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zoom RSS 映画評「少年と自転車」

<<   作成日時 : 2013/05/01 09:35   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年ベルギー=フランス=イタリア合作映画 監督リュック・ダルデンヌ、ジャン=ピエール・ダルデンヌ
ネタバレあり

ダルデンヌ兄弟の作品では「息子のまなざし」(2002年)を買うが、本作はそれ以来の手応えのある完成度を見せていると思う。彼らは手持ちか肩かけのいずれかのカメラでドキュメンタリー・タッチで撮る為逆にフレームを意識させ過ぎて余り好みではないが、昨今通常の大衆映画でも当り前のようにカメラが揺れる為に慣れて全く抵抗なく観られたか、或いはお話しの訴求力の強さからそちらまで関心が廻らなかったのかもしれない。

一ヶ月程度という約束で父親ジェレミー・レニエにより児童養護施設に預けられた12歳の少年トマス・ドレ君は父親の携帯に繋がらない為脱走して父親に逢いに行くが、アパートはもぬけの殻。施設の人に追われて逃げた階下の診療所にいた患者の女性にしがみつく。彼女即ちセシル・ド・フランスは彼の売られた自転車のことを知り、買い戻して施設まで逢いに来る。愛着のあった自転車を持ってきてくれた女性に好感を覚えた少年は土日限定の里親になってくれないかと申し出る。
 かくして彼を世話するようになった彼女は父親も探してくれるが、父親はもう逢わないと宣言する。彼女の懸命な努力にも拘らず、トマス君は麻薬密売人と噂されるハイティーン少年になびいて、その計画に従って雑誌店の車を襲撃、店主の息子に邪魔されながらも金を奪う。悪徳少年は計画失敗と判断して金を受け取らず、トマス君は自分を排斥する理由を排除しようとお金に困っている父親に渡そうとしても拒否される。
 結局お金は戻りローティーンということもあってセシルが治療費などを弁済する形で示談になるが、どうしても許せない店主の息子に追跡されて怪我を負わされる。しかし、少年は気絶から蘇るとショック状態の親子を振り切って、愛用の自転車でセシルの待つ場所に向かう。

この映画は概ね好評であるが、一部に評判が悪い。その全てが一様に少年の性格に帰す。即ち、余りにいらいらさせる、馬鹿である、大人に依存し過ぎている、云々かんぬん。
 犯罪を取り沙汰する時に実際そうである場合「犯人(被告)は子供時代環境に問題があり・・・」という言い訳が必ず付きまとう。しかし、環境の悪い人間の殆どが犯罪を起さない現実を考えれば、僕は(例外もあるだろうが)環境を犯罪の言い訳にしてはいけないと思うのである。

その一方で、僕はこの映画を少年の性格を以って批判してはいけないと思う。何故なら少年は現に12歳に過ぎず、少年が碌でもない親を持った子供若しくは孤児の運命の不公平性を普遍的に体現するものとして映画を設計していると解釈できるからである。
 12歳の少年にも幅がある。彼は平均ではないだろう。しかし、ドラマ映画は観客の関心を引く為にインパクトのある設定を使って問題を提示し、かつ、そこから普遍性を導き出さなくてはいけない。それを考えた時この少年の12歳にしても多少幼い、というよりある意味頑固すぎる性格を観客はもっと冷静に観る必要がある。作劇上の瑕疵として挙げる人の多い、自分の人生まで犠牲にして甲斐甲斐しく少年に尽くすセシルに関する描写の不足もこれである程度説明が付く。

つまり、僕の解釈では、彼女は子供を設ける価値のない親の対照として置かれた象徴的人物なのである。ダルデンヌ兄弟らしい省略の美学という解釈でも構わないが、最終的に孤児や親に恵まれない子供の問題を鮮やかに提示しつつ普遍性を持たせるには、彼に多少特殊な性格を与え具体的に扱うのと正反対に、彼女については背景をなるべくぼかしたほうが寧ろバランスが取れる。お話がぐっと普遍化する。ベストの選択だったかどうかは解らないが、僕は現状で良いと思う。

自転車で角に消えていく幕切れの余韻と、二人が大きさの違う自転車で並走する場面の味わいが抜群。

何年か前【自転車が活躍する映画選】というのをやってみたが、その中に入れたい秀作であります。

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少年と自転車
他者との距離感を学ぶ少年 公式サイト。ベルギー/フランス/イタリア。原題:LE GAMIN AU VELO、英題:The Kid with a Bike。ジャン=ピエール、リュック・ダルデンヌ監督、セシル・ドゥ・フランス ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/05/01 10:09

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