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zoom RSS 映画評「ロング・グッドバイ」

<<   作成日時 : 2013/02/09 10:13   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1973年アメリカ映画 監督ロバート・アルトマン
ネタバレあり

レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説「長いお別れ」の映画化。監督が「M★A★S★H」(1970年)という話題作で既に知名度はあったものの、後年群像劇でぐっと注目される監督になるロバート・オルトマンなのも興味を引くが、脚本が「リオ・ブラボー」などハワード・ホークス組のリー・ブラケットというのに驚いた。しかし、考えてみれば、彼はホークスの「三つ数えろ」(「大いなる眠り」の映画化)でチャンドラーとは既に縁があったのだ。個人的には三十数年ぶりの再鑑賞で、原作も未読ではあるし、新鮮な感覚で楽しむことができた。

チャンドラーが生み出した私立探偵フィリップ・マーロウを演ずるのがエリオット・グールドという変わり種で、ハンフリー・ボガートのイメージに拘らなければこの現代的人物造形はおとぼけでなかなか面白い。

彼の友人ジム・バウトンが妻を殺した疑いをかけられたまま失踪するが、本人が殺された為に逃亡を助けた容疑で拘置されていたマーロウは釈放されるや、近くに住んでいるニーナ・ヴァン・パラントから作家である夫スターリング・ヘイドンを探すよう頼まれる。この二つの事件は実は密接な関係があることが判って来る間に、バウトンに金を奪われたギャングのマーク・ライデルや、作家に貸しのあるという精神科医が絡んできてややこしくなる。

内面モノローグが常套手段となっている一昔前のハードボイルド映画と違って一々口に出す辺りからおとぼけムードいっぱいで、猫や犬の扱いもユーモラスで一向にサスペンスフルにならない。同じ時代に作られた「チャイナタウン」に似ているところもありながら、その辺に本格的ハードボイルド・タッチに拘ったロマン・ポランスキーと、事件を通して現代を活写しようとしたらしいオルトマンの作家性の違いが大いに現われている。

ヌードでヨガをしているヒッピー風美女たちを隣に配置したり、70年代前半の時代性を大いに反映させたブラケットの感覚も思いの外若々しい。ゲートのガードマンが映画好きで、バーバラ・スタンウィックやジェームズ・スチュワートの物真似をするお遊びシーンがあり、最後にウォルター・ブレナンを持ってきたのは楽屋落ち的で愉快。ブレナンは、ブラケットで思い出さずにはいられない傑作西部劇「リオ・ブラボー」のあの老人であります。

ジョン・ウィリアムズの作曲した一曲が本編中色々なバージョンで繰り返し使われているのも楽しい。エンディング・タイトルのBGMに"Hooray for Hollywood"という古い曲を使っているように、この映画は、新しい感覚の中に案外古いハリウッド映画を意識して作っている感じもあり、そのハイブリッド趣向がこういうお遊び映画らしく頗る興味深い。

ミステリー系としてはムードはともかく、相当ルーズな展開なので、本格ファンには受けまい。僕の発案ではないが、本作の最後はThe Long GooodbyeならぬThe Wrong Goodbye...上手い事を仰る御仁もいらっしゃるものだ。

無名時代のアーノルド・シュワルツェネッガーが台詞のない子分役で出演しております。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この映画は大好きです。主人公のちょっとだらしないたたずまいと、LAのドライでデカダンな雰囲気、そして音楽がとても効果的に使われていた。物語の世界を音楽がつないでいたような。私はこのエリオット・グールドのマーロウがいちばんお気に入りなんですよ。
ハンフリー・ボガートはマーロウにしてはしゃきしゃきし過ぎていて、どっちかというとサム・スペードのほうが似合っていたんじゃないかな。でもボガートのファンはマーロウはボガートじゃなきゃだめだ! と言う人が多いです。「さらば愛しき女よ」は映画としてはすばらしいですが、ロバート・ミッチャムはちょっと老けすぎていた気がした。それがいい、という評者も多かったですが。

この「ロング・グッドバイ」ですが、ヤクザのボディガードのムキムキマンがシュワルツネガーじゃなかったですかね? 身体見せるだけの役でしたが。「さらば愛しき女よ」にはスタローンが端役のギャングで出ていたので、ちょっとおもしろい偶然なのかな。
nessko
URL
2013/02/09 12:42
nesskoさん、こんにちは。

お詳しそうですね。
僕は「さらば愛しき人よ」が一番好きかなあ。ムード満点で完成度も高く、確かにミッチャムは年齢が行きすぎていましたが、お気に入りです。でも、スタローンの件は忘れておりました^^;

>サム・スペード
確かに「マルタの鷹」は良いです。

>ムキムキマン
そうです。
彼の上半身を見せるがために、全員が裸になるという、結果的に何の意味もない場面をこしらえたかの感さえありました。
オカピー
2013/02/09 21:04
観たときに、どこかで観たような?で、もう一度見直したら、シュワちゃんでビックリしましたけどね。
そちら方面の方用のサービスですかね?
シュワちゃんは、この当時、オーストラリアなまりがひどくてセリフを言わせてもらえなかったそうで、本人もよくわかっていて、セリフの少ない役ばかりを演じていたそうです。
出世作もセリフなしですしね。

いま読んでいるミステリー小説に、サムの街サンフランシスコだぞ・・・というセリフが出てきます。
あのサム・スペードです。
あのころの探偵は、キザでかっこよかったですね。
男の子は、一度はあこがれますね。
ねこのひげ
2013/02/10 07:04
ねこのひげさん、こんにちは。

>シュワちゃん
お話が中座してしまうので、全くなくても良いシーンでしたね。

>サム・スペード
僕の場合手抜きしてハードボイルド小説はぼちぼちとしか読んでいないので、やはりハードボイルドと言うと映画のハンフリー・ボガートのイメージが強いわけですが、やはりボギーは格好良いですなあ。

この映画のエリオット・グールド辺りから、日本の「探偵物語」などが亜流として生まれたと理解できないこともないですね。
オカピー
2013/02/10 21:57

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