プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「ルルドの泉で」

<<   作成日時 : 2013/02/02 10:37   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 1 / コメント 4

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2009年フランス映画 監督ジェシカ・ハウスナー
ネタバレあり

“ルルドの泉”を知っている日本人は多いが、それを聖母マリアを通じて発見したとされる聖女ベルナデッタ(またはベルナデット)について知る人は少ないだろう。しかし、1943年にジェニファー・ジョーンズ主演で作られ日本では1949年に公開されたハリウッド映画「聖処女」を見ればあらましが解る。十分見るチャンスのある作品なので、もし興味がおありならばご覧あれ。僕は観ているが、さすがにリアルタイムで観たほど年寄ではござらんよ。

多発性硬化症という難病を病んだ妙齢美人シルヴィー・テスチューが半ば観光ツアー気分で神父を含むキリスト教系介護人たちと共にルルドの泉を訪れ、同地で何日か過すうちに全く動かなかった手足が動きようになる。若い女性介護士が興味を持っている男性介護ボランティア、ブリュノ・トデスキー二は前々から関心を寄せていたらしいシルヴィーが動けるようになって益々惹かれて行くのだが、周囲は信心深いとは思えない彼女に起こった奇跡に対して色々な疑問や不満を持つようになる。

まず、キリスト教系団体が行なうボランティア活動が詳しく紹介されていることが、風俗的に興味をそそる。潔癖症の映画批評家はこうした興味は映画の価値には関係ないと仰るが、知らないことを紹介されたり知ったりすることは映画を見る上では大事なことであり、いかなる角度からでも新味は映画の価値になると僕は信ずる。

本作はヒロインに起こる“奇跡”について宗教的な意味で認めているとも認めていないとも言えない。本作の関心は、“奇跡”に遭遇した人々が疑問と不満を憶えて行く様子にある。
 聖トマス・アクィナスは凡そ750年前に大書「神学大全」において神の善性や全能性等々について質疑応答形式で、詳細に書き記している(肝要な部分だけを読んだことあり。数百ページに渡るが、それでも多分全体の十分の一くらい)。つまり、本作において人々が持つ疑問は全て解り易く回答されていると言って良いと思うが、弁証法哲学的すぎてキリスト教徒であってもそれが自分の疑問に対する答えになっていると思えない人も多いであろう。
 まして、信心や努力の量と結果について不平等であるという最大の疑問、不満に対する神父の一般的説明では到底納得しまい。

本作が何気なく示しているのは、或いは、人間の弱さではあるまいか? 奇跡の起った人に対する嫉妬ややっかみは言うまでもなく弱さの顕れである。奇跡を体現した彼女自身がその喜びを介護した人々や周囲の人々に感謝の意を示さないのも弱さであろう。
 踊っていた彼女が突然倒れた後トデスキーニは彼女から離れ映画終了まで戻らない。これは何を意味するのだろうか。(その代わりに)遂に再び車椅子に坐る彼女を捉えたショットがパンすることでフレームインさせるのは彼女を見つめる人々であり、描写されるのはその嫉妬が半ば嬉しさの籠った憐れみに変わる様子である。人間の弱さは残酷さに繋がる。僕は面白い角度から人間という生き物を眺めた佳作と思う。

奇跡は信じて良いけど、振り込めを誘導する連中は信じる勿れ。僕は一度父親のふりをして奴らをからかってやろうと思っている^^

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
ルルドの泉で
「すぐ戻るから」 公式サイト。原題:Lourdes。ジェシカ・ハウスナー監督、シルヴィー・テステュー、レア・セドゥー、ブリュノ・トデスキーニ、エリナ・レーヴェンソン。万病を治すと ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/02/02 17:38

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
むかし、金の取引などを勧誘してくるのがあり、「そんなことをやっていると、いまにコンクリート詰めにされて東京湾に沈められるぜ!」と言ったら馬鹿にした笑いをして切りやがったけど、それから2,3週間して、東京湾でコンクリート詰めの死体が見つかってビックリしたことがあります。
「おれは預言者か?」と思いましたよ。
新興宗教でも起こしてやろうかな?・・・・でした。(^_^.)

ルルドの泉はいまも年間何万もの人が巡礼しているようですな〜

早朝、『トゥモローワールド』やっておりましたが、劇場で観なくてよかった。
ねこのひげ
2013/02/03 05:52
ねこのひげさん、こんにちは。

預言者だったんですよ^^
まさか電話してきた本人ではないでしょうね^^;

僕は最初父親のふりをして暫く付き合った後、「わてがその本人だ。父親は死んだ。ボケナスめ」なんていってやろうかな、と。
僕は普段からも「ぼく」と言っておりますので、「俺」と言った瞬間にうちの親には区別がつくと思っていましたよ。

>『トゥモローワールド』
そう言えば、この話題作、一向にTVに登場していなかったんだなあ。すぐにWOWOW辺りに出るかと思っていましたが。
というわけで、僕は観ておりません^^
知っていたら録画して観ても良かったなあ。上映時間から言って余りカットもないみたいだし。
アルフォンソ・キュアロンは場面の繋ぎに癖があるのですが、見づらくはなかったですか? その前にCMできられてしまいますか(苦笑)。
オカピー
2013/02/03 20:49
『リトル・プリンセス』とか『大いなる遺産』・・・・『パンズ・ラビリンス』のような映画はいいですが、これは・・・・ちょっと・・・ファンタジーは得意だけどSFはだめなのかな?
雰囲気はありますがね。
今まで話していた奴が容赦なく殺されていく・・・・しかし、カメラが例の手持ち撮影で・・・・リアルですけどね〜
CMで切られるのはしかたないと覚悟して観てますので、早期にはならないです。
ねこのひげ
2013/02/04 05:19
ねこのひげさん、こんにちは。

>ファンタジーは得意だけどSFはだめなのかな?
そんなことはないと思いますけど^^

>手持ち撮影
メジャー映画はきちんと撮った方が重厚感があって良いのですけど、最近は大作まで必要もないところで手持ちを使って、本当に落ち着かない(笑)。

>CM
最近はブラックアウト(もしくはフェイドアウト)/インでCMを挟んでおりますが、先日観た「コクリコ坂から」はシークエンスの転換にブラックアウトを使っているところが何箇所かありました。CMに入るところもブラックアウトだと監督の意図通りで有難いなあと思いましたが。
オカピー
2013/02/04 21:28

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「ルルドの泉で」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる