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zoom RSS 映画評「摩天楼を夢みて」

<<   作成日時 : 2013/04/07 10:04   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1991年アメリカ映画 監督ジェームズ・フォーリー
ネタバレあり

WOWOWの掘り出し発掘名画の解説のお二人、入江悠(映画監督)と斎藤工(俳優)は概ね的外れなのことは述べていないが、二回りくらい年齢が違う僕らにして見ると、面白くない。僕らの常識が彼らにとっては意外なことであり、それを説明されても何の意味もないからである。残念ながら、僕らの世代には殆ど解説の体を成していないと言わざるを得ない。
 本作の場合世代間というより「原作は戯曲なんですか!?」という吃驚した様な反応に僕が吃驚した。本作の限られた舞台設定と、溢れんばかりの台詞の応酬を見て聞いて、戯曲の原作があることを想像しない方が難しいのではありますまいか。

ところで、見た気になっていた本作も「冬の嵐」同様どうも未鑑賞である。会社員として残業が100時間を越えるような一番多忙な頃ではあったし、東京の大学を出た後は住居も会社も近いとは言え東京にはなかったのでこの種の映画は物理的に観ることができなくなっていたのだ。その後見る機会はあったはずながら、余りに非特徴的な邦題により見たつもりで見逃していたに違いない。今回も放映直前に気になって録画したくらいだ。

自分のことはさておいて、本作はデーヴィッド・マメットが自らの戯曲を映画用に脚色し、ジェームズ・フォーリーが映画化した、セールスマンたちの一日足らずの行動を描く小群像劇である。

ニューヨークの或る不動産会社支店の四人の営業マン、ベテランでかつては業績も良かったジャック・レモン、現在のNo.1アル・パチーノ、腹に一物持つエド・ハリス、弱気そうなアラン・アーキンが、本社から発奮させに送りこまれてきたらしい若手幹部アレック・ボールドウィンにどやされて、No.1になればキャディラックをプレゼントするが、3位以下ならクビと無情な宣告を下される。
 レモンは病気の娘の入院代も払えないほど食い詰めており、営業マンの苦労など知らないこれまた若い支店長ケヴィン・スペイシーに泣きつくが、良い物件を紹介して貰えない。雨の中を走り回っても無駄に終った筈なのに翌朝売買成立と明るい顔をしてやって来る一方、社内では物件を含めた盗難事件で大騒ぎ。
 警察やパチーノが決めた物件のキャンセルをしに来た客を含めた7人が最後の一幕で入れ替わり立ち替わって騒動を繰り広げる。

今年になってイプセンやストリンドベリといった北欧の戯曲をよく読んでいるが、それらの戯曲に通ずる緊迫ある台詞の応酬が手に汗を握らせる。

戦後映画界にはリアリズムを求める気運がそれまでになく高まり、それが頂点に達した1950年代前半には戯曲の映画化でも極力舞台臭を除くことが第一命題となっていた感があるが、大半が中途半端になって成功した例はほんの僅かであった気がする。しかし、60年代以降は、当時の批評を読むと、作る方も見る方も舞台臭を前の十年ほど気にしなくなっていたような印象が与えられる。撮影がロケ中心になったことやワイド・スクリーン化が一定の効果を発揮したのかもしれない。

かくして、寧ろ舞台臭を逆手に取って緊迫したやりとりに面白さを見せる作品がチラホラ見られ、批評家もそれを好意的に受け止めたのではないかなどと僕は勝手に考えているわけだが、本作など正に舞台劇そのままの構成で、雨を小道具に映画的な連続性を出しつつ、戯曲原作ならではの応酬される台詞の奔流が緊張感を生み出し、頗る良い塩梅に作られている。
 しかるに、僕は、映画的な旨味を味わう前に非常なる恐怖を覚えたことを打ち明けねばならない。セールスマンが持つ強迫観念に影響されたのか、名状しがたい息苦しさに悶絶したのである。

この怖さはどこから来るのか? 考えると、寝られなくなっちゃう(笑)。

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摩天楼を夢みて
朝から生意気、言っちゃいます。 本作は「真の映画ファン」なら きっと観ているはずに違いない。 もし観ていないのなら、これから 何をさておいてもレンタル屋さんに 走って下さ ... ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2013/04/07 11:00

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
むかしの映画には、けっこう舞台を映画化したものが多いですけどね〜
これなんか、原作を知らなくても観れば、舞台だな?とわかると思うのですが。。。
しかし、原作がピューリッツアー賞を受賞した『グレンギャリー・グレンロス』であることぐらい監督や俳優であるならば知っていてほしいであります。

現実の怖さの方が、お化けや幽霊などよりこわいでありますな〜
ねこのひげ
2013/04/08 02:43
ねこのひげさん、こんにちは。

舞台の映画化は大概解りますね。
場所が限定的であること、台詞が多いこと、等々。

あの二人、何となく憎めないのでありますけどね。やはり若いな(笑)。
何年か前、映画を評するのに鑑賞本数は重要ではないと皮肉を言われたことがありますが、本数をこなすうちに解って来ることもあるわけで、例えば、デ・パルマの作品をほぼ全数観ていたならば先日のようなコメントも出て来ないはずですよね。

そう言えば僕も一応営業マンだったんですよ(爆)。
しかも、人間関係がこじれて辞めた過去がありますから、自分を鏡で観ているような怖さもあったんでしょうねえTT
オカピー
2013/04/08 17:44

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