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zoom RSS 映画評「風にそよぐ草」

<<   作成日時 : 2013/06/06 10:07   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年フランス映画 監督アラン・レネ
ネタバレあり

アラン・レネが87歳で発表した軽妙な熟年恋愛映画で、コメディーと言っても良いタッチ。有名な「二十四時間の情事」(1959年)などのイメージでヌーヴェルヴァーグ監督の中ではお堅いと思っている映画ファンが多いようだが、レネは既に「恋するシャンソン」(1997年)という洒落たミュージカルも作っているし、案外色々なタイプの作品を作る監督である。

熟年歯科医サビーヌ・アゼマがバッグをひったくられ、捨てられた財布を同じ年代の紳士アンドレ・デュソリエが拾い、中に入っていた飛行士免許で観た飛行機好きの彼は彼女に傾倒し、電話攻撃を掛け手紙も出す。一通りのお礼では気が済まない彼が執拗に迫り車までパンクさせられて呆れた彼女は、財布を預かっていた警官マチュー・アマルリックに相談する。ところが、警官に言われて彼が大人しくなると、今度は彼女の気が済まず彼を追いかけ出す。

そんな二人の行動に巻き込まれるのが、彼女の同業者のエマニュエル・ドヴォスと彼の若い奥さんアンヌ・コンシニで、最後はサビーヌがデュソリエとアンヌを飛行機遊覧に誘う。
 飛行機が森に突っ込んだのかどうか微妙なところでカメラがパンをして、突然現れた少女が物書きらしい母親に「猫になったら、猫のえさが食べられるの?」という奇妙きてれつな質問をしてFinマークが現れる。

三人に訪れた結果を示していない上に、この最後の場面が謎めいていて、訳の解らないところも多いが、それでも不条理な展開ぶりが相当面白いと言って憚らない。メロドラマ的とは言え、不条理という点では「去年マリエンバートで」(1961年)と実はそんなに変わらないのではあるまいか? 
 ヒロインの役名がマルグリットなのは「二十四時間の情事」(原作者マルグリット・デュラス)を思い出させ、飛行機がパンをした出て来るトピアリー(?)は「マリエンバート」を思い出させ、「恋するシャンソン」の二人を再共演させるなど、過去の作品がなぞっている気がしないでもない。

語り口の若々しい軽妙さに貢献しているのは洒落た画面処理で、最高に愉快なのは、飛行場の事務室で二人が再会して抱きしめ合うところで一度Finマークが現れる茶目っ気。しかもBGMが何故か20世紀フォックスのテーマ曲である。途中でウィリアム・ホールデンとグレース・ケリーが共演して僕も若い頃TVで見た「トコリの橋」(1954年)が出て来るのも面白いが、あの作品はビター・エンドであるし、パラマウント映画なので関連性はない。

洒落っ気を楽しむには同系統の「恋するシャンソン」より最後が晦渋になってしまっているが、トリュフォー亡き今、洒落っ気で楽しませてくれる可能性があるフランスの映画作家は、僕が“デジタル時代のトリュフォー”と勝手に称しているセドリック・クラピッシュくらいしかいなくなってしまったので、嬉しくなって☆を多くした次第。

新藤兼人は98歳で遺作を、マノエル・デ・オリヴェイラは100歳で今のところの最新作を撮っている。二人に比べれば今月91歳になったばかりのレネさんはまだ若い。これからも映画を撮ってください。

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『風にそよぐ草』
(原題:Les herbes folles) ...続きを見る
ラムの大通り
2013/06/06 22:23

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
アラン・レネ・・・・・まだ生きていたのか〜というのが実感でありますが。
ねこのひげは、やわらかい方の監督の印象が強かったですけどね。
『夜と霧』という恐ろしいドキュメンタリーもありますけどね。
ねこのひげ
2013/06/09 19:26
ねこのひげさん、こんにちは。

レネはゴダールより好きな監督。
「去年マリエンバートで」もわけの解らないうちに、非常に楽しんだ作品ですね。
「戦争は終った」「プロビデンス」も凄かった。
「薔薇のスタビスキー」が一番一般的だったでしょうか。
「夜と霧」はホロコーストをテーマにした短編でしたが、中味については殆ど忘れてしまいました。鑑賞時は高く評価したはずなのに、僕も歳をとったらしいです^^
オカピー
2013/06/09 21:24

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