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zoom RSS 映画評「ヘルタースケルター」

<<   作成日時 : 2013/05/04 09:49   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・蜷川実花
ネタバレあり

「傷だらけのアイドル」(1967年)と全く同じ図式の日本映画である・・・などと言われて何のことだか解る人は現在、映画ファンの中にも殆どいないと思うが、ビートルズの怪作「ヘルター・スケルター」を収めた通称「ホワイト・アルバム」が発表される一年前に英国で作られた社会風刺映画の秀作である。

かの作品では祀り上げられて人気者になったロック・スターが多忙なスケジュールと虚構の世界に踊らされる孤独感に苛立ちを爆発、大衆に暴言を放ったために芸能界から消える憂き目に遭う。本作は、それをモデル兼女優に変え、芸能界風刺に加え、女性らしく美と若さの衰えへの恐怖を裏テーマにして作り直したようなもの。

沢尻エリカ扮するりりこは、実は全身美容整形の作り上げられたカリスマ・モデルであり、免疫抑制剤を定期的に服用しないと痣のようなものが現れる。しかも、同じモデル事務所の後輩・水原希子が自然美で台頭、トップ・スターの座を追われる恐怖からマネジャーの寺島しのぶに襲撃を命じるが、彼女は芸能人の宿命に対して泰然としている相手を襲えない。
 他方、ヒロインが施術を受けているクリニックにはお金や自殺騒動をめぐって色々な醜聞があり、訴追を狙っている検事・大森南朋が彼女に証言を迫って証拠品を渡したことからその情報がリークされ、りりこは奇行の末に芸能界から消えてしまう。

「傷だらけのアイドル」と違うのは、怪物のような人間が人間のような怪物になって或るところに潜んでいるという幕切れがあることで、世評よりは興味深く見られた。特に、芸能ニュースに一切関心のない僕でもある程度知っている沢尻エリカ嬢が自身のキャラクターのパロディーを演じているような部分が際立って面白いと言える。

卓抜した傑作などと言う気は毛頭ないが、世評が実力よりやや厳しいものになっているのは、話題作に付きものの針小棒大的反応だろう。蜷川実花女史の第二作は、デビュー作「さくらん」よりぐっときちんとした映画作りになっていると僕は思う。写真家だけに色彩設計は相変わらず良い。

しかし、この題名であるからには、版権に大金を払ってもビートルズの「ヘルター・スケルター」を使って欲しかった。あの曲の魔力を味方につければ、この映画はもっと迫力あるものになったにちがいない。
 「ヘルター・スケルター」と言えば、ロジェ・ヴァディムの凡作(にも拘らず二回も映画館で観る羽目になった)「花のようなエレ」(1971年)で滝の音に紛らわせて一部がサブリミナル的にこっそり使われているのに気付いて感動したことがある。世界中で何人の人が気付いたかという程度のものである。

日本盤のレコードには対訳が大体付いているが、「ヘルター・スケルター」には“対訳不能”とあった。

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ヘルタースケルター/沢尻エリカ
主演があの沢尻エリカさんということだけで超話題作となってしまっている節もありますが、ワタシ的には蜷川実花監督の作品というだけで興味津々、キャスティングも個性と実力を兼 ... ...続きを見る
カノンな日々
2013/05/04 09:52
ヘルタースケルター
公式サイト。岡崎京子原作、蜷川実花監督、沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子、新井浩文、鈴木杏、寺島進、哀川翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおり。「しっ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/05/04 10:01
ヘルタースケルター
なんかもう色々げんなりすぎて疲れた。 ...続きを見る
Akira's VOICE
2013/05/04 10:45
『ヘルタースケルター』('12初鑑賞74・劇場)
☆☆☆−− (10段階評価で 6) 7月14日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター7にて 12:15の回を鑑賞。 ...続きを見る
みはいる・BのB
2013/05/04 12:45
『ヘルタースケルター』
----おっ。やっとだね。 この夏の超話題作…。 「そうだね。 ただ、話題が主演の沢尻エリカの 映画以外での素行に集まりすぎているのが気になるけどね。 でも、それもやむなしか…。 本作は、やはり彼女なしでは考えられない映画」 ----過激なセリフ、 それに大胆なベッドシ... ...続きを見る
ラムの大通り
2013/05/04 14:58
一人の女の子の落ちかた。〜『ヘルタースケルター』
 その完璧な容姿でトップモデルとして君臨し、芸能界を席捲するりりこ(沢尻 エリカ)。しかし、彼女の美しさは全身整形によって造られたものであり、定期 的なメンテナンスと投薬を必要とした。秘密を抱... ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2013/05/05 20:21
『ヘルタースケルター』
□作品オフィシャルサイト 「ヘルタースケルター」□監督 蜷川実花 □脚本 金子ありさ□原作 岡崎京子 □キャスト 沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野 剛、水原希子、新井浩文、       鈴木 杏、寺島 進、哀川 翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおり■鑑賞... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2013/05/07 14:38

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
「傷だらけのアイドル」はテレビで観たのを覚えています。ちょっと生意気盛りの頃だったせいか、おはなしがわかりやすすぎて白けた記憶がありますね。まだ映画として全体を観るような楽しみ方ができなかった年頃でしたから。
「ヘルタースケルター」は原作のマンガは読んでいるのですが、書評で持ち上げられていたほどおもしろいとは思わなかった。はっきりいってがっかりしました。特に岡崎京子のファンではないというのもありますが、昔の作品にくらべて退行したような印象すら受けて、その一因にオカピーさんが映画評で言っている昔同じ図式のものを観た、というのもあったと思い当たりました。

岡崎京子、マンガ読むと「この作者はゴダール好きなんだな」と思わせるところがある。私はゴダール先生自体は頑固オヤジ的不器用ささえ感じて愛しいと思うところがあるんですが、ゴダールが好きでゴダール風な真似事をする人には抵抗感を覚えるので、岡崎京子のいい読者にはなれませんでした。
nessko
URL
2013/05/04 12:21
nesskoさん、こんにちは。

>「傷だらけのアイドル」
作られた時代ではまだビートルズ全盛期で、まだ芸能界が自己暴露的になる寸前だったと思われます。
だから、あの映画の描いた世界は新鮮だったのではないでしょうか。
その数年後には既に時代が変わっていて、余りに図式的に見えたのかもしれませんね。

>岡崎京子
コミック特に近年のものは解らないのですが、この方の年齢からするとリアルタイムで「傷だらけのアイドル」を観たとは思われないので、或いはTVで観ているかもしれません。地上波で1970年代、衛星放送で1990年代に放映された記憶があります。
少なくとも、nesskoさんが「傷だらけのアイドル」を観ていたので、余計につまらなく感じたのは確かなようですね。

>岡崎京子、ゴダール
うーむ、コミックを読んでそう感じられることがあるのですか。
近年コミックには御無沙汰なので、想像がつきません。
映画なら解るんですけどね(当たり前)。
オカピー
2013/05/04 21:53
意外にも面白かった。
父の蜷川幸雄が、映画ではあまり冒険していないのに比べ、随分やっているなと思う。
館内は、若い女性で満員で、「芸術エロ」で、ポルノを見たいけど、恥ずかしくてなかなか見られない女性に、芸術映画として受けたのは、商売としてはなかなか上手いなと思いました。
さすらい日乗
URL
2013/05/05 07:11
この御嬢さんも、デビュー当時は可愛らしかったですけどね〜
これほど、極端に変わった人も珍しいですね。
映画はけっこうおもしろかったですけどね・・・・・
女の方が大胆なのかな?
ねこのひげ
2013/05/05 19:04
さすらい日乗さん、こんにちは。

昔同じような英国映画があったので「なーんだ」という気分もありましたが、なかなか面白かったですね。
「失楽園」とか「エマニエル夫人」とか、王道ポルノでなければ日本女性が堂々と観にいけるという図式は数十年前から変わらないと見えます。
オカピー
2013/05/05 21:11
ねこのひげさん、こんにちは。

映画デビュー前のグラビア・アイドル時代や「パッチギ」の頃の可憐さを考えると、「別に」事件以降では別人の感ありですね。
多少鼻が高くなったなという芸能人はいらっしゃいましたが、彼女は別格。同姓同名の別人かと思いましたよ。

映画は、本人と重ね合う部分が面白かったであります。配役の妙と言えば、配役の妙でした。
オカピー
2013/05/05 21:18

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