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zoom RSS 映画評「俺の笛を聞け」

<<   作成日時 : 2013/02/26 10:20   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年ルーマニア=スウェーデン=ドイツ合作映画 監督フロリン・セルバン
ネタバレあり

この2010年度ベルリン映画祭銀熊賞受賞作は、スウェーデンとドイツとの合作ということになっているが、実質的にはルーマニア映画という理解で良いと思う。日本では昨年8月の三大映画祭週間で紹介されているだけで、正式公開に至っていない。

数年間少年院で暮している18歳のジョルジェ・ピステレアヌは模範生につき後(あと)二週間ほどで出所するというところで、自分たちを捨てた母親がイタリアから弟を連れ戻しに現れたことを当の弟から知らされ動揺する。病弱な父親を含め全てを捨ててイタリアに逃げ出した母親をひどく憎んでいる為で、弟を連れて行かせないようにしようと後三日で出所という段で思慕を寄せているソーシャル・ワーカーのアダ・コンデースクを人質に立てこもり、母親を呼び出して約束を取り付けた上で、車で出たカフェで彼女とコーヒーを飲んだ後進んで御用になる。

彼の心理描写に関して粗雑な部分があるが、長年内に閉じ込めていた強い反抗心が出所前の母による弟の連れ戻しというトリッガーにより解放されてしまう、そこに至る経緯はきちんと理解できるように展開している。

彼には後三日で娑婆に出られるから我慢するといった大人の理屈はない。恐らく10年近く前ローティーンの彼には母の出奔は理不尽極まりないものであったわけで、その幼い理解に基づく歪んだ母への憎悪がそのまま大きくなっている為、所長を含めた我々大人から見れば18歳にしては彼の精神構造は幼すぎるが、そこに閉塞感を打ち破ろうともがく主人公を描く青春映画の一面がある。

その一方で、彼の生まれたと計算される1992年は89年のチャウチェスク大統領夫妻処刑後に成立したルーマニア新体制が民主化改革を始めた直後に当たるわけで、その数年後一家に訪れた急速な社会変化によるネガティヴな影響を背後に揺曳させて何気なく社会派映画の一面を示す辺り初めて観るルーマニア人監督フロリン・セルバンには端倪すべからざる才能を感じる。ちょっと買いかぶり過ぎだろうか。

あの独裁者の最期は、ムッソリーニの無残な最期とオーヴァーラップしましたです。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
血の繋がりがある分だけ、裏切られたという思いと憎悪の根は深くなるのでしょうね。
日本だと、やっぱり親子という場面にしてお涙ちょうだいにしそうですが。

チャウセスク夫婦のあの表情は忘れられませんね。
国民を自分の子供だと思っていたのに、その子供からあれだけの憎悪を向けられることが理解できないという表情でした。
フィリッピンのフェルナンドとイメルダ・マルコス夫婦の戸惑いの表情も印象的で、なぜ憎まれているのか理解できないようでした。

独裁者というのははだかの王様になるようです。

そういえば、いまリンゴ・スターが来日してコンサートをやってますよ。
ねこのひげ
2013/02/27 05:05
ねこのひげさん、こんにちは。

近親憎悪とか、そういう心理が働くんでしょうね。
日本の情緒的な描き方も巧く演出すれば効果的ですが大概は巧く行かない(笑)。
こちらは随分突き放した描き方でした。

マルコス夫妻ねえ。
あれだけ贅沢こいては、フランス革命みたいになりますよ。ならないのは良くも悪しくも日本くらいでしょう。
正にはだかの王様でしたねえ。

>リンゴ・スター
ジョン・レノンと同じ年に生まれていますから今年73歳ですね。頑張っているなあ。彼のドラミングは、派手さはないけれど正確で、好きですよ。
オカピー
2013/02/27 22:25

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