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zoom RSS 映画評「夢売るふたり」

<<   作成日時 : 2013/10/20 11:21   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・西川美和
ネタバレあり

ゆれる」(2006年)で瞠目させられた西川美和監督の最新作。顕微鏡的に人間を分析することにかけては現在邦画界随一という感を強くする。

阿部サダヲと松たか子の夫婦が経営していた小料理屋を火事で失う。失意の阿部夫は駅で出会った馴染みの女性・鈴木砂羽が泥酔しているのを世話した時に見せた傷心が奏功して、彼女から泥酔の原因となった男性の手切れ金をそのまま渡される。
 細君は怒ってみた後で、これが商売になると気付き、夫婦で働き始めた日本料理店で孤独な女性たちを阿部になびかせ、結婚を匂わせて再開店資金を集め始める。その後は働く場所を変え、男に縁のなさそうな重量挙げ選手・江原由夏や風俗嬢・安藤玉恵、ハローワークの職員・木村多恵と上手い具合に深い仲になり、目標達成に近づいたと思った頃、最初の被害者・田中麗奈が現れる。

多くの方が仰るように、この夫婦の結婚詐欺には憎めないものがある。まあ、詐欺の始めのうち彼らが開店した後にお金を返そうとしていることが示されることで我々は監督の思うツボに嵌ってしまうわけであります。それを別にしても、阿部夫が女性に示す心情に嘘と本音とが入り混じり、結果的に女性たちに幸福感を与えるという構図が解りやすい。しかし、夫が騙すことで色々役得に恵まれるのに対し、参謀役の妻は孤独を深め、お金儲けという合理的目的を越える男女の情愛が絡んで事はそう単純に行かないことも示している。

かくしてお話は男女間の情という問題に収斂していく。本作が作劇的に優れているところはそこ、即ち、被害者の敵である松たか子妻を、何とはなしに母性本能をくすぐる阿部を放したくないという心理において被害者たちと同列に扱っていることである。同時に、ヒロインをその困難に耐えて目的に邁進していける女性としている。これは並大抵の映画作者に発想出来ることではない。特に男性ではそういう思考はしにくいと思う。

ただ、松たか子の性的場面の扱いに無理が感じられる部分があり、「ゆれる」ほど気持ちは「ゆれない」。

最強のふたり」のふたりとどちらが多く夢を売っているでしょうか?

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
何年たっても、歳を取っても、女性は謎でありますな〜
アル中のどうしようもない旦那と長年連れ添って別れないとか、ブサイクで小男とモデルのような体系の女性が連れ添っているとか・・・・
母性本能だけで片づけられないような気もしますが・・・
阿部サダオさんは、そんな役にぴったりと言ったら怒られそうかな?
西川さん、うまいですな〜
こんな作品作る西川監督も怖い(笑)
ねこのひげ
2013/10/20 12:44
ねこのひげさん、こんにちは。

>母性本能
本作で可笑しかったのは、日本料理店で騙された女性たちが集まって、消えた阿部サダヲを「だから可愛いのよお」といった感じでだべっている箇所。その横でただ一人、田中麗奈だけが悄然としている。

>西川監督
吾輩も怖いと思います(笑)
実際本稿で一度その言葉を記し、後で消したくらい^^
オカピー
2013/10/20 20:34

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