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zoom RSS 映画評「汽車はふたたび故郷へ」

<<   作成日時 : 2013/02/08 11:18   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年フランス=グルジア=ロシア合作映画 監督オタール・イオセリアーニ
ネタバレあり

グルジア出身で現在はフランスで撮っているベテラン監督オタール・イオセリアーニについて、僕はジャック・タチからギャグを抜いたと思えば近いのではないかという印象を持っている。画面構図がよく計算されている一方で場面の扱いが慢々的でノンシャランな部分には、ジャン・ルノワールに共通する境地を感じたりもする。いずれの作家にも共通するのは、起承転結や描写のバランスといった一般的な映画技術の尺度だけで計ってはいけない映画作家であるということである。

イオセリアーニの青年時代(1970年代?)、グルジアがまだソ連構成国だった頃の経験が基になっているようで、グルジア本国より恐らくソ連の検閲がやかましく、監督は脚本に忠実に作り、専門の編集者に任せていれば検閲委員会なる組織は満足するのだが、反骨の映画青年ダト・ダニエルシュヴィリは逆らってばかり。実力者を利用してなるべく穏当な扱いを受けるようにもしているが、いずれにしても思うような映画は作れない。
 そんなわけで、フランスに製作の場を求めるものの、かの地でも若手の自由に作らせてくれるほど商業主義の製作者は甘くなく、やっと開かれた試写会では客が全員途中退場する始末。失望して結局帰国、川でのんびり釣りをしている最中に人魚が現れ、川の中へ彼を連れ込んでしまう。

最後のシークエンスは凡才の僕には何のことだかよく解らないが、自由に泳げる川の中は、自由に映画が撮れる理想的な桃源郷を指していようか?

実際のイオセリアーニは45歳になった1979年からフランスに定住していて自由に作っているように見えるが、そうなるまでにさらに時間が掛かったのだろうか? 途中で客がいなくなってしまうのは、自分の映画を理解しない観客への皮肉であるが、本作を見ても実際すんなり解らない。僕も皮肉の対象である。

喜劇的に作っているせいか、あるいはグルジアという国の個性なのか、社会主義国の検閲のイメージが当方の想像とは全然違う。監督は委員会にぺこぺこせずにひどく反抗的だし、検閲ももっと内容に口を挟むのかと思えば、彼らが気にするのは編集と作業時間ばかり。尤も、脚本が予め用意されている、若しくは、念入りにチェックされている、という前提であれば残りは編集になるのは当然至極。
 とにかく、かの地の映画製作については全く知る資料がないので、実際に即した情景なのか、敢えて戯画的にしたものなのか、判然としない。脚本に関する委員会の態度が解らず、かの国の検閲のあり方が正確に解らないのは、日本に住んでいる我々には勿体ない気がする。

前作「ここに幸あり」でも述べたように、彼の作風を認めつつも、このスタイルで2時間を越えるため余程のアート系ファンでないと集中して観続けるのは難しいだろう。

締めのコメントも思い付かないわい。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
最近は、ハリウッド映画でも長い映画はありますが、たいくつで長い映画というと、共産圏や社会主義の国というイメージがあります。
体制や指導者を批判してなさそうだと、あとはお構いなしというところがあったようですね。
たぶん、監視する連中が芸術的だと理解できてなかったのでしょう。
そこを利用して商業的より芸術的な作風の長い映画が社会主義国で増えたのでしょうね。

『戦争と平和』なんて、一気に上映すると6時間・・・それでも短くしてあって、じっさいには8時間以上あったとか・・・
ねこのひげは、『戦争と平和』でリュドミラー・サベリーオワに初恋したのでありました。
来日したとき、監督と結婚していて、初恋ははかなくも敗れたのでありましたけどね〜(^^ゞ
ねこのひげ
2013/02/09 06:14
ねこのひげさん、こんにちは。

検閲官などオブラートにくるんでしまえば、こっそり体制批判をしても解らない程度の芸術音痴が多かったと僕は思っています。
日本の軍国主義時代の検閲にしても結構穴があって、木下恵介の「陸軍」では母親が出征する息子を延々と追いかける“非愛国者”的場面がそのまま通っています。幹部がかんかんになったと伝えられていますが、最終的に通ってしまったようです。

>『戦争と平和』
あれは原作も相当長いですから8時間でもやむを得ないところですかね。
僕も映画史上一番長い作品として『戦争と平和』の8時間というのは聞いたことがあります。
実際にはシュトロハイムの『グリード』は監督編集時には9時間あったそうです。
尤も、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作も一本の映画と考えれば十時間近くありますけどね^^
オカピー
2013/02/09 20:51

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