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zoom RSS 映画評「汚れた心」

<<   作成日時 : 2013/05/19 15:09   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年ブラジル映画 監督ヴィセンテ・アモリン
ネタバレあり

日本人(正確にはブラジル日系一世と二世)のお話ながら知っている日本人はそれほどいないと思われる実話(臣道連盟事件)にヒントを得て書かれた物語。

日本の敗戦直後、ブラジルの日本人移民に敗戦の事実がきちんと伝えられなかった為に起きた悲劇で、軍服を着た退役大佐・奥田瑛二を中心に行なわれている集会が、ブラジルの官憲により、“禁止されている”と強制的に散会させられ、日章旗も踏みにじられる(実際には踏まれていないが)、というところからお話が始まる。
 この時点では大半の日本の観客は不条理ではないかと思うに違いないが、お話が進むに連れて、不条理は日本人コミュニティの中にあることを知ることになる。
 というのも、日本の敗戦を信じず情報を封じ込めようとする奥田が、追従する人々に、ポルトガル語の放送で知った日本国敗戦を信じる人々を“国賊”として粛清させていくからである。

その最先鋒に立たされるのが写真屋を営む伊原剛史で、集会のかどで逮捕された時官憲の通訳をしただけの隣人を殺すように命じられる。教師をしている妻・常盤貴子の教え子(セリーヌ・フクモト)の父親・菅田俊をも公式に認められた集会で敗戦の事実を認めさせようとしたかどで殺すことになる。
 妻は夫の行動が嫌になって教え子母娘(母=余貴美子)と共に町を去る。恐らくこの“事件”が伊原の内心にくすぶっていた大佐への疑念を燃焼させ、彼を暗殺させるに至らしめる。それと呼応するように帰国して年齢を重ねた彼女は「あの戦争で私は愛する人を失いました」と記す。

一見奥田大佐のファシスト的狂気をテーマにしているように感じられるが、色々と資料を当たってみると、どうも問題はそのレベルではなさそうである。その根拠となるのが、「この出来事はガイジンでなければ語れない」と日系人が監督ヴィセンテ・アモリンに語ったという言葉であり、その心を解く鍵が「汚(けが)れた心」というタイトルにある。
 日本人なるものが形成されて以来その心底に“汚れた心”のアンチテーゼである“清き心”が流れ、それに呪縛されている日本人が多いという。本作作者たちが俎上に載せるのは、タイトルに反して“清き心”の方。単純に考えれば称賛すべき“清き心”が問題なのは、日本人において、動機が清ければ行動の是非は問われない、という結論に達しがちだからである。

情報遮断という不運が機能したにせよ、それがブラジルで3万人もの逮捕者を出したという日系人同士の抗争の精神的背景ではないかと原作者フェルナンド・モライスは考えているようで、それが正しいかどうか安易に断定はできないものの、相当興味深いアプローチであることは否定できない。

終盤母親そっくりになった妻の教え子が写真屋を訪れるエピソードなど作劇的にぎこちない部分もありながら、事件を紹介してくれたこと、その背景にある日本人的精神について興味を喚起していること、この二点だけをもってしても本作は一定以上の評価に値すると思う。僕の心底に巣食っている“清き心”のなせる業ですかな。

清き心 汝の名前は 日本人なり(字余り)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ブラジルで勝ち組負け組に分かれて揉めているというのが、20年くらい前にニュースになって、戦争が終わって何十年もたっているのにいまだにそんなもめごとがあるのかとあきれましたけどね。
そのあとから日本で、勝ち組負け組という言い方が流行ったんですよね。

勝ち組負け組・・・・いやないいかたです。
ねこのひげ
2013/05/20 03:05
ねこのひげさん、こんにちは。

そんなニュースがあったような気もしますが、忘れております^^;

>勝ち組負け組
現在言われるようになったのは、恐らくそのニュースが原因なのでしょうね。
しかし、ブラジルでの勝ち組は「勝ったと信じている組」の意味ですから、定着した意味とは違いますね。
オカピー
2013/05/20 19:29

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