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zoom RSS 映画評「サラの鍵」

<<   作成日時 : 2013/03/19 09:56   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2010年フランス映画 監督ジル=パケ・ブランネール
ネタバレあり

ドラマの発端は、「黄色い星の子供たち」と全く同じ、即ち後に“ヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件”と呼ばれるパリにおける一斉ユダヤ人狩りの様子である。

一人の少女サラ(メルジューニ・マヤンス)が両親と共に連行されるが、弟を納戸に隠し鍵をかけたまま家を出たことが気になり、仮の収容所から他の少女一人と一緒に脱走に成功、長い時間を経て確認した結果は言うまでもない。彼女は良きフランス人夫婦の養女として成長するが、ある時思い立ったように渡米してしまう。

というお話が、この事件を調べている米国出身の女性ジャーナリスト、クリスティン・スコット・トーマスが偶然にも夫の祖父母が住んでいたアパートがユダヤ人一家の住居であったと知り、収容所死亡者の記録に残されていない一家の娘サラの消息を追ううちに明らかになって行く、という形式で展開するが、ナチスとフランス官憲による旧悪自体は前述作品に任せることにし、本作は別のテーマに収斂していく。
 即ち、長い不妊の後久しぶりに出来た二番目の子供を巡る考えにおける彼女と夫の相違をサラの苦難の人生と並行して描写するうちに、生命の尊厳を浮かび上がらせていくのである。

その為に作者(原作タチアナ・ド・ロネ)はサラに更なる(洒落になってしまった)試練を与え、アメリカで結婚した後弟の死が忘れられずに長男が9歳の時に車でトラックと正面衝突する自殺を選ぶというエピソードを用意した。体制が強いた事件はPTSDという形で折角長らえた貴重な命をも奪うのである。

他方、生きたくても生きられなかったサラの人生を追ううちに子供を生むことを決意したクリスティンは長女を置いて帰国し、人の人生に土足で踏み込んで来たとイタリアで非難されたサラの長男であるエイダン・クインと2年後に再会、次女の名前をサラと名付けたことを告げる。かくして、並行描写されてきた二者の人生行路がここで完全に一体化する。

非常に上手いが、作為的に過ぎると言えば、そう言える幕切れではある。しかし、サラという少女の命とその人生行路は全く縁もゆかりもないアメリカ人女性により蘇って引き継がれ、彼女をして命に関係する重要な選択を行なわしめ、人は生命をあだや疎かにできないと静かに語り終える幕切れは、多くの観客の胸を揺さぶらないではおかないだろう。中盤の人間関係等に見直さないと些か解りにくい部分があるなど、多少の瑕疵が見え隠れするが、僕も人の子、やはり最後の一幕には胸を打たれました。

クリスティン・スコット・トーマスは相変わらず上手い。

ヒロインが生んだサラには時には他人を傷つけるジャーナリズムの良い部分が象徴されている。

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サラの鍵
公式サイト。タチアナ・ド・ロネ原作、原題:ELLE S'APPELAIT SARAH(彼女の名はサラ)、英題:Sarah’s Key。ジル・パケ=ブランネール監督。クリスティン・スコット・トーマス、メリュシーヌ ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/03/19 10:36
サラの鍵/クリスティン・スコット・トーマス
1942年にパリで起きたユダヤ人迫害事件「ヴェル・ディヴ事件」を題材にある家族にまつわる悲劇を描いた社会派のヒューマン・ドラマです。タチアナ・ド・ロネのベストセラー小説を原 ... ...続きを見る
カノンな日々
2013/03/19 10:52
現在、過去、真実 〜『サラの鍵』
 ELLE S'APPELAIT SARAH ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2013/03/19 18:07
『サラの鍵』
(原題:Elle s&#039;applelait Sarah) ...続きを見る
ラムの大通り
2013/03/19 23:19
「サラの鍵」
心に響く物語。過去と今が鮮やかにリンクする。 ...続きを見る
或る日の出来事
2013/03/20 01:58
サラの鍵(2010)◎ELLE S&#039;APPELAIT SARAH
 ただ、伝えたい。決してあなたを忘れなはしないと。 評価:+8点=88点 ジュリアとともに、私もサラの足跡を旅した気分。ジャーナリストでもないし、サラとは無縁だけど、こうして作品と出会ったことで何かサラという少女が身近に感じられた。 ...続きを見る
銅版画制作の日々
2013/03/22 11:08

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ジャーナリズムというかマスメデアというか、一般大衆の迎合さには驚くべきものがありますね。
今まで賛成していたくせに、コロッと態度を変えて、いままで賛成していたことなど一度もないという態度で反対にまわる・・・・・
マイケル・ジャクソンなど、そのいい例で・・・散々幼児性愛者などと非難し捲っていたくせに、死んだと思ったら、まるで神のごとくに祭り上げる。

あきれ果てたものです。

しかし、よい映画でありますが、きつい映画でもあります。
ねこのひげ
2013/03/20 06:33
ねこのひげさん、こんにちは。

そもそも芸能人やセレブ(有名人)など職業以外の部分などどうでも良いのですが、それを追い求める大衆というか愚民も無視できませんね。
僕は流行やゴシップなど全く興味がないから、戦前の良いと思ったブルースやカントリーのCDを買ったり、数百年前の古典を必死に読んでいるわけです。
現在は「西遊記」完全版(全十冊)を読んでおります。文庫本で4000ページほどですが、十日もあれば読めます。他の書籍と併せてゆっくり読んでいます。
僕のような人種は10人に1人くらいいるかしら?

ところで、安倍さんは支持率が高いですが、とにかくアメリカの産業が著しく潤うTPPと国債・日本銀行の扱い次第では日本は数年後に沈没。
食品の物価は一時的に下がるかもしれませんが、薬代が上がり、最悪の場合国民皆保険制度が崩れ、平均寿命は確実に下がっていきます。
杞憂に終わると良いのですが、そうなった時は安倍さんは勿論自民党と民主党の大半の議員は喩えではなく、本当に腹を切って死んでもらわないといけませんな。
オカピー
2013/03/20 20:28
はじめまして・・・ぼくも、オカピー様と同じく、tppには大反対です。

小泉の郵政改悪に端を発した日本は、戦前と同じように、手足をがんじがらめに軛をされ、米国の要求通り、なす術もなく、もれなくBSE不安付きの牛肉や、農薬たっぷりのカリフォーニア米、ファイザー以下手ぐすね引いて待っている米製薬業界の洗礼を浴び、オカピーさまも懸念される伝家の宝刀の国民皆保険すら差し出そうとしてるかにみえます!

覇権主義に鼻息鳴らす中国なぞ、米国が本腰入れた時の狡猾さと、(映画「アルゴ」のイラン人質ハリウッド脱出作戦に象徴される)無理くりと紙一重の大胆さに比べれば愚連隊の狼藉にも似た可愛いものに思えます。

私も群馬に住んでおりますが、美しいこの国の風土と秩序だったこの国の民が、たかだか200年ちょっとの歴史しか持たぬ某国に翻弄され、カルタゴのように歴史の窓際に追いやられるのもむべなるかな、とさえ思います。
トリックスターヤスビッチ
2013/03/26 03:33
トリックスターヤスビッチさん、初めまして。

群馬県在住とは嬉しいです。

TPPは本当に怖いと思いますね。
推進派の識者は「交渉してダメだったら打ち切ったら良いんですよ」と楽観的なことを仰っていましたが、後から参加表明した国はそれができないことが解りましたよね。しかも、それは民主党政権時代から解っていたというのだから、お話になりません。

仰るように、確かにアメリカは中国よりずっと怖いと思います。
オカピー
2013/03/26 21:12

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