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zoom RSS 映画評「源氏物語 千年の謎」

<<   作成日時 : 2013/01/20 10:18   >>

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☆☆★(5点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・鶴橋康夫
ネタバレあり

何年か前一念発起して、日本どころか世界最古の(近代的な意味での)小説と言われることもある「源氏物語」を原文で読んでみた。厳密には1パラグラフごとに現代語訳を先に読み、後から原文を読むという手法で、である。最初原文を読んで後から現代語訳を読むと、時間がかかるだけでなく却って古文の勉強にならない。十年くらい前から取り入れたこの手法のお陰で高校の時から割合得意だった古文が原文でかなり読めるようになった。しかし、平安時代以前の文章は主語や目的語がないケースが多く、ちょっと古文が得意といったレベルでは到底読みこなせない。

本論に入る前に、「源氏物語」が世界最古の小説とも言われる理由。
 西洋では元来近代小説(novel)と通俗小説(romance)や物語・説話(tale,narrative)の区別は明解であり、英国で最初の(近代=純文学)小説は18世紀中盤リチャードソンの「パミラ」であるとされている。純文学小説の歴史は極めて浅い。日本には9世紀に成立した「竹取物語」などがあるが、あくまで物語(narrative)であって小説ではない。お話さえあれば良い物語と違って、小説には心理描写といった物語を必然的に繋ぐ要素が欠かせないのである。実際に読んでみると確かに「源氏物語」には心理を綴る箇所が多く、紛うことなき小説と確認した。

さて、本作は「源氏物語」自体が原作ではなく、これをベースにした高山由紀子の小説の映像化である。高山女史は本来映画脚本家・監督だから自分で映画化すれば良かったのだろうが、大人の事情で許されなかったのだろうか。

「源氏物語」をよく知っている人には紹介の必要のない本筋をば軽くご紹介。

さる天皇の御子息ながら身分の低い女官・桐壺(真木よう子)の腹から生まれたが為に比較的恵まれない境遇にある光源氏(生田斗真)が、通い婚時代故に美男子として奔放に様々な女性たちの運命を翻弄していく。
 彼の人生を支えているのは母親にそっくりの天皇の新しい后・藤壺(真木嬢二役)への慕情であるが、本人もそれと気付かぬまま、葵の上(多部未華子)と結婚した後も六条御息所(田中麗奈)や夕顔(芦名星)の許に通ううち、嫉妬深い御息所の生霊によりまず夕顔を、そして出産直後の葵の上を殺されてしまう。御息所が己の業に苦しんで郷に去った後藤壺と遂に結ばれ、生まれた子供がめでたく皇太子となった後藤壺は出家する。

本作の興味深いところは、紫式部が「源氏物語」を書いた理由を探るという目的の為に、彼女が女房として使える中宮・彰子(蓮佛美沙子)の父親である時の権力者・藤原道長(東山紀之)との関係を並行して描く二重構造にある。
 光源氏に光輝く道長を、御息所に道長への身分不相応な思いに煩悶する自身(中谷美紀)を投影していることを明確にして解りやすく、ここに安倍晴明(窪塚洋介)が「源氏物語」の中に入って御息所の生霊と対峙するなどという変化球、一種のメタフィクション的要素を入れて補完している。
 つまり、安倍は紫式部=御息所という構図を説明する為に入れられたのであるが、勘の良い人ならこの点には気付くと思われるので、蛇足とは言わないまでも、実在はしていたものの当時80歳くらいだった晴明さんを強引に持ち出す必要があったかどうか。それより式部が光源氏と対話をする部分のほうがよりメタフィクション的で面白い。

と言いつつ、☆が少ないのは、まず「源氏物語」本体が駈け足的すぎてかの作品の価値を成す登場人物の心理が肝心なところで解りにくくなっていること。全く知らない人が観た時きちんと解るか否か少々不安になる。
 もう一点は、配役が物足りないこと。道長の東山紀之は適役、若手中心で賑やかな女優陣では多部未華子の葵の上が平安時代の美人観に近い感じで少々面白い。演技自体には問題を感じたが。

作者が紫式部ではないという説もチラホラ出ておりますが。

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2013/01/21 08:07

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
だれの作品だったか忘れましたが、『源氏物語』のラジオ用の脚本というのを読んだことがありますが、これはよくまとまっていてわかりやすかったですね。

安倍清明は、女性に人気があり、何人もの作家が書いてますから、それで出したというのもあったんでしょうね。

三谷幸喜さんの『清州会議』の記者会見を観たら、出演者がその当時のリアルな格好で出ていて、女優はお歯黒をつけ、眉を書いたりしているので、だれがだれかわかりませんでした。
これは、ちょっと楽しみな映画であります。
ねこのひげ
2013/01/21 06:52
ねこのひげさん、こんにちは。

>安倍清明
歴女(れきじょ)ですか?
それとはまた違うか(笑)

>『清州会議』
リアルさに拘ればそういうことになりますなあ^^
まあ、時代劇でもお歯黒をつけ眉を剃らなくても良い、と僕は思っているんですけどね。
どうも現代人の美的感覚に合わなくて・・・^^;
「幕末」という時代劇で、25歳という一番綺麗だった頃の吉永小百合がお歯黒で眉なしで出てきましたが、さすがの美女も綺麗に見えませんでした^^;
オカピー
2013/01/21 17:28

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