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zoom RSS 映画評「ある秘密」

<<   作成日時 : 2013/07/03 10:37   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2007年フランス映画 監督クロード・ミレール
ネタバレあり

近年ホロコースト(ユダヤ人狩り)をテーマにしたフランス映画が目立つ。その責任をナチスに一元化してきた反省の機運でも生じているのであろうか。本作は、上手くホロコーストから逃れたユダヤ人一家が戦後何十年も引きずることになる苦(にが)みを描くというユニークなアングルからその時代を回顧する心理ドラマである。

1950〜60年代、少年フランソワは、病弱な為に壮健な父マキシム(パトリック・ブリュエル)から嫌われ、頭の中で健康な兄を生み出す。それに加えて学校での差別発言に激怒して起きた喧嘩で怪我を負う。見かねた両親の戦前からの知人ルイーズ(ジュリー・ドパルデュー)は、戦中消えた彼の兄とその実母アンナ(リュディヴィーヌ・サニエ)の話を始める。
 水泳選手だった少年の母親タニア(セシル・ド・フランス)は後妻ということになるが、前妻アンナがいる時から父マキシムはタニアに関心を示している。それに気付いたアンナが、ユダヤ人である誇りを捨てて身分を偽り悲劇を逃れようとする夫(の裏切り)に対して示す抵抗が、いくらでも誤魔化すことができたのに自分の正体を官憲に明かし、夫の愛する健康的な息子を道連れにする行為である。

そこには民族の誇りを巡っての対立もある。しかし、タニアが絡んで来なかったら彼女も自ら悲劇に飛び込む真似はしなかったにちがいない。この辺りはまるでギリシャ悲劇かそれらをベースにしたフランス古典悲劇を見るような凄味がある。

原作者フィリップ・グランデールの自伝的作品で、彼にしてみれば自分の病弱はアンナの呪いであるかのように思ったに違いない。今や子持ちの大人になったフィリップ、劇中のフランソワ(マチュー・アマルリック)が、老いた父親が首輪をはずした為に愛犬が死んだ事故に苦悩する様子に亡き妻子への彼の思いを透視し、その交流から少しずつ一家は重苦しい“沈黙”から解き放たれるのである。

この文学的な解決が頗る詩的で美しい。その気分を殺ぐのは、最後のユダヤ人犠牲者モニュメントの描写である。ホロコーストを描くという観点からは正解であるが、ずっと個人的な心情を綴って来た作劇がここで破綻してはいまいか。僕の好きな19世紀の作家シュトルムに通ずる叙情性と心理描写との相乗効果が、散文的と言って良いほんの数秒の描写で水泡に帰した気がする。

残念ながらフィルム上映ではなかったらしいね。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
母親の過剰な愛情は真綿で出来た蛇に首を絞められているようなものだと言った人がおりました。
最後のシーンはいらなかったけど、入れたかったんでしょうな〜
ねこのひげ
2013/07/07 18:00
ねこのひげさん、こんにちは。

>母親の過剰な愛情
近年良くも悪くも母親の愛情を描いた作品が増えましたね。過剰になると、子供が碌なものにならないのは歴史が証明する通り。

>最後のシーン
ホロコーストは悲劇ではあるけれど、モニュメントは映画的には無粋でしたよ。
オカピー
2013/07/07 19:02

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