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zoom RSS 映画評「マダムと女房」

<<   作成日時 : 2013/02/20 10:59   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
1931年日本映画 監督・五所平之助
ネタバレあり

中学を卒業する少し前に買って貰った百科事典(僕の宝物で、今でも便利に使っている)で、本作が日本初の本格トーキー映画と知った。洋画は数年前から本格的に観始めていたが、邦画は見ず嫌いだったので、名前だけ一応記憶した。その後高校で知り合った友達の影響もあって邦画も大分観るようになったものの、サボり続けてNHK−BSの放送により今回初めて観る不始末。以前ほど貴重な作品を放映してくれなくなったが、本作と島津保次郎監督の「兄とその妹」(1939年)に関してはNHKに感謝であります。

最初の一幕は、戦後のそれとは全く意味の違う、戦前の洒落た文化住宅(洋風建築)を描いていた画家・横尾泥海男に、通りがかった劇作家・渡辺篤がちょっかいを出すドタバタであるが、このドタバタ部分の音声はよく聞き取れない。経年劣化かと思ったが、allcinemaの常連投稿者H氏が親切に紹介してくれた双葉十三郎先生も映画評でその旨指摘している。
 で、その時見知ったマダム伊達里子に誘われるかのようにこの家の隣に引っ越した渡辺氏とその妻・田中絹代や娘との会話はほぼ問題なく聞き取れる。同時録音だった故に撮影現場の環境によって大分差が出るようである。当然プロローグで示される通り野外は大いに不利だったであろう。双葉師匠(当時二十一歳!)は土橋式トーキーと呼ばれる技術の従来のものからの進歩を認めつつ、演出技術に及んでいないと指摘している。

さて、劇作家が引っ越したのは新作を書く為であるが、猫や幼い娘が五月蝿くて容易に進まない。翌日は翌日で隣から聞えて来るジャズ演奏が五月蝿くて閉口、掛け合う為に隣家を訪れる。結局マダムに簡単に丸めこまれて細君の嫉妬と顰蹙を買うものの、結果的にこの出来事によりやる気を俄然出した主人公は一気に書き上げ、手に入れたギャラで仲良く一家で買い物に出る。

という他愛ないお話で、隣の家での会話にも聞き取れない部分があってお話の理解に多少差し障りがあるものながら、遅筆の劇作家が隣の家のジャズ演奏、その中にはその名も「スピード時代」「スピード・フォイ」なんて曲があり、それに影響されるようにスピードアップ、最後には飛行機まで登場させて時代がスピード化に邁進していることを示す辺り文化風俗的に興味深いところも少なくない。

以下のコメントも allcinema にほぼ同様のものを見出しながらも敢えて強調しておきたい(自前の画像を入れておきたい箇所だが、パソコンの不調の為また東京電力に協力したくない為オミット。すみません)。
 チンドン屋の音から始まる、遠方に住宅を眺める草地からパンをして絵を描いている画家がフレームイン、その後ディゾルブ(通常のオーヴァーラップと区別にして速めの二重露出による繋ぎ・移行を指すマニアが多い。実際には同義)して画家に寄ったショットを繋ぐ部分など戦前から戦後にかけての名匠・五所平之助の卓越した画面感覚が光る箇所が幾つかある。多分にサイレント映画的な繋ぎであるが、こういう映画的な感覚と呼吸は昨今の作品では容易に触れることができない。誠につまらない。 

初の本格トーキー故にとにかく自然音から音楽まで終始音を意識させる演出が採られているだけでなく、双葉師匠なども指摘されているように、フレーム外の音の使い方が興味深いまでに既に進歩的で、名匠の名匠たる所以を感ずる次第。

付き合った女の子の中に僕と同じように百科事典を読むのが好きという変わった娘(こ)がいた。映画と音楽のファンで、ご贔屓プロ野球チームまで同じだったが、全てにおいて余りに同じ過ぎて却って上手く行かなくなった。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ねこのひげは、平凡社の百科事典を買いました。
最初は周りに馬鹿にされましたが、借りにくる奴がけっこう多かったですね。

無声映画からトーキーに変わるときの弁士の悲喜劇を描いた映画と言うのがありましたね。
ねこのひげ
2013/02/20 18:50
ねこのひげさん、こんにちは。

>平凡社
中学にあった百科事典がこれだったと記憶しています。
この間近所の人の家に行った時に平凡社の百科事典を見つけましたし、結構人気ですね。

僕はジャポニカです。写真が多くて親しみやすくて、これにしました。
両親には色々感謝しておりますが、対価があるというものではこれが一番かな。

>弁士の悲喜劇
それがテーマではないですが、映画になった金田一耕助シリーズでも弁士のエピソードがありましたね。
弁士ではないものでは、今月観る「アーティスト」に期待しております^^
「雨に唄えば」も同様の悲喜劇でしたね。
オカピー
2013/02/20 21:13

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