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zoom RSS 映画評「一枚のハガキ」

<<   作成日時 : 2012/12/11 10:50   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・新藤兼人
ネタバレあり

今年100歳で他界した新藤兼人監督の遺作は、自らの体験をヒントに作った反戦映画である。

天理教道場を掃除する為に集められた中年兵100人が掃除終了後、くじで戦地へ行くか別の場所の掃除へ行くか決められ、最終的に6人だけが生き残る。
 生き残った一人・豊川悦司は復員してみると、妻・川上麻衣子はできてしまった父親と出奔していて家はからっぽ。そこで伯父・津川雅彦に家と土地を売ってブラジルへ行こうと思い立つが、その際にフィリピンへ行く途中で戦死した六平直政から「確かに受け取ったと知らせてほしい」と託された手紙を発見、差出人である妻・大竹しのぶ本人に届けに行く。
 彼らの生死を分けた事情を知って怒り嘆く彼女が絶望して火を放った家の焼け跡を観た彼は、ブラジル行きを止めて彼女とこの地で暮すことを決意する。

晩年新藤監督の作風は妙に狂騒的になった。「ふくろう」(2004年)などは重喜劇的で内容に合っている感があるのに対し、本作の内容には些かフィットしないように覚える。例えば出征のショットと戦死して帰ってくるショットを同じアングルで直に繋いでいる為本来笑うべきではないシーンが妙に可笑しくなっている。しかも引き直し(ここでは兄弟との再婚のこと)をした弟についても同じことを繰り返す。戦争が国民に引き起す悲劇を強調する代わりに笑い飛ばして逆説的に反戦を訴える意図なのであろうが、僕の映画観に合わない。

但し、二人が出会って相互の複雑な感情が交錯する間、時々彼女に懸想する村の団長・大杉漣の邪魔が入り、結果的にその彼がキューピッドの役目を果たしてしまう辺りの可笑し味は秀逸で、麦を蒔いて二人が水桶を運ぶ「裸の島」(1960年)の再現で終わる幕切れは彼らの人生再生を感じさせる力強い場面になっている。

アップでは大芝居、ロングでは芝居も自然にするといった使い分けも鮮やかだが、全体的に大竹しのぶのオーヴァーアクトが少々気になる。

しかし、98歳にしてこれだけパワーのある作品を作れたことには感服いたしました。合掌。

新藤兼人の“一編の遺言”なり。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
反戦もありましょうが・・・・
人生の諸行無常というか・・・・それでも生きていこうとする人間=生命の逞しさを描こうとしたのかな?
とねこのひげは思ってしまいました。
3・11のときも、日本人の冷静さに海外では驚かれてましたが、日本人は、生き死にも自然の理と思っているところがありますからね。
ねこのひげ
2012/12/12 07:37
ねこのひげさん、こんにちは。

反戦は、新藤兼人監督の生涯のテーマでしたが、どんな内容の作品でも人間のしたたかさが重要なモチーフでした。
晩年の作風が狂騒的になったのもその表現の一環で、仰る通り人間のしたたかさ、逞しさを描こうとしているものと思います。
オカピー
2012/12/12 21:40

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