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zoom RSS 映画評「ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女」

<<   作成日時 : 2013/04/01 09:42   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2012年イギリス=南アフリカ=アメリカ合作映画 監督ジュリアン・ジャロルド
ネタバレあり

邦題のサブタイトルは寧ろ逆で、アルフレッド・ヒッチコックが「」(1963年)で主演に抜擢した無名女優ティッピ・ヘドレンに囚われてしまうお話である。我々の関心もティッピよりヒッチの方に湧く。

イングリッド・バーグマン、グレース・ケリーなどとにかく金髪クール・ビューティーが大好きなヒッチ老(トビー・ジョーンズ)が新作「鳥」の主演に見出したのがティッピ(シエナ・ミラー)で、女性の立場から言えばセクハラ、パワハラ攻撃のオンパレードだが、「マリリン 七日間の恋」のマリリン・モンローとは違い、新人女優の身で露骨に逆らうことはできない。怪我も負いながら「鳥」の現場に戻ってきた彼女は次の「マーニー」(ヒッチ御大はグレース・ケリーを本作主演に起用すべく映画界に復帰させようとして頓挫した)にも主演するが、四〇年近く付き添ってきた愛妻アルマ・レヴィル(イメルダ・ストーントン)と離婚してまで我が物にしようと迫るヒッチコックと訣別すべく、新作の契約をキャンセルして去っていく。

ヒッチが残酷にも予言したように(他の個人的事情もあるのだろうが)ティッピはこの後大物女優になれずに終り、当時幼児だった娘のメラニー・グリフィスのほうが一時的とは言え余程人気者になった。

それはともかく、警察に代表される怖いものが大嫌いなくせに怖い映画を多く作り、妹みたいなものと称する妻しか女性を知らないのに精神的に美女を漁色する御大の様々に屈折した人間ぶりが露悪的に描写される。こうしたことは既に本人が公的に語っているのでヒッチ研究家にとって目新しいものではないが、ティッピに対しあそこまで執心していたとは知らなかった。

僕はグレースを失ったことがヒッチのフィルモグラフィーに相当影響を与えていると思っているが、本作原案となったティッピの証言を信ずれば彼女の喪失も同等と言えるようだ。彼女が契約を継続していれば「引き裂かれたカーテン」(1966年)や「トパーズ」(1969年)といった精彩を欠く作品を作らずに済んだかもしれない。精彩を欠くと言っても僕には十分面白かったわけだが、「マーニー」が最後の傑作とは言い過ぎで、僕の映画観では「フレンジー」(1971年)は勿論遺作「ファミリー・プロット」(1976年)に及ばない。

英=南ア=米合作のTV映画で、「サイコ」(1960年)のカメラワークをもじったり、「鳥」を意識して俯瞰撮影を多用するなど工夫が見られ、TV映画としては悪くない。

ヒッチ御大を演じたトビー・ジョーンズは本人より大分ミニサイズで容貌も似ていないが、話し方は工夫が見られる。シエナ・ミラーはティッピより同時代に活躍したイヴェット・ミミュー(ミメオ)に似ている。一番似ているのは写真しか見たことがないがイメルダ・ストーントンのアルマでござろう。若い時アシスタントをしていた彼女は眼鏡もかけていないし、それなりに可愛かったのだけどね。

今週末から公開予定のアンソニー・ホプキンズ主演「ヒッチコック」はもっと面白そうだけど、まだ体調的に映画館は無理かな。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
「マーニー」はテレビで観てる筈なんだけど、どんな話だったのかも覚えていません。
「フレンジー」は何回見ても楽しめます。
「鳥」のティッピ・ヘドレンは本当にきれいでした。「鳥」も何度見てもいい。
ヒッチコックは金髪で顔の輪郭が丸くない美人が好みだったみたいですね。
nessko
URL
2013/04/01 16:03
nesskoさん、こんにちは。

「マーニー」は今流行りのサイコ・スリラーと縁があるものの、違い種類のニューロティック・スリラーですね。
「フレンジー」はサイコ・スリラーの傑作ですね。名場面が多いですが、開巻直後のカメラワークは圧巻。殺人場面でカメラが下がっていくところも凄かった。
「鳥」は言うまでもなく大傑作ですが、ティッピは素敵でしたねえ。

ヒッチ御大は、外見はクールで内面が燃えているといった女性ですから、丸顔ではクールさが欠けますものね。
オカピー
2013/04/01 22:24
ティッピ・ヘドレンは、現在82歳で、映画で使われた動物たちの保護園を作って保護活動をしているのを、以前テレビで観たことがあります。
野生のエルザに使われたライオンを引き取ったのが縁だったようですが、何千坪の土地に自由に暮らす動物たちの姿はよかったですね。

親子ほど年の離れたヒチコックから恋愛感情を示されて、嫌悪感を感じて逃げたと語っていましたね。
ねこのひげ
2013/04/02 01:01
みなさん、はじめまして。
私は洋画の大好きな五十路の主婦です。
WOWOWはに開局とほぼ同時期に加入し続け、
映画は専ら同局での観賞です。

本作はあいにく見逃してしまい、
オンデマンド配信で先日PCで観みました。

T・ジョーンズさんのヒッチコックへの工夫
歩き方とか口調に感じられました。
「鳥」でのヘドレン、ほんとに綺麗でしたね。

拙いブログを始めたばかりの初心者の私ですが、
先日ヒッチコック氏とヘドレンさんについて
ちょっと書かせていただいたので
こちらに立ち寄らせていただきました。

今後もよろしくお願いいたします。
小枝
2013/04/02 19:19
ねこのひげさん、こんにちは。

ティッピがそういう活動をしているのは「ロアーズ」という1980年代のドキュメンタリーで紹介されていましたが、同じものかなあ?
僕はこれは観て、老けたなあと思いつつ、当時娘のメラニーが活躍していたので、娘に似てきた(というのも変ですが)なあと感じたものです。

ヒッチコックは自分でも容姿にコンプレックスを持っていた(と本作からは理解できる)ので、それを覚悟しながら迫ったのでしょうけどね。
オカピー
2013/04/02 22:16
小枝さん、初めまして!

わぁ、嬉しいなあ。
実は僕もWOWOW開局と同時に契約しましたし、映画鑑賞は殆ど同局を利用しています。
世代も50代です!

>T・ジョーンズさん
僕もそう思いました。特に口調に感じられましたね。

こちらこそ宜しくお願い致します。
オカピー
2013/04/02 22:21

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