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zoom RSS 映画評「ソハの地下水道」

<<   作成日時 : 2013/08/04 10:35   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年ポーランド=ドイツ合作映画 監督アグニェシュカ・ホランド
ネタバレあり

日本人は実に損な民族であると思う。真面目すぎて過去の日本人を悪く言うことができない。だからいつまで経っても韓国・朝鮮人や中国人から色々と文句を言われる。しかも、日本の政治家や官僚は誠に外交下手・対応下手だから相手の言動にストレートに反応して問題をどんどん大きくしてしまう。そこへ行くと、アメリカ人は言うまでもなく、ドイツ人も世渡りが上手い。ホロコーストについてはヒトラーとナチスが悪いと現在の自分と切り離し、こうした他国の反ナチス映画に資金を提供して自分の立場を良くするのである。羨ましい。

第二次大戦後期、当時はポーランド領で現在ウクライナ領になっているルブフ(=リヴィウ)にはユダヤ人隔離地区ゲットーがあった。ポーランド人のソハ(ロベルト・ヴィエキーエヴィッチ)は仕事の下水道修理だけでは食えないので泥棒稼業にも手を染めている。ある時地下水道に身を潜めているユダヤ人一行に出会い、お金を戴いて十人だけ匿うことにする。最初は自分が助けてやっているのだと高圧的な態度だった彼は、彼らと触れ合ううちに、“お金が貰えるうちは”という態度を経て、次第にボランティアでもやる気になるように変心する。

僕は生命をないがしろにできない性格で、蝿や蚊を殺すのも躊躇する方だから、無辜の生命(いのち)が犠牲になる内容に触れるとどうも心が動かされてしまうが、昨今ユダヤ人ホロコースト映画が多すぎるのではないか。どんなに感銘や共感を内在している素材でも、余りに溢れたら、価値が半減するどころか嫌気がさす。
 そこで、肝要になるのが扱いやアングルである。その点本作には小悪党の主人公がユダヤ人を助けるうちに善なる心が芽生えてくるという面白さがある。その細君も命を危険に晒す夫君に呆れながらも結局染まってしまう。この辺りさりげなく上手く扱われていると思う。地下に潜むユダヤ人たちもなかなか人間的で、地上の人々と同じような行動を色々と取る。当然官憲が捜しに地下を訪れるといったサスペンスも幾つかあって手に汗を握らせる。

ここ2、3年だけでも十本くらいのホロコーストものを見たが、その中では断トツに興味を喚起する作劇と言うべし。本作で注目すべきは、キリスト教徒の多くがキリストやマリアや使徒たちがユダヤ人であることを知らないのではないかと想像させる部分のあることである。マルティン・ルターの反ユダヤ主義を悪用したヒトラーはさすがに知っていたと思うが、ドイツのキリスト教徒が全員知っていたら少しは事情が変っていたかもしれない。主人公が彼らの隠匿に積極的になるのはキリストがユダヤ人であることを知って(若しくは、知った)からだ。

監督は新人時代から注目してきた女流監督アグニェシュカ・ホランドで、彼女のフィルモグラフィーの中でもベストと言える力作でした。

「ナチスを見習ったらどうか」と閣僚が言うようでは、「国を取り戻す」どころか「国を沈める」自民党と言うべきや? 次の経済サミットで相当突っ込まれるだろうなあ。こんなことを言えるのも今のうち?

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タイトル (本文) ブログ名/日時
ソハの地下水道
下水道アドベンチャー 公式サイト。ドイツ=ポーランド。英題:In Darkness。アグニエシュカ・ホランド監督、ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ、ベンノ・フユルマン、ヘルバート・クナ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/08/04 18:48

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
まあ、日本では古くから”亡くなった人の悪口を言うものではない”という風習がありますし・・・お寺の坊さんも”仏様の前では善人も悪人も等しく”なんて言ってますからね。
死者に鞭打つことが出来ない国民性ですからね。
どこかの国みたいに3千年前に国を裏切ったというのでその石像に唾を吐きかけたり、数百年前の戦いを持ち出して騒ぐようなまねはしませんからね。

まあ、しかし、口が軽いというか・・・情けないことでありますな。
よく考えてしゃべって貰いたいものでありますな。(~_~;)
ねこのひげ
2013/08/04 13:36
中国・朝鮮人の主張の原因と日本人の風習を結びつけるのは強引かと、、、


オカピーさんは、麻生氏のナチス発言はメディアを通じて知ったのですか?
これは麻生氏の発言のほんの一部分を取り上げて面白可笑しくしているだけなので、興味がありましたら調べてみてください。


映画と関係ないコメント失礼しました。
オカピーさんの映画評をいつも楽しく読んでいます。

2013/08/04 20:33
ねこのひげさん、こちらにもようこそ。

下の方から少々お叱りを受けてしまいましたが、日本人の民族性と中国・韓国・朝鮮の発言は無関係ではないと思いますなあ。
日本が戦後、ドイツと同じ態度を取っていたら、中国・韓国がもっと要求してくるかもしれませんが、ぐっと軟化していたかもしれませんよね。

麻生さんは、欧米なら辞任するまでもなく即刻解任、党から追い出されるでしょう。
オカピー
2013/08/04 22:15
米さん、初めまして、でしたよね?

ドイツ人との比較の為に使ったレトリックなので、多少正確性を欠いた部分があると承知しておりますが、あながち間違いではないと思います。
歴史は仮定するのは難しいので、残念ながら、日本人がドイツ人と同じスタンスをとった場合と現状とで、中国・韓国人の言動がどう違うか証明できません。
甘い顔をしたらもっと要求するかもしれませんしね。しかし、恐らくは、彼らとて人間ですから、多少態度を軟化させていたでしょう。
水掛け論になるので、この辺でこの件は終りにします。

>麻生氏
勿論メディアですが、ごく一部ではありません。多分7〜8割くらいは聞いたと思います。
麻生氏の発言は確かに「ナチスがこっそりやったようにやってはいけない」と理解できます。しかし、実はこれこそ裏の裏をかいたインチキで、本当にこっそりやりたいのが本音・・・と僕は理解しました。
とにかく、自民党は憲法を改訂(改正とは間違っても言えない)して、国を国民から国家権力に取り戻したいんでしょうよ。先の選挙のキャッチコピーを見てください。「日本を取り戻す」ですよ。本来なら「国民を元気にする」あたりでは?

僕は9条改訂以上に、他の人権制約を心配しております。表現の自由や知る権利が制限されたら、何もできなくなってしまう。これがある限り戦争も止められる。
スタジオジブリのHPに掲載されている宮崎駿氏の意見に全く同意であります。

続きます。
オカピー
2013/08/04 22:48
アメリカ政府は、ユダヤ人を敵に回せない以上、もう麻生さんは信用しないでしょうし、「“侵略”の定義は定まっていない」と、遠回しに侵略を否定した安倍首相も煙たがっている模様。集団的自衛権の行使も最近は、日本の片思いでアメリカは望んでいないと聞きました。それより中国と仲良くやるのが先というのが本音のようですよ。僕の意見ではないけれど。

次は、映画評へのコメントもお願いしますね^^
オカピー
2013/08/04 22:49
民社党政権で中国・朝鮮人への対応を軟化させた結果はご存知でしょう?
韓国は5兆円の経済支援を要求、中国に至っては“琉球を返還せよ”と意味不明な脅しをかけています。
日本は様々な経済支援をアジア諸国にしてきましたが、執拗にイチャモンをつけるのは中国、北、南朝鮮の3ヵ国です。
同じ人間でも感謝する人もいれば、逆恨みする人も存在します。
自虐的になるならない以前に、日本の風習を他国にとやかく言われる筋合いなど無いはずです。
日本がどう対応したって、結局反日政策に利用したいだけなんですよ。


麻生氏の発言ですが、安倍総理が9条改正への意欲を見せた後のナチス発言です。
9条改正+ナチス、あまりにも揃いすぎていますね。
単にナチスへの願望と捉えても良いのでしょうか?
私は何かをあぶり出しているように見えるのですが。


民主党政権が『人権擁護法案』を通そうと躍起になっていたことをご存知でしょうか?
ヘタすれば日本国民の自由を奪われかねない監視社会になるところでした。
民主党の他にも、日◯祖、シ◯キ隊など、日本には様々な反日組織がウジャウジャと存在します。
“日本を取り戻す”
オカピーさんのようにマイナスなイメージとして捉えるか、そのままのイメージとして捉えるか。

2013/08/05 22:11
少し熱くなってしまいました。
このままではオカピーさんの言うように、本当に水掛け論になってしまいそうです。
本題ではないことに執拗に絡んでしまって申し訳ないです。
お邪魔でしたらコメントを消してもらっても構いません。


今度は映画についてコメント出来たらと思います。

2013/08/05 23:32
米さん、こんにちは。

紳士的な態度ですから、削除致しませんよ^^
映画の議論にしろ、何にせよ、真面目な意見の交換は色々役に立つことがあります。

僕は、基本はノンポリの個人主義者。
しかし、ここまで政府により生活が脅かされると少しは愚痴が洩れるものでしてね。

>アジア諸国
目の付けどころは良いと思いますが、他のアジア諸国とは被害者意識という下地が全然違うので、一概に言えないと思います。
「たられば」の結果は、経済の未来予測と同じで、誰にも解りません。現在安倍さんの経済ブレーンですら消費税について両極端になっているでしょう?

>民主党
僕が民主党に期待したのは、自民党の再生の為。しかし、大勝ちした自民党は下野した理由への反省は言葉だけで、言いたい放題やりたい放題。品がないです。
高校の先輩二人が総理大臣を務めた1970〜80年代の自民党は今から思えば良かった。

>『人権擁護法案』
単純所有まで規制する「児童ボ○ノ禁止法」も、成立すれば、五十歩百歩という結果になりかねないのでは?
確か民主党により提議されたと記憶しておりますが、成立させた政党が責任を負わなければならない。
これで日本のコミック・アニメが衰退したら、麻生さん、がっかりでしょうよ^^

>自虐
脈々と続く歴史は簡単に分断できるものではありません。
太平洋戦争の胚胎をいつに求めるか考えたら、黒船来航でしょう。後の流れはご存知の通り。1930年代にそれを求めたら、正鵠を得ません。
それを承知で“自虐”という言葉をお使いになれる方は大した度胸のある方ですよ。

“自虐”と言えば、自民党が今やりたいことをそのまま実行できたとしたら、有難いことに、日本は欧米に相手にされなくなって、まずどこよりも早く沈む公算大ですので、僕は自虐的にそれを待っているのです。
オカピー
2013/08/06 21:07
オカピーさん、こんばんは。
スリリングな作品でしたね。アニエスカ・ホランドはアンジェイ・ワイダの映画ユニットのメンバーだったそうです。やっぱりなという感じですよね。
政治談義になりますが、それにしても、現在の日本の行政や立法の「形態」を国民がどのくらい保持したいと考えうるか?行政の執行者が真に公僕であるかの否か?国民が彼らを使いこなしているか否か?
わたしはこのような当たり前のことを日本国家の構成員として考えてないんではないかと思えてなりません。国民が意識すべきは、その総意を行政によって執行させるという意識だと思うのですが・・・。
国民が「受け身」で行政の執行者に「服従」している意識では、中国も韓国も北朝鮮もアメリカもへったくれも無い。まして民主主義や選挙の意味もない。
服従のための人気投票と自ら主権者たる議会選挙・運営は全く異なるわけです。
もっと言うと、行政権と立法権の区別を明確に意識することが大切だと考えます。
行政の執行者はバカでもいいのですが、つまり立法権が存続していれば国家の命は続けられますから。しかし国民による立法権が無くなれば国家そのものが死滅しますから、内閣はバカでもいいけれど、国会がバカだとだめなわけです。
真っ先に考えなければならないことは、日本国家そのものを死滅させないようにしなければならないことですよ。歴史観なんて立法権の行使を国民が自ら行う意識によって結論が自然に出るものです。どこの国でもその意識のない服従者意識で被害者意識を払拭しようとしても無意味ですよ。自虐も加虐もありませんよ。
まず、政府が大きいの良しとしても、当たり前ですが国家よりは小さいに決まってます。たかが行政の執行者でしかない政府が国家(立法権)を縮めて、自身は縮まらないなんて、これほど頭の悪い国家運営はありえないですよ。
では、また。
トム(Tom5k)
URL
2015/11/15 02:12
トムさん、こんにちは。

>アニエスカ・ホランド
「秘密の花園」という、児童小説の大家バーネットを映画化した穏やかな作品も作っていますが、骨のある作家ですね。

>国民
日本人は昔からのお上意識が抜け切れず、国民主権も民主主義も本質的に理解できていない人が多いのではないかなあと思います。
デモをやっている人々もその点に関しては甚だ怪しいものです。
解っている人も仰るように「受け身」で、それが政府の国会を馬鹿にした態度を生んでいるのでしょう。
国会を軽視した安保法制成立までの態度を観て支持率はもっと下がると予想していましたが、国立競技場のやり直しを決めたら上がり、韓国・中国と会談を持っただけで上がる。三権分立の精神も民主主義も解っていない証左のような気がします。

>歴史観
なるほどなあ。
近代政治形態が確立して以降、行政権が立法権を圧倒して成功した例はありませんものね。ナチスがその典型でしょうが、立法権そのものがないに等しい北朝鮮は今の代で終わるような気がします。中国はもう少し長く続くでしょうが、歴史のダイナミズムがそう長く続くのを許さないはず。

政府と同じ政党とは言え、日本の与党議員の政府への服従ぶりはみっともないですね。野党も政党運営ばかり考えていてみっともない。
これをもっときちんとするのは与党と野党がもっと拮抗しないといけない。それには国民がもっと利口にならないと。立法府が機能しなければ、仰るように、泥船になって日本沈没ですからね。議席数が票の獲得数とひどく乖離する小選挙区も止めてもらいたいものです。
オカピー
2015/11/15 21:09

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