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zoom RSS 映画評「ブラック・ダリア」

<<   作成日時 : 2013/11/08 13:44   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ブライアン・デ・パルマ
ネタバレあり

ブライアン・デ・パルマはヒッチコック映画を引用したB級的映画を作っている時が良かった。「スカーフェース」「アンタッチャブル」といった大作を手掛けるようになってから、本来のフィールドと言うべきジャンルに初期の切れ味がなくなってきた。と言ってもそれなりに面白がってきたのも事実で、評判の悪い「ミッション・トゥ・マーズ」も楽しんだ口である。

本作は、映画化作品「L.A.コンフィデンシャル」が好評だった小説家ジェームズ・エルロイのLA4部作第一作の映画化で、アメリカ犯罪史でも有名なブラック・ダリア事件(女優志願エリザベス・ショートのバラバラ殺人事件)をモチーフにした警察ミステリー。

ボクサー上りの刑事ジョシュ・ハートネットは同じくボクサー上りのアーロン・エッカートとコンビを組んで悪党を追っている時に銃撃されたのを助けられたのを恩に感じている為、ブラック・ダリア事件の捜査に没入して公私の見境がなくなったエッカートを正面から非難できず、彼の恋人スカーレット・ヨハンスンとの間でオロオロするしかない。
 被害者が出入りしていたレズビアン・バーで妙齢美人ヒラリー・スワンクと知り合い、彼女がハリウッド建設に関与した名士の娘であることを知り、その邸宅で異様な家族とも遭遇する。その後、エッカートが彼女を救って刑務所に送り込んだ悪党が出所、彼は敵の罠に嵌ってハートネットの眼前で呆気なく殺されてしまい、ハートネットとしては益々落ち込むしかない。が、殺された女優志願娘ミア・カーシュナーの出演するブルー・フィルムを調べるうちに事件解決のヒントを発見し、検証する為に現場に急行する。

その先で何があったかはミステリー映画を語る時の最低限のエチケットとして詳細に説明するのを控えるが、じっくり展開させていた前半に比べてエッカートの秘密から事件解決に至るまでの終盤は非常に慌ただしくて解りにくく、解りにくい以上に呆気なくて物足りない。

残虐な事件に加え、退廃的な風俗や変な人物が画面を賑やかすので恐怖映画のように考えている人が少なくないが、実際には残虐描写のあるハードボイルド・ミステリーである。解決部分の解りにくさは否めないものの、人物関係はハードボイルドとしては平均的、特に複雑とは言えない。本作への厳しい評価の背景には、最近の観客がハードボイルド映画に慣れていないということもありそうだ。
 先日再鑑賞した「三つ数えろ」(1946年)が作られた頃が舞台背景で、あの時代盛んだった同種の作品を21世紀的に処理した作品と思えば遠くない。それ以上に想起させるのは、ロマン・ポランスキーが1974年に発表した「チャイナタウン」である。私立探偵ジャック・ニコルスンをぐっと純情な若い刑事に置き換えればムード的にかなり似た作品になる。あの作品の老人ジョン・ヒューストンも相当いかがわしい人物であった。

画面的にはデ・パルマ作品としては比較的地味な印象もあるが、悪党を追いつめようとする刑事二人から別の男女二人に対象が巧みに移行する序盤の感覚と、ヒッチコック「海外特派員」(1940年)の暗殺場面を思い起こすエッカート殺害場面は膝を打つ素晴らしさ。

ハードボイルド映画とヒッチコックのファンは一応観ておくべし。

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トラックバック(7件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ブラック・ダリア
盛り上がらないストーリーに乗り切れず, 眠気を抱えたまま終わりを迎えてしまう微妙な映画・・・ ...続きを見る
Akira's VOICE
2013/11/08 17:15
ブラック・ダリア/ジョシュ・ハートネット、スカーレット・ヨハンソン
原作は実在する猟奇殺人事件にヒントを得たジェイムズ・エルロイのノワール小説ということで、社会派なミステリー作品を想像してたんですけど、ちょっと違ったようです。劇場予告 ... ...続きを見る
カノンな日々
2013/11/08 21:43
231「ブラック・ダリア」(アメリカ)
一つの死体が、人々を狂わせる  ロス市警のPRのためのボクシングの試合に出場したバッキー・ブライカートは特捜課へ昇進し、対戦相手であった捜査官リー・ブランチャードとコンビを組む。リーの恋人ケイ・レイクも交えた満ち足りた日々を送っていた。  そんなある日指名手配中の凶悪犯を張り込み中銃撃戦が発生、しかもその近くで女性の惨殺死体が発見される。その死体は腰から二つに切断され、口を耳元まで切り裂かれていた。被害者はハリウッド・スターを夢見て地方から出てきたエリザベス・ショート。黒髪で、いつも黒... ...続きを見る
CINECHANが観た映画について
2013/11/09 02:19
『ブラック・ダリア』(2006)パート2 ジェームズ・エルロイ原作の暗黒のLA四部作の第一作目。
 そして今日、劇場に足を運びました。いつものように一番後ろの真ん中近くの席を取り、ノワールの世界へ浸り込む前にいろいろと演出や音楽、そしてアングルやカット割りを予想していました。原作を読んだ後に観に行くときの楽しみは自分が想像していた演出と実際の演出との差異にあります。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2013/11/10 00:12
『ブラック・ダリア』(2006)パート1 エルロイ原作の話題作について観る前に思っていたこと。
 フィルム・ノワール・ファンにとっては今年公開される洋画の中でもっとも期待の大きな作品がこの『ブラック・ダリア』ではないだろうか。ジェームズ・エルロイ原作による暗黒のLA四部作の第一作目の小説をもとに、ブライアン・デ・パルマ監督がどのような手腕を振るったのかにとても興味があります。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2013/11/10 00:14
[映画]ブラック・ダリア
2006年、アメリカ 原題:The Black Dahlia 原作:ジェイムズ・エルロイ 脚本:ジョシュ・フリードマン 監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:ジョシュ・ハートネット、スカーレット・ヨハンソン、アーロン・エッカート、、ヒラリー・スワンク、ミア・カーシュナー DVDで鑑賞 ...続きを見る
一人でお茶を
2015/02/22 01:34
映画評「L.A. コンフィデンシャル」
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1997年アメリカ映画 監督カーティス・ハンスン ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2017/07/14 08:53

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
この映画ではフィルムに残されたブラック・ダリアの断片的な映像が印象的でした。オーディションしている監督さんの声はデ・パルマがやっているそうです。もうセルフパロディを余裕で楽しんでいるようですね。
おはなしはミステリで、あのうさんくさい成金一家とか、いかにもアメリカのハードボイルドらしくてよかったんですが、原作が迷宮入りした事件を無理やり謎解きしたもなので、映画でも謎解き部分がやりようがない感じになってて、ちょっと終わりの方が苦しかったです。
nessko
URL
2013/11/08 22:12
nesskoさん、こんにちは。

全く仰る通りだと思います。
実際に起きた残虐(最近は本来と違う意味ですが、“猟奇”などと言いますね)事件をベースにしてはいるものの、登場人物やムードは典型的な、と言うかチャンドラーばりの、ハードボイルド・ミステリーに仕立てられていましたね。

>謎解き部分
正に。
強引と言いますか、全く苦しく、よく解らない幕引きでした。
オカピー
2013/11/09 17:57
 こんばんは!
ぼくはもともと原作を読んでいたのですが、この映画は公開当時に観に行きました。もう7年前の作品になるんですね。オカピーさんとほぼ同時期にブログをやり始めてから来年で10年かと思うとおたがい感慨深いですね。

仲良しだったトムさんやシュエットさんとお話しできないのは寂しいですね。映画の基本をきちんと理解されているだけでなく、社会人としても立派な方だろうなあというのは文章を読んでいれば分かりますし、大人の映画ファンのしっかりとした意見が聞けないのは残念ですね。

なかなか更新できない状態ではありますが、大切なのはやめないことだと思いますので映画を愛し続けて、劇場にも足を運び続けますよ。

寒くなって参りましたので、お体に気をつけてください。

ではまた!
用心棒
2013/11/10 00:10
往年の映画フアンにとっては懐かしいハードボイルドでよかったですね。
『チャイナタウン』は好きな作品なのでなおさらです。
ねこのひげ
2013/11/10 13:11
用心棒さん、こんにちは。

本当に知り合いが一人減り二人減りで、寂しくなってきました。
用心棒さんは一番最初にお声を掛けた方ですが、初期に知り合った映画友達では他にvivajijiさん、十瑠さん、豆酢さんが残っているくらい。
ブログ自体の人気が一時ほどではないということもあるんでしょうね。

ひと月で一稿でも良いですからご継続をなさってください。こちらの励みにもなります。

用心棒さんもご自愛ください。
オカピー
2013/11/10 17:25
ねこのひげさん、こんにちは。

若い人にはホラーもどきの猟奇的作品と捉えられ、しかも、評判が芳しくなかったのですが、案外クラシックな作りでしたよね。
オカピー
2013/11/10 19:28
見直して見たら、はじめてみたとき思ったのより、ずっとよかった気がしました。デ・パルマ監督の円熟味を感じましたよ。
nessko
URL
2015/02/22 01:37
nesskoさん、TBも有難うございます。

恐らく僕らは終盤の解決部分に拘りすぎたのかもしれませんね。
オカピー
2015/02/22 19:09

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