プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「あなたへ」(地上波放映版)

<<   作成日時 : 2013/08/25 11:39   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 4 / コメント 2

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・降旗康男
ネタバレあり

東映の任侠映画時代から半世紀近い付き合いになる降旗康男監督=高倉健主演コンビによるドラマ。コンビ作はこれで20作目という。その意味で、中年高倉健の人物像を形作ったのは降旗監督と言って良いかもしれない。
 今回観たのは20分ほど時間枠を拡大した地上波放送で、正味106分の放映。劇場での上映時間が111分なので5分のカットがあるが、エンディングのクレジット部分を抜けばほぼノーカットと見なすことができる。

富山刑務所の指導技官・健さんが、亡くなった妻・田中裕子から死後手紙が届き、故郷の長崎県平戸の海に散骨してほしいと頼まれた為、妻との旅に備えて自ら作り直していたキャンピングカーを駆って1300キロ離れた目的地を目指す。

「中年高倉健を形作ったのは降旗監督と言って良いかもしれない」と述べたが、その指針となったのは山田洋次監督の傑作ロードムービー「幸福の黄色いハンカチ」(1977年)ではあるまいか。
 本作は同作にオマージュを捧げているかのようなロードムービーで、あの作品では元服役者だった健さんが元刑務官という設定もニヤッとさせる。にも拘らず、パトカーが現れると「健さん危ないっ!」と条件反射的に思ってしまうのは「ハンカチ」のなせる技なのだろう。

これまでの降旗監督作品よりぐっと行間を読ませる作りで、ポイントが掴みにくい。
 ヒントとなるのは、妻が何故手の込んだ方法で散骨を依頼したかと主人公が懐疑的になる部分であろう。しかし、平戸の食堂女将・余貴美子は「夫婦だって相手のことを全部解ることはできない」と言う。これは彼女の7年前の時化に漁に出て行方不明になった夫との関係が前提になっているわけで、どうも作者は【夫婦の不確かであるが故に互いを認めなければ成り立たない関係】を通奏低音にしたかったらしい。

彼女は夫の死亡保険で食堂を開いていて、実際には生きているその夫と主人公は旅の途中で知り合っている。店頭販売の男・草なぎ剛の年上の部下・佐藤浩市である。彼女から依頼された娘の写真を海に捨てずに再会した佐藤に渡す主人公がどこで二人の関係に気付いたか推測すれば、彼女がキャンピング・カーの前で夫について詳しく語った時と思われる。佐藤こそ舟を貸してくれそうな老人・大滝秀治を紹介してくれた人物だからである。佐藤はそれまでの人生の空しさから漂流に乗じて姿を消したのだが、娘が結婚しようとしている事実を知った後も帰ることは勿論音信もとれない。死んだことになって妻が死亡保険金を取得しているからだ。前半、旅先の主人公に妻の保険に関して電話が掛かって来るのはさりげない伏線である。

かくして旅路の果てに彼が知るのは、最初に出会う放浪者ビートたけしが“帰るべき場所があること”が旅と放浪の境目を成す重要な一つの要素であると言ったように、「妻が死んだ後も解放された自分には帰る場所がある」ということであろう。妻は亡くなっても一緒に旅をする夢を叶えさせ、散骨させることで帰る場所のある幸せに気付かせてくれたわけである。佐藤にもビートたけしにも、もはや、帰る場所はないのだ。

すっきり誉める気になれないが、こう分析してみると、なかなか良く出来ているような気がする。

高倉健は、言わば、日本人の最大公約数的中年男性理想像でしょう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
あなたへ
あっさり味でも旨味たっぷり。   ...続きを見る
Akira's VOICE
2013/08/25 11:49
『あなたへ』
□作品オフィシャルサイト 「あなたへ」□監督 降旗康男 □脚本 青島武□キャスト 高倉 健、田中裕子、ビートたけし、長塚京三、原田美枝子、草? 剛、      余貴美子、綾瀬はるか 三浦貴大、佐藤浩市、大滝秀治、浅野忠信■鑑賞日 9月29日(土)■劇場 チ... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2013/08/25 17:11
あなたへ
散骨と納骨の違いわかりますか 公式サイト。降旗康男監督、高倉健、ビートたけし、田中裕子、佐藤浩市、草?剛、余貴美子、綾瀬はるか、浅野忠信、三浦貴大、大滝秀治、長塚京三 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/08/25 18:56
あなたへ/高倉健、田中裕子
降旗康男監督と名優・高倉健さんのタッグ20作目となる作品だそうです。その過去作品はTV放映されるような有名なものしか観てませんけど、いずれも高倉健さんならではの作品で、今作 ... ...続きを見る
カノンな日々
2013/08/25 22:45

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ぼくは、降旗、高倉健作品では、「冬の華」が一番好きですが、クリント・イーストウッドといい健さんといい、男優って、洋の東西を問わず、若い女優がいいのですかね(笑)

向田邦子原作の「あ・うん」で、昭和の成金紳士役を好演した健さんには、もっと、年齢相応の枯れた役もやってほしいのですが・・。
浅野祐都
2013/08/25 21:37
浅野祐都さん、こんにちは。

>「冬の華」
「幸福の黄色いハンカチ」直後の作品で、なかなか良かった。
と言いつつ詳細は忘れましたが、任侠版“あしながおじさん”みたいな話でしたよね。

若い女優と言えば、ウディー・アレンもそんな感じ。

>年齢相応
そうですね。
健さんは昨年他界した父親と同じ世代、田中裕子は僕とほぼ同じ世代ですから、かなり無理しちょります^^
それが通用する若さを見せているのは大したものですが。
オカピー
2013/08/26 21:43

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「あなたへ」(地上波放映版) プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる