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zoom RSS 映画評「ローマ法王の休日」

<<   作成日時 : 2013/09/12 11:12   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2011年イタリア=フランス合作映画 監督ナンニ・モレッティ
ネタバレあり

佳作「息子の部屋」以来10年ぶりの鑑賞になるナンニ・モレッティの監督作品である。

法王の死去を受けて、日本でも大分お馴染みになって来たコンクラーベヴェにより、思いがけず前評判の低いミシェル・ピッコリが選ばれてしまう。新法王は責任のプレッシャーから病に倒れ、まず有名セラピスト、モレッティに診てもらうが、法王故の制約の多さに結果が出ない為、身分を偽って一般的な診療を受けることになる。
 ピッコリは隙を見て町込みに姿を消し、市井の人々と交わるうち演劇を目指した青春時代を思い起こし、その時代に学んだチェーホフの「かもめ」を観劇しているところを発見されて、再びサン・ピエトロ寺院の露台に立って新法王としての挨拶に臨むことになる。そこで「自分には肩の荷が重すぎる」と告げ群衆をがっかりさせたところで終わる。

ローマの休日」をもじっているようでいて、その実、序盤と似た場面で終わるというシンメトリーの構成はチェーホフの「桜の園」に倣っていると思われる。また、そこはかとない可笑し味が喜劇と称する悲劇「かもめ」より豊富にあるとは言え、登場人物の憂鬱に通底するものがある。

しかし、モレッティの作品にままあるように、余りピンと来ない。

新法王が公式に発表されるまでは関係者は全員外部と遮断され、図らずもその一人になってしまったセラピストが時間を潰す為に世界各国の枢機卿と仲良くなって、大陸別にバレーボールのリーグ戦をやり始めるところは皮肉っぽい可笑し味がある一方、法王失踪の長さを表現する為に必要だったのであろうが、カットバック等の工夫が足りない為このシーン(シークエンス)は冗長と言わざるを得ず、些か構成上のバランスを欠いている。

演劇との絡みで言えば、人生あるいは宗教界という舞台の上で人々を指導する人物を脇役として演じてきた新法王が思いがけぬ主役への抜擢によるプレッシャーに押し潰され、結局自分は主役にふさわしからぬ人物であることを自覚する、というお話と解釈することができるから、演劇と人生における“舞台”の二重性を明確に表現していればもう少しきちんとした印象を残すことができたと思う。
 法王は、田舎で有望視され都会の演劇界で挫折する「かもめ」のヒロイン、ニーナと似た立場にあることを感じさせるが、チェーホフはかのヒロインに希望を抱かせた。モレッティは法王にどういう未来を想定しているのだろうか?

サブタイトルは「枢機卿の憂鬱」にしよう。

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『ローマ法王の休日』
□作品オフィシャルサイト 「ローマ法王の休日」□監督・脚本 ナンニ・モレッティ□キャスト ミシェル・ピッコリ、イエルジー・スチュエル、レナート・スカルパ、ナンニ・モレッティ■鑑賞日 8月11日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.... ...続きを見る
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ナンニ・モレッティなので期待したのですが・・・・ちょぅと残念です。
もう少し皮肉や風刺があると思ったのですがね〜

『かもめ』といえばリュドミラー・サベーリエワを思い出します。
劇場で観ましたが、研ぎ澄まされた氷の剣のような美しさでありました。
現在は70歳ぐらいで、きっと美しいお婆ちゃんになっているでしょうね〜
ねこのひげ
2013/09/12 18:25
ねこのひげさん、こんにちは。

>ナンニ・モレッティ
たまにというか、よくあるんですよね、モレッティ氏には。

>風刺
ありそうで、余り深く追求していない感じでしたね。

>『かもめ』
ロシア語・ロシア文学を修めた者として、ましてチェーホフ好きとして書かないわけには行かず・・・。
実は、これは家にあった文庫本でやはり二か月ほど前に読んだところ。またまたグッド・タイミングでした。

>リュドミラー・サベーリエワ
ありましたねえ。
「ひまわり」より大分後になって公開されましたねえ。
僕が引用したニーナ役。
僕が配役責任者でも彼女を選んだでしょう^^ゝ
オカピー
2013/09/12 20:29

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