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zoom RSS 映画評「それでも、愛してる」

<<   作成日時 : 2013/06/26 10:09   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ジョディー・フォスター
ネタバレあり

梅雨の季節に合わせたわけではあるまいが、何故か今月は心の中に鬱陶しい雨が降っている人物が登場する映画が多い。しんどいねえ。本作はジョディー・フォスターの監督第3作。

おもちゃ会社の二代目社長メル・ギブスンも文字通り鬱に陥った為に家族が分裂、責任を取る形で自宅から離れるが、何気なくビーバーの人形を手に取るとビーバーが話し出す。
 と言っても人形のビーバーが実際に話すわけではなく、行き詰ったギブスンが無意識に人形の口を自分の本音を吐く手段としているのである。

夫の引きこもり状態に嫌気のさしていた妻ジョディーも変則的ながら交流ができるようになったことを歓迎、ギブスンが自分の分身であるビーバーを新社長に据えて新商品を発表すると、その風変わりな経営への注目と相まって爆発的人気を博するが、こんな姑息な手段がいつまでも続くわけもない。
 ギブスンは人形を手放せないことが嫌になって手を切断、辛うじて一命を取り留める。人形を通して自分を見つめ直し、人形がなくなったことで再び自分の足で立つことを始めた彼は自分を嫌っていた長男アントン・イェルチンと和解する。

そもそもギブスンの鬱は、その後の(多くはビーバーの口による)彼の言動から、妻の彼に対する態度に秘めた思いや長男が自分を嫌っていることへの洞察が端緒になり、会社経営など色々なことが複合して起きたと推測されるのだが、つまり相手の心情を洞察する力があり過ぎることによる不幸である。同じ能力を引き継いだ息子と対立するのはどうも代々呪われた運命のようだ(ギブスンもその父親を嫌っていたらしい)。

その息子は学校で金銭を受け取ってレポートの代筆業をやっているのだが、少年の得意技は本人の立場で書けるということである。優秀だが兄の死によってちょっとした不良行為をしたことのある総代ジェニファー・ローレンスからも代筆を頼まれる。
 この辺りが本作の上手いところで、長男君は美人総代嬢のビーバーになるわけで、ジェニファーが途中から自分の言葉で語るのはギブスンが手を切断する行為に相当、それによりイェルチン自身も解放されるのである。かくして、細君同様に我々は父子の抱擁を最後に目にするという次第。

途中から親子の描写をクロス、オーヴァーラップさせながら進行するというアイデアがややもすると匠気を感じさせることになりかねいが、その相似関係を露骨に示さない節度が好感を呼ぶ。脚本家氏の手柄でありましょう。

この二年不安に苦しんだのに鬱にならなかったのは奇跡と思っている。何回か訪れた危ない時期を何とか切り抜けた。映画鑑賞のおかげだろうか?

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それでも、愛してる
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映画と暮らす、日々に暮らす。
2013/06/26 11:52
それでも、愛してる
鬱病をアウトソーシングできるか問題 公式サイト。原題:The Beaver。ジョディ・フォスター監督・出演。メル・ギブソン、アントン・イェルチン、ジェニファー・ローレンス、チェリー ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/06/26 12:50

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。
「映画があってホントよかった!」
おおよそ今は鬱系無縁、遊民生活の私でさえ
映画さまさまの日々でございます。
ま、この頃は読書への比重がいや増しており。^^
お酒厳禁ともれ聞きましたプロフェッサーの
お病気もこの場合にはプラスにお働きに?
何かことが起きるごとに酒呑みというものは
直行!酒に逃げますから。間違いなく。

真摯なつくり方のJ・フォスター、
いろいろあると聞くM・ギブソンも
適役だったかと思います。
やはり“人は困難からでないと学べない”
長く生きてきても、痛感しきりでございます。^^;
vivajiji
2013/06/26 12:12
メル・ギブソンは、監督としても、役者としてもいいですよね。
あのマッドマックスが、と思うと感慨深い。「マッドマックス」ではタイトルロールとはいえ狂言回しみたいな役で、敵役のトーカッターを演じたヒュー・キース・バーンの方が華があるくらいでした。たしかギャラもトーカッターの方が高かった筈。
私生活のことでいろいろ言われていたメル・ギブソンを起用したジョディ・フォスターはさすがだと思いました。
nessko
URL
2013/06/26 15:08
vivajijiさん、こんにちは。

>お酒厳禁
という病院からのきつい指示がなければ、酒に逃げ込んでいたかもですね。
恐らく酒を飲んだら次の日には病院のベッドの上ですから。

人間、はたから見れば問題を抱えていないように見えても何かしら嫌になることはありますよね。
漱石も「とかくこの世は住みにくい」と仰っていますので、間違いないでしょう

>読書への比重
当方も、やはり昨今の映画が昔ほど楽しめないので、読書への比重が増しております。
古典指向につき、わが山の図書館では読める本が限られているので、こちらの住民も使えることになっている隣町の図書館と県立図書館から借りることに致しました。これも我が精神の健康に役立っているようです。何十年も読みたくて読めなかった本が読めるわけですからね^^

>J・フォスター
「トム・ソーヤーの冒険」或いは「タクシー・ドライバー」の子役時代から記憶されているベテラン観客と、すっかり大人になってから記憶した比較的若い世代とでは感覚が大分違うでしょうね。
随分大人になったなあ、というのが我々の感慨!

>人は困難からでないと学べない
正にこれを地で行く二年間でございました。
オカピー
2013/06/26 19:26
nesskoさん、こんにちは。

>監督としても
イーストウッド、レッドフォード、ギブソン、この辺りは監督としても実にしっかりした物を作っていますね。
何か一家言ある人なんでしょう。そうでないと一貫して良い作品は作れないと思います。

ジョディー・フォスターについても「感慨がある」と、上のvivajijiさんへのコメントで述べましたが、オーストラリア映画を日本人に知らしめた「マッド・マックス」に思いを馳せますと、ギブソンの現在は本当に感慨深いものありです。
演技力について早めに目を付けた僕も、まさかハリウッドに進出してここまで成功するとは夢にだに想像できませんでしたねえ。
その後は色々とあるようですが、大物は醜聞も芸のこやしにしてしまうとか。この映画の演技にも実際生かされているのかもしれませんね。
オカピー
2013/06/26 19:38

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