ってDVDを買ってしまいましたよ(^^ゞ
輪廻転生は東洋的だな〜と思いましたが、死んだ後に生まれ変わるという発想は世界共通なのでありましょうね。
波乱万丈の後に、幸せな晩年が待っていたということかな?
何回も生まれ変わった後というのが辛いところではありますが・・・・(^^ゞ
ねこのひげ
2014/01/13 07:53
ねこのひげさん、こんにちは。

>輪廻転生
天国と地獄の関係などを観ても、どの宗教でも似たようなことを考えていますものね。
確か、キリスト教以前プラトンも転生は考えていたと記憶しております。
転生は死への恐怖が生み出すものでしょうが、転生はともかく、親不孝だっただけに、早く死んで天国かどこかで母と再会したいと思うくらいですよ。
オカピー
2014/01/13 19:22

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