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zoom RSS 映画評「殺人者はライフルを持っている」

<<   作成日時 : 2013/10/29 11:07   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1968年アメリカ映画 監督ピーター・ボグダノヴィッチ
ネタバレあり

ピーター・ボグダノヴィッチと言っても、篤志家を別にすると、現在40歳以下の方は全くピンと来ないであろうが、「ラスト・ショー」「ペーパー・ムーン」という傑作群を次々と発表し1970年代初め最も嘱望された優秀監督だった。それがどうしたことか「ニッケルオデオン」という佳作を作って以降すっかりスランプに陥って遂には万年二軍選手になってしまい、現在に至る。その辺は大いに研究すべきところなのであるが、ものぐさな映画ファンなので単に不遇なのだと決め込んでいる。

本作はそんな彼の注目すべきデビュー作で、日本未公開にも拘らず、知名度は高いしご覧になっている方も多い。10年以上前にWOWOWで放映されたらしいが、僕はうっかり見逃し、恥ずかしながら今回が初鑑賞。

何か不満を抱えているらしい青年ティム・オケリーが、妻と母と弟?(序盤に出てきた父はどこに行った?)をピストルで射殺して死体を片付け、以前から計画していたようにライフルを抱えてビルの屋上に上り、ハイウェイを走行する車に発砲する。数名片付けたところでパトカーの出動してきた為逃走し、今度は往年の恐怖映画の名優ボリス・カーロフが出演作上映後に挨拶することになっているドライブイン・シアターで惨劇を繰り広げる。

1980年頃見たTV映画「パニック・イン・テキサスタワー」(1975年)を思い出させると思ったら、あの作品で扱われた犯人チャールズ・ホイットマンをモデルにボグダノヴィッチがこしらえたらしい。

序盤家族に向ける目も異常な青年の描写と並行描写される、「引退するから挨拶しない」とごねるカ―ロフもどきの怪奇映画俳優を演ずるカ―ロフに関する場面が必要以上に長く、大いにバランスを損なっている。聞くところによると、師匠に当たるロジャー・コーマンがボグダノヴィッチにカ―ロフを20分以上出演させ、自作「古城の亡霊」を20分使えというごり押しをしたとのこと。その無理を逆手に取ってなかなか上手く作ってはいる。
 特に、カ―ロフが「人々は恐怖映画のわしより今の現実のほうを怖がる」といった旨の台詞を吐く辺りから狙いが一気に定まり、その二つの場面が彼の登場するドライブイン・シアターでクロスするところでお話がクライマックスに達した後、銃弾でかすり傷を負ったカ―ロフが犯人を追いつめてジ・エンド。

徐々に高められてきたサスペンスが一気に最高潮に達するこの終盤が頗る優秀だが、映画俳優に犯人を追いつめさせる辺りボグダノヴィッチの映画好きぶりに膝を打つ一編となっていて益々ゴキゲン。

映画好きと言えば、犯人が落とした銃弾パックを懸命に拾おうとする場面はヒッチコック「見知らぬ乗客」(1951年)へのオマージュ。またカ―ロフ助演の刑務所もの「光に叛く者」(1931年、ハワード・ホークス監督)も少し見られる。ボクダノヴィッチ自身が当時の彼自身の立場を反映しているような新進映画監督に扮して自虐ぶりを発揮しているのも面白い。

しかし、不利な条件を上手く生かしたことは認めつつも、バランスの悪さは明らかであるので、採点は上記に留めた。

ヒッチコックに関するドキュメンタリーで有名映画監督が多数出演する中、“マクガフィン”に言及したのは、ボグダノヴィッチではなかったかな?

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『殺人者はライフルを持っている』(1968)ボグダノヴィッチ監督のデビュー作。連続射殺魔がモデル。
 『殺人はライフルを持っている』はピーター・ボグダノヴィッチ監督のデビュー作品です。主演にかつてフランケンシュタインの怪物役で人気者になったボリス・カーロフを起用し、しかも彼を怪物や悪役で使わずに人間味のある黄昏時の老俳優として起用しています。 ...続きを見る
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この映画は観ましたが、ボリス・カーロフがなんとも…妙な映画という印象でありました。
『ラストショー』傑作でありました。・・・・・・この映画以来ジェフ・ブリッジスは無冠の名優といわれましたが、でなくなりましたね。
『サンダーボルト』も好きであります。
『ペーパームーン』・・・・ライアン・オニールがぜひとも出たくて、他の仕事を放り出して駆けつけたけど、すっかり娘に食われてしまった映画でありました。
ねこのひげ
2013/10/29 16:46
ねこのひげさん、こんにちは。

『ラスト・ショー』も『ペーパー・ムーン』もモノクロで、実に味わい深い秀作でしたよねえ。どちらも映画館で観ました。

本作はもっとつまらなくなっても仕方がないところをなかなか上手くでっち上げたな、という印象ですが、カ―ロフの部分はバランス的に難ありでした。
オカピー
2013/10/29 21:44
こんばんは!

>ニッケルオデオン
なつかしいですね。ぼくこれのVHSをまだ持っていますよ。記事にしてみたいなあと思いつつ、10年以上も経っています(笑)

>パニック・イン・テキサスタワー
これもなつかしい。重々しく、凄い暑苦しい感じの映画でしたねえ。さすがオカピーさんは覚えてますねえ。ぼくもこれは強く記憶に残ってはあいるのですが、ソフト化はされていないようですね。

12チャン風味の映画ですね。最近、『ある勇気の物語!孤独なマラソンランナー』を25年ぶりに鑑賞しました。ソフト化されていないので諦めていたのですが、動画サイトにアップされていたので、やっと見ることが出来ました。

新作も見ますが、どうしても興味が昔の作品ばかりに向いてしまいます。

ではまた!
用心棒
2013/10/30 00:52
用心棒さん、こんばんは。

>ニッケルオデオン
「ラスト・ショー」と「ペーパー・ムーン」は持っていますが、「ニッケルオデオン」は貴重ですなあ。
VHSは良いのですが、図書館から古いビデオを借りてきて観ようと思ったら磁気粉の為かビデオ自体が再生不能に陥ってしまって泣きました。
デジタルビデオがまだ生きていますが、貴重な製品なので同じ目に遭わすわけには行きませんから、図書館のビデオ再生には使えないなあ。

>パニック・イン・テキサスタワー
30年以上前ですが、既に映画評を書いていましたからね、憶えています^^
ソフトはないようですね。

>『ある勇気の物語!孤独なマラソンランナー』
これは観ていないなあ。
調べてみたら、マイケル・ランドンの監督作品。そう言えば彼が初監督した時少し話題になった記憶はあります。
どちらにしても観ていないんですけど(笑)

>昔の作品
僕も今の作品には忍耐の日々で、まだ移行しませんが、そのうち旧作再鑑賞の日々になりそうな気がしております。
今の映画は小手先・はったりばかりで、本当につまりませんよ。
オカピー
2013/10/30 21:42

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