プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「ミラル」

<<   作成日時 : 2013/01/19 10:38   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 2

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年フランス=イスラエル=イタリア=インド合作映画 監督ジュリアン・シュナーベル
ネタバレあり

現在イスラエルがある地域に古代イスラエル王国が出来たのは3000年以上前である。その後幾つかの国家に分裂していつの間にか祖国を失ったユダヤ人は1900年前に同地をパレスチナと名付けたローマ人により放逐され彷徨える民族となる。残ったユダヤ人とアラブ人(パレスチナ人)とが同地に長らく一緒に暮してきた後1948年ユダヤ人がイスラエル国を再建国したことから、未だに解決しない本格的なパレスチナ紛争が始まる。勿論その2000年の間にも両民族の間には色々と紛争があるが、近代兵器により紛争が深刻になるのは戦後からである。
 というのがパレスチナに関する僕の甚だ心許ない理解であり、かなり適当な筈であるが、この辺りについて正確に解っている日本人はそれほど多くはあるまい。

本作は、イスラエル出身の女性ジャーナリスト、ルーラ・ジブリールの自叙伝的な物語らしいが、本人が語るように本人が誕生するまでの紆余曲折がかなり長い。

1947年パレスチナにテロが頻発して増えた孤児などを収容して教育する学校“ダール・エッティフル”を、本作の本当のヒロイン、アラブ系のヒンド・フセイニ(ヒアム・アッバス)が創設するところから始まる。
 1967年アラブ系のナディア(ヤスミン・アル・マスリー)がユダヤ女性の鼻を殴ったことから懲役六ヶ月の刑を食らって、テロ未遂のかどにより無期懲役刑を宣告されたファーティマという女性と知り合い、出所後彼女の兄ジャマール(アレクサンダー・シディグ)と結ばれる。彼女の子供がミラル即ち原作者ルーラである。
 五歳の時に精神が不安定な母を失ったミラルは“ダール・エッティフル”で預けられて成長(フリーダ・ピント)、平和的イスラム宗教家である父親と反イスラエル組織に属する葛藤に苦しみながら、ユダヤ人の友人も出来るなど精神的に成長していく。
 1993年オスロ合意により近頃よく聞くガザ地区を含むイスラエルの22%に当たる地域がパレスチナ自治区に指定される。ヒンドはそれを聞いて喜び、間もなく死去する。

本作が描いているのは、アラブ人がパレスチナに平和に暮すというヒンドの願いである。映画が彼女が他界する直前に決まったパレスチナ居住区成立という小さな幸福が彼女の耳に届けられるまでを描いていることを考える時、彼女の思いこそ擬人的に本当の主人公と言いたくなる。

しかし、実際にはこの幸福は花を開いていない。1995年に和平を結んだイスラエルのラビン首相が平和を嫌う愚かなアラブ青年に殺され、パレスチナの紛争は堂々巡りでいつ終わるとも解らない。首相暗殺に見るように住民の憎悪が激しすぎて時に国家や体制の思惑を越えてしまうからだ。現在のイスラエル為政者の姿勢も僕らには強引に映る。パレスチナを飛び出たアミル即ちルーラはヒンドの思いを繋ぐ為に活動していくことになるだろうが、厳しい道である。

と、内容的には色々と考えさせられるのでありますが、四人の女性の描写バランスが適宜とは思えずお話が廻りくどい感が強く、構成的に不満を禁じえない。交通整理すべきところがされず、強調すべきところをしていない為何を言わんとしているか少々解りにくくなっている。僕は上述したように理解したが実際は些か心許ない。これに関しては当方の頭より作品の設計に問題があると断言する。

潜水服は蝶の夢を見る」(2006年)で僕を感心させたジュリアン・シュナーベルの演出も一向に冴えない。手持ちカメラによる長回しがくどく、カットで切って繋げば良いところを速いパンで処理する箇所が多く見づらく、閉口させられた。

「パレスチナ人は平和の夢を見る」でしたが。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
未だ和平に至らず〜『ミラル』
 MIRAL ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2013/01/19 17:54

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
先日も、テレビでやっておりましたが、イスラエルとイスラムの溝はますます広がるばかりで、どちらかが滅亡するまで永遠に続きそうですね。

平和といえば、『人生ブラボー!』という映画が公開されます。
533人の子供を持つことになった男の物語です。偽名を使って、自分の精子を次々と提供し捲った結果、世界中に自分の子供が570人・・・・そのうちの533人が自分の親が誰か知りたがり、ドタバタ騒動が・・・
親が3人とかいう話はありましたが、このアイデアはなかった!ハリウッドもやるな!と思ったら、カナダの映画だそうで、さっそくハリウッドがリメイク・・・スピルバーグがインドでリメイクするそうで、ハリウッドならぬ、ホリウッド。
なんだか、ハリウッドもスピルバーグも情けないです。
ゴジラも、ふたたびリメイクとか・・・・アチャ〜であります。
ねこのひげ
2013/01/20 06:37
ねこのひげさん、こんにちは。

>どちらかが滅亡するまで
正にそんな様子で、暗澹とした気分になりますね。

>『人生ブラボー』
徳川家斉は自力で53人の子供を作りましたが、丁度その十倍ですか。
監督としてのスピルバーグは依然買っておりますが、製作者としてはどうですかなあ。
リメイクするにしてももっと置かんかね、と僕はいつも思います。
ゴジラはもう結構です^^;
オカピー
2013/01/20 20:40

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「ミラル」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる