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zoom RSS 映画評「自転車泥棒」

<<   作成日時 : 2013/03/15 09:59   >>

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☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1948年イタリア映画 監督ヴィットリオ・デ・シーカ
ネタバレあり

35年ほど前初めて映画評を書いたのが本作である。それより10年近く前に一度観ていてやり場のない義憤にかられた時のことを思い出しつつほぼそのままに書いた。感じたことを脈絡なく綴った極めて拙く、とても他人(ひと)様に読ませられるレベルのものではない。
 そもそも作文力を年齢相応にまで上達させる為に書き始めたのだから僕自身はそれで良かったのだが、それなりに映画評らしくなってくるまでにこの後数年かかる。と言っても、今でもこの程度のものしか書けず、文才のないことを嘆くしかない。

敗戦による不況で二年間働いていないランベルト・マジョラーニが職安の紹介によりポスター貼りの仕事にありつくが、必要な自転車が質(しち)に入っているので困っていると、糟糠の妻リアネッラ・カレルがシーツを質に入れて取り替えてくれる。ところが、仕事を始めて早々に肝心の自転車を盗まれてしまい、翌朝から仲間や息子エンツォ・スタヨーラと共に市場を探しまわるものの、当然出て来ない。
 犯人は見つけたのに証拠となる自転車がない為界隈の人々から罵声を浴びて去るしかなく、万策尽きた彼は遂に玄関先に置かれていた自転車を盗むものの、すぐに歩行者たちに取り押さえられてしまう。しかるに、持ち主は子供の悲しそうな表情を見て許してくれる。親子は夕刻暗くなっていく中を手を取り合って去っていく。

初めて観た中学生の頃は盗んだ若者に怒り、まともな対応をしてくれない警察に義憤を覚え、持ち主の心を動かした親子の愛情に胸を打たれた。
 その中で、今観ると若者に対してはさほど怒りを覚えない。何故なら不況で彼もまたお金が必要であり、主人公だけでなく周囲の人々の大半がそういう状態であったことがよく解るからだ。ただ、出来ごころで単独で犯行に及んだ主人公と、仲間と徒党を組んで計画的に犯行を行なった若者とでは悪徳の質に差があり、結果も自ずと失敗と成功とに分かれる。巧妙に立ち回る者が上手い汁を吸うのが社会と知りつつ、やはり義憤を禁じえない。あの町の連中の一部がグルだったのだろう。
 その他、社会風俗的に、庶民が神様以上にインチキ占い師の方を信じているような様子の伺える場面が大変興味深い。

映画史的には、本作はネオ・レアリズモ(僕が高校の時に憶えたのは英伊折衷のネオ・リアリズムという言葉だった)を代表する一編であると紹介すれば事足りる。ネオ・レアリズモというのは素人を起用し、ロケで撮影を行なう一連の潮流を指して映画界では使われた言葉(映画界独自の用語にあらず)であるが、自ずと限界がある中で最もうまく処理したのが僕は本作ではないかと思う。

映画マニアにはこの潮流においてロベルト・ロッセリーニを高く評価する人が多いが、本作の監督ヴィットリオ・デ・シーカに比べて些か不器用な監督であると僕は思っている。恐らく彼の最高傑作である「戦火のかなた」は現在の揺れるドキュメンタリー風カメラを使用した一連の作品に似て、いやそれ以上に戦闘や銃後の人々の生活を緊張感たっぷりに描いて確かに相当立派な作品であるが、ドラマ性を求めると少々不満が生じてしまう。
 ロッセリーニに比べてデ・シーカは素材選びが上手く、後年喜劇映画や恋愛映画に大衆映画監督として実に優れた手腕を発揮したことを考えても、器用さという点で相当差があったと言わざるを得ない。

本作の出演者たちも全員実質的に素人と思って間違いないだろうが、イタリア語につき台詞回しはよく解らないものの、表現には文句の付けようがない。デ・シーカの演技指導のたまもので、本作をデビュー作として夫々映画俳優としてそれなりに活躍したようである。

中国映画「北京の自転車」は着想的にやはり似ているなあ。

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自転車泥棒
(1948/ヴィットリオ・デ・シーカ製作・監督/ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタヨーラ、リアネーラ・カレル、ジーノ・サルタマレンダ/88分) ...続きを見る
テアトル十瑠
2014/01/18 16:26

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
至高の名作でありますな〜
文句のつけようがないのが、文句を言いたいところで、小さな傷の一つぐらいあったほうが安心しますが・・・・
ねこのひげ
2013/03/16 02:14
ねこのひげさん、こんにちは。

ネオ・レアリズモの作品群はどこか味気ないところがある作品が多いのですが、これはシンプルにしてドラマの緊密度が高く、言うことなしです。
ロッセリーニは「戦火のかなた」「無防備都市」をもう一度みたいくらい。
オカピー
2013/03/16 22:22
ロッセリーニは「無防備都市」くらいしか見た記憶がなくて、でもあれは面白かったという印象が残っています。1コインDVDがあるので、そのうち再見したいですね。

さて、「自転車泥棒」。
文句を言うとしたら、中盤の盗人探しのシークエンスで、件の若者と知り合いらしい老人にしつこく付きまとうシーンとかが単調だったとか、もう少しドラマチックなプロットに出来なかったか、なんて所ですかねぇ。
今の映画ファンにお薦めするにはちょっと・・・と満点にはしませんでした。
十瑠
2014/01/18 16:38
十瑠さん、こんにちは。

>ロッセリーニ
オムニバス映画「戦火のかなた」もご覧になる価値があると思います。「無防備都市」の姉妹関係の作品です。
結婚したバーグマンを主演にした作品は一部シネフィルに評価が高いのですが、僕の趣味には全く合わず退屈。十瑠さんもご覧になる必要はないと思いますです。

「自転車泥棒」・・・そうねえ、最初に観た時のような興奮はなかったので、多少気になる点もなくはなかったですが、最初の印象を重視して満点にしました。
若い人には残念ながらストレートすぎるでしょうねえ。時系列通り語っているだけで「芸がない」と言われる勘違い時代ですから。
オカピー
2014/01/18 19:57

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