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zoom RSS 映画評「侵入者」

<<   作成日時 : 2013/05/31 11:05   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1962年アメリカ映画 監督ロジャー・コーマン
ネタバレあり

ロジャー・コーマンが生涯製作した作品で唯一赤字を出したという、人種差別をテーマにした社会派映画。監督もしているが、公民権運動が盛んになりつつある1962年当時ではヒットしないのもやむなしという内容で、多分南部では公開もされていないのではないだろうか? 8年後にウィリアム・ワイラーの監督した秀作「L・B・ジョーンズの解放」も恐らくヒットはしていまい。日本でも劇場未公開。

アメリカ南部のある町に、児童福祉関係者と自称するセールスマン風体の白人ウィリアム・シャトナーが降り立つ。彼の来(きた)った目的は、白人だけが通っていた学校に黒人が通うことも可能ならしめる人種統合法の撤廃で、そうでなくても人種差別に固まっている町民たちを扇動する。唯一彼らの行動に異常性を感じた新聞記者のフランク・マックスウェルが抵抗を示して黒人生徒を引率するが、これによって彼は片方の目を失い、失明する。
 この事件で寧ろ運動が後退するのを恐れたシャトナーは彼の娘ビヴァリー・ランスフォードを唆し、同級生の黒人チャールズ・バーンズにレイプされたように思わせる作戦を取るが、黒人の社会不適格性を問題にしたい彼の思惑とは裏腹に町民はリンチを第一目的と考えている。そこにシャトナーが原因が妻に失踪された白人レオ・ゴードンが現れて彼のインチキを暴き立て真実と確認された為暴力を振るう理由を失った町民たちは彼を足蹴にして現場を後にする。

映画はいやがうえにも緊張を覚えさせる「サイコ」などヒッチコック映画でお馴染みのバーナード・ハーマンを彷彿とする音楽で始まり、主観ショットらしきものも交えたファースト・シークエンスは他のコーマン映画とは一線を画するきちんとした画面構図で進行し(後のシークエンスがダメという意味ではない)、ぐっと手応えを感じさせる。まずは快調な出だしである。

84分という上映時間なので思ったより早くシャトナーは本性を現すのだが、火の十字架を立てた直後に彼は姦淫の罪を犯す。いかに彼がキリスト教精神にもとる卑しい人間であるか鮮やかに示している。その因果応報は幕切れで訪れるわけだが、ラスト・シークエンスで彼のネガティヴな人間ぶりが強調される。暴力を振るおうとする町民より精神的差別を画策する彼の方が遥かに卑しいと作者は言うのである。
 黒人に協力しただけのマックスウェルを失明させた同じ町民の態度とは思えず、整合性に些かの疑問がなくもないが、起承転結は明確である。余りに明確すぎて20世紀以前の演劇を観るような気さえするくらい。その結果主題表現が直截的になりすぎ、「L・B・ジョーンズの解放」のようない観終わった後考え込む余韻が少ない。コーマンがテーマは表に出しすぎてはいけないと反省したのは、配収問題を別にしても、むべなるかな。

しかし、メジャー映画が手を出す前に思い切って人種問題を正面から扱った勇気は大いに買わなければならないし、娯楽性はともかく商業映画としての面白さは寧ろあるほうだと思う。

原作を書いて自ら脚色をしたチャールズ・ボーモントは校長役で出演も果たしている。本作の前後に小説以外にもTV「トワイライト・ゾーン(邦題ミステリー・ゾーン)」や「ヒッチコック劇場」の脚本でも実績を残した人で、38歳にして病死している。

5年後には「夜の大捜査線」が作られる。社会がどんどん変わっていくアメリカ激動の60年代なり。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
案外、ほんとうはこんな映画を作りたかったのかも・・・・・
時代に先行しすぎたのかも・・・・・
ねこのひげ
2013/05/31 18:44
ねこのひげさん、こんにちはPART3です^^

ケネディーの政策が効果を出すのはもう少し後ですからね。
少なくとも、この映画は南部に市場はなかったでしょう。
東京で騒いでいる連中も恥ずかしい人々ですが、アメリカ南部ではもっとひどいことが半ば公然と行われて来たわけですから、信じがたい思いがします。
オカピー
2013/05/31 21:18
紹介させていただきます。


日 本 語 の 起 源

言 霊 百 神

k o t o t a m a 1 0 0 d e i t i e s


是非!
コメント
2013/12/04 00:13

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