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zoom RSS 映画評「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」

<<   作成日時 : 2013/04/30 10:20   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・若松孝二
ネタバレあり

三島由紀夫が24歳の時に発表した「仮面の告白」(1949年)は高校生の僕には衝撃的な面白さに満ちた傑作と思えた。その他「金閣寺」「永すぎた春」「近代能楽集」などを読んだが、50年代後半以降の作品は全く読んでいないので彼の作家像は殆ど掴めていないし、まして、彼が1970年11月25日あのような壮絶な最期を遂げるに至る精神的背景など知る由もない。少なくとも、40年前の記憶なので甚だ心許ないものの、「仮面の告白」から受けた三島の印象は彼が最終的に命を捧げた天皇制に立脚する国家観とは全く繋がらないのである。

さて、本作は昨年十月に亡くなった若松孝二監督が前々作「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」と好対照を成しながら四十余年前の時代性という見地からは同じ匂いを感じさせる三島事件を扱った実録映画である。

「憂国」など二・二六事件を扱った三部作を書き終えた三島(井浦新)は、自衛隊に体験入隊して実態として軍隊との印象を持つものの、憲法上は軍隊たりえないものに大いなる不満を覚え、民族派学生組織“日本学生同盟”の主たるメンバーを中心として民兵組織“楯の会”を起す。しかし、設立に多大な働きを見せた初代学生長の持丸博(渋川清彦)が脱退、彼の弟分の森田必勝(満島真之介)が後を継いだ為流れがより強硬なものに向かって行く。
 持丸以上に三島に心酔していた彼は自衛隊幹部の協力を得られない為に起案された三島の自衛隊クーデター決起案に賛同、他の三人の学生と共に自衛隊市ヶ谷駐屯地に向かう。三島が「自衛隊は憲法上軍隊ではないんだよ。それで良いのか」と檄を飛ばすも自衛隊隊員の芳しからぬ反応に自刃、森田も後を追う。三人が死ななかったのは三島の命令である。

北朝鮮が不穏な、しかし、インチキ千万な行動を取っている為に改憲論者が勢い付いている。中国や韓国もそれに一生懸命協力している。日本の右傾化を憂いながらそれを促しているのは自分たちであるという矛盾に全く気付いていない(ふりをしている)。しかし、ノンポリを自認する僕はこれまでも憲法をその情勢や必要に応じて適宜解釈して済ませてこられたことを考えれば、特段変える必要は感じない。

といった次第で、僕は三島の日本国観は殆ど理解できない。ただ、彼があくまで日本的美学に拘って日本国を再構築しようと考えていたことだけは何となく理解できる。西洋の武器を使ってクーデターを起こすなどもっての外、最期もあの方法以外にはありえなかったわけである。

持丸の脱退が楯の会と三島の運命を変えた可能性は映画からは理解しにくいが、おぼろげにこういう人物がいてこういう事件があったということを観客特に1970年のことを全く知らない人々に知らしめるだけでも作られた価値があるのではないかと思う。若松監督としては「あさま山荘」で出来るだけ正確に事件の裏側と実像を描こうとしたのとはスタンスが些か違う印象があるのである。

思想は恐らく円である。右翼と左翼では一見考え方が逆であるが、どんどん進むと窮極的には同じところ(例えばテロや全体主義)に行きつく。それは思想が直線ではなく円であるからだろう。本作を見る限り、三島が一連の暴動なかんずくテロを起した極左連中を羨ましく思い、鼓舞された部分が多いように感じられる。若い時連合赤軍の連中と交渉のあったどちらかと言えば左翼的な若松監督の解釈が加えられているのかもしれないが。

文学に専念していればノーベル賞を取っていたかもしれないなあ。

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11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち
公式サイト。若松孝二監督、井浦新(ARATA)、満島真之介、タモト清嵐、岩間天嗣、永岡佑、鈴之助、渋川清彦、大西信満、地曵豪、中沢青六、韓英恵、小倉一郎、篠原勝之、寺島しの ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/04/30 14:08

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
創作活動というのは、なかなか大変なようで・・・・酒乱になったり政治家になったり、自殺してみたり・・・・・波乱万丈にならざるを得ないようで・・・・
三島由紀夫の作品は、海外で受けが良いようで映画化されたりしてますから、文学に専念していたら、ノーベル賞は間違いなかったでしょうね。
ねこのひげ
2013/05/01 01:49
ねこのひげさん、こんにちは。

川端康成もノーベル賞受賞後に不審な死に方をしていますしねえ。
三島は自分の賞受賞が沙汰される中、川端が受賞できるように推薦文をものしているようです。
あの時代、純文学作家は書くだけで良いのか、活動をすべきなのか、という問題が命題でもあったのでしょう、きっと。

本人は全く関心がなかったようですが、僕の読んだ限られた作品から判断しても、その価値は十分あったと思います。
オカピー
2013/05/01 19:52
若松孝二に荒っぽいと言っても無意味ですが、相当に乱暴な映画。
特に、井浦新と寺島しのぶの背が非常に高いのは納得いかない。
三島由紀夫がちびだったのは有名で、それが彼のコンプレックスのもとでもあるのに。

彼の弟の平岡ポルトガル大使とリスボンでお会いしたことがありますが、彼も非常に背の低い人でした。
さすらい日乗
URL
2013/05/07 08:04
さすらい日乗さん、こんにちは。

三島由紀夫は、身長以上に痩身や虚弱体質がコンプレックスだったように記憶しておりますが?
それ故に戦争に行けなかったことは、後の行動を考えると、忸怩たるものがあったでしょう。僕のような事なかれ主義の臆病者には、その内心は想像を絶します。

いずれにしても、井浦新君は背が高過ぎましたが。
オカピー
2013/05/07 16:25

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