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zoom RSS 映画評「ファウスト」

<<   作成日時 : 2013/09/13 10:52   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年ロシア映画 監督アレクサンドル・ソクーロフ
ネタバレあり

16世紀に実在した錬金術師ゲオルク・ファウストの伝説は16世紀末に早くも英国のクリストファー・マーロウが劇化しているが、一番有名なのは地元ドイツの大作家ゲーテの戯曲で、本作はその作品をロシアの映画作家アレクサンドル・ソクーロフが奔放に作り変えたファウストものである。

お金に窮して高利貸に赴いたファウスト教授(ヨハネス・ツァイラー)が、その高利貸の主人ミュラー(アントン・アダシンスキー)と行動を共にするうちに洗濯場で美しい乙女マルガレーテ(イゾルダ・ディシャウク)を見染め、彼女をものにする為に高利貸(実質的に悪魔)に魂を与える契約を交わし、彼女との時間の後彼と地獄へ旅立つ。

ゲーテ版の最大テーマであった精神(神)と欲望(悪魔)との相克をベースにお話自体はぐっと簡素化されていながら、人間を人間たらしめるのは高邁な精神や知識ではなく欲望であるという相似の結論をもって終結する(ように思われる)。

他方、具体的に解らない箇所も目立つ。例えば、ゲーテ作で青年化したファウストが妊娠させた少女が嬰児殺しの罪を着て処刑されてしまう悲劇は、中年のまま交流する本作では悪魔とファウストの会話から彼女が何らかの事件に巻き込まれたことが伺われるだけで、何のことだか解らない。

そういう面を気にすると未消化の部分が多いのは確かながら、主人公が高利貸屋に入るところから断続的に始まる鏡を横から見るような歪んだ(画面比16:9のカメラで撮った映像を4:3に変換した?)映像を交えた画面が、閉塞的な、もの凄い迫力を生み圧巻。デジタル機材を生かして全編ワン・ショットで撮られた旧作「エルミタージュ幻想」(2002年)のような超の付く長回しがないのに同じような効果を与えるショットの繋ぎも、一種の酩酊感をもたらしていて極めて印象深い。

映画は物語と画面の双方をもって優秀な作品と判断すべきであるが、本作に関しては物語のマイナス印象を最小限に留め、映像面を重視してある程度高く評価する意味があると思う。

デジタル(ビデオ)臭い映像は嫌いだった(と言うか今も嫌いだ)が、ここに至るとそんなことも言っていられない。

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ファウスト
公式サイト。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ原作、原題:Faust。ロシア映画。アレクサンドル・ソクーロフ、マリーナ・コレノワ監督、ヨハネス・ツァイラー、アントン・ア ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/09/13 16:13

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
欲望がなければ、ここまで進化はしなかったでしょうけどね〜退化かもしれませんが・・・(^^ゞ
デジタルも使いようでありますかね。
ねこのひげ
2013/09/16 05:45
ねこのひげさん、こんにちは。

欲望は発明の母ということですか(笑)
人間も自然の一部と考えれば、人間による地球破壊もある程度は認めなければならないのかもしれません。しかし、原発を始め放置していいというわけでもありませんので、抑えられるのであれば適度に抑えたいものです。

>デジタル
まあ、フィルムのように約10分という制限がないのが一番でしょうね。尤も制限があるから人は努力して良いものが生まれる・・・ソクーロフの「エルミタージュ幻想」よりヒッチコックの「ロープ」のほうが映画的に面白いわけですね。
オカピー
2013/09/16 11:40

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