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zoom RSS 映画評「ネットワーク」

<<   作成日時 : 2013/04/02 11:14   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1976年アメリカ映画 監督シドニー・ルメット
ネタバレあり

シドニー・ルメットは2011年に亡くなる直前まで割合元気に映画を作っていたが、本作を作った頃のパワーは格別なものがあった気がする。

UBSという架空のTVキー局のベテラン・キャスター(当時はアンカーマンと言っていたと思う)、ピーター・フィンチが視聴率低迷を理由にほされると知って絶望、降板する予定の日に自殺をすると予告したものだからTV局は大騒ぎ。翌週彼は撤回しつつ、社会の抱える諸問題を背景にぶつくさ文句を言うと鬱屈している大衆による反響が大きく、結局“予言者”として番組を継続することになる。
 彼の友人である報道部長ウィリアム・ホールデンが彼の扱いは問題であると批判すると、別会社から出世目当てでやってきた重役ロバート・デュヴォールは彼を首にする。
 番組編成部長のフェイ・ダナウェイはフィンチに加えて、極左グループの実写映像を交えたシリーズ・ドキュメンタリー番組も導入するとUBSの視聴率は鰻のぼり。しかし、フィンチが感情的な本音ではなく哲学的真理を語り始めると視聴率は急降下、しかもアラブ資本が自社最大株主を買い取ることを告げる。これに動揺したデュヴォールとフェイは極左テロリストに番組中にフィンチを暗殺させる。

最後にキャスターが死ぬからと言って本作を、悲劇で終わる社会派映画と理解するのは間違いである。”寓話”それも幾分諧謔的な寓話と理解すべきであって、現実的なドラマと勘違いして観ると、allcinema投稿者二名様のようにとんでもない低評価になる。作者が現実にこんなことが起こると思って作っていない以上、本作の展開の非現実性を取り上げて評価するのは意味を成さないのである。

映画ではフィンチの死は物質的なものだが、現実世界では局のトップ或いは資本家による社会的抹殺ということになる。シドニー・ルメットも脚本を書いたバディ・チャイエフスキーも元来TVから映画界に進出した人だから、彼らの立場は真摯にTV局の在り方を考えるホールデンの位置にある。
 フェイはホールデンと懇ろになるが、片時も視聴率のことを忘れない。展開上一見意味の薄い二人の浮気関係とベッドシーンを加えたのは視聴率に頭を占領されてしまった人間(とTV局)を皮肉たっぷりに浮き彫りにする為に他ならない。

本作が言わんとしたことは現在でも通用する部分と、全く変わってしまった部分とが並存している。TV局が今でも視聴率獲得にあくせくしているのは同じでも、大衆を愚民化する道具は現在ではTV以上にインターネットである。“ネット”という言葉が共通するのは偶然はない。所謂“炎上”といった現象はその典型であろう。

その他、経済のグローバル化は本作が指摘若しくは予言した通りであるが、アメリカにとってその脅威の中心にあるのは、9・11を経て文化的対立関係になってしまったアラブではなく、勿論中国である。反面、本作は、将棋のコマが変っただけで人間のやることはそう簡単に変わらないということを透かして見せている。そこに本作が今でも面白く観られる所以がある。

俳優陣では内容故にややオーヴァーアクトが目立つが、当時まだ58歳だったホールデンがひどく老けこんでいるのに驚かされる。最低でも70代に見える。

三十数年ぶりの再鑑賞でございました。

量より質というけれど、ブログやHPへのアクセスが少ないと元気がなくなるのも事実であります。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
現在の状況を予言するような映画で・・・・・
三大ネットワークも、あれだけの権勢を誇っていたロスアンゼルスタイムも青息吐息だそうで・・・
かつては、大リーグのオーナー新聞でもあったのですが・・・・
日本の新聞社やテレビ局も似たり寄ったりで、インタネットに食われているようです。
即日性も大事ですが、じっくりと実態を調べた落ち着いた番組や記事も必要だと思いますね。
インターネットもスマホに食われている状況ですがね。
さて、次はなにが情報発信基地となるんですかね〜(^_-)
ねこのひげ
2013/04/03 02:42
シドニー・ルメットの秀作として記憶にはありましたが、未見。
放送業界のシリアスな内幕物というのも分かっていましたが、殺しまで出てくるとは思いませなんだ。おもろそう。
視聴率やらスポンサー絡みの思惑やら、昨今の日本のTV番組には観るべきものが限られてきましたね。新聞も信用できないし、まだ、インターネットの方が利用価値のある情報があるように思います。玉石混淆は何処も同じですが。
十瑠
2013/04/03 16:52
ねこのひげさん、こんにちは。

この当時は新聞や他のメディアとの住み分けがはっきりしていましたし、他局との争いが中心だったですが、メディアの多様化と趣味の多様化が進み、どこもどのメディアも昔のような栄華を享受するのが難しくなっているんですね。

>スマホ
スマホなるものは利用したことがないのでよく解らないのですが、ある程度は想像がつきますです。
仰るように、次に何が来るか。昔と違って盛者必衰の必衰が早めにやってくる昨今ですからね。
オカピー
2013/04/03 19:57
私は公開時に劇場で観ているんですよ。それも母親といっしょに。
アカデミー賞で、なにか賞をもらっているのでしたね。
若いときから洋画が好きだった母親は観終わった後、やはりウィリアム・ホールデンがすごく老けていたと感想を言っていましたね。
フェイ・ダナウエイは当時非常に売れていましたね。美女とはいえませんが、背伸びして映画雑誌を読んでいる状態だった私は、こういう人が演技派なのかなあと思いこんだりしてました。
大人になってから見返すと、芝居がうまいのかどうかもビミョーなかんじで、あのころはハリウッドは、美男美女が流行遅れだった時代だったんだなあと思うだけです。
nessko
URL
2013/04/03 19:59
十瑠さん、こんにちは。

>シリアス
外見上はシリアスな喜劇と言っても良いのではないでしょうか。
全てにおいてオーヴァーですが、面白いと思いますよ。
未鑑賞ということなので、余り細かくは触れません・・・本文を読めば大体解ってしまうでしょうが(苦笑)。

>日本のTV番組
本当に観たいものがありまへんなあ。
ニュース番組と一部のクイズ番組くらいしか見ませんね。
衛星放送も映画くらいしか見ないし。
オカピー
2013/04/03 20:07
nesskoさん、こんにちは。

アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞、主演・助演男女優賞と、主たる9部門の候補になり、脚本賞と主演男女優賞と助演女優賞の4部門を制した、アメリカでは1976年度一番の話題作でした。
Imdbでもベスト250に入っていますし、未だに評価が高い作品ですね。

>ホールデン
数年前の「ワイルド・バンチ」や戦争映画では元気そうだったのに、ビックリしました。調べますと、この頃何か病気を患っていたようです。

>フェイ・ダナウェイ
彼女のようなタイプが受けるのがニューシネマの傾向でしたでしょう。
この映画は潮流としてのニューシネマが終った後の作品ですが、確かに彼女は人気がありましたね。
僕もタイプではないですが、「俺たちに明日はない」の彼女は何だか良いです^^
1980年代後半くらいから化粧のせいか急に容貌が変わったと思ったのは、僕だけでしょうか?
オカピー
2013/04/03 20:20

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