プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「メタルヘッド」

<<   作成日時 : 2012/11/26 11:26   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 2 / コメント 4

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督スペンサー・サッサー
ネタバレあり

9・11を受けてタケノコのように大量発生した家族再生ものが沈静したと思ったら、変相してまたブームになりつつあるようである。即ち、家族の死からの立ち直りを描いた作品が連続しているのである。それまでの作品は家族の死を避けて不和や問題を抱えた家族が和解するといったオブラートに包んだ形だったが、ここへ来て9・11を直視するようになったと言えるのかもしれない。

母を交通事故で失ったショックを引きずる13歳の少年デーヴィン・ブロシュー君は引き取られていく車に必死にすがる。車を引き取った中古屋の息子は偶然にも彼をいじめる上級生である。ある日警察車両に向かって爆弾を投げるヘヴィメタ好き青年ジョセフ・ゴードン=レヴィットと妙な出会い方をし、間もなく彼は、少年が同じように落ち込む父親レイン・ウィルスンと一緒に越した祖母パイパー・ローリーの家に現れ、居ついてしまう。

ヘヴィメタルは悪魔的であるとされる。メタルファンを自認する長髪の青年は文字通りアナーキストばりに過激であり、体裁など一切構わず他人の心にずけずけ入って来る。神出鬼没の出現の仕方から、まして学校の授業で夢の意味するものはなどと先生が説いているので、僕は途中まで彼は少年の幻視なのではないかと思っていたが、それは大外れで、誰の目にも見えると来る。言動が悪魔的な神の遣いと思えば当らずとも遠からずといったところか。
 2000年前触れることで病を治した本物のキリストに対し、現在のキリストは汚い言葉と反社会的行動で登場人物たちの心を癒す。上級生のいじめを見て見ぬふりをするのに知らないうちに元気づけている。何もしないのは、受け身すぎる少年に対する「自分で何とかしろよ」という無言のメッセージであろう。

少年を上級生から救い彼に憧憬されるボンビー(貧乏)なレジ係ナタリー・ポートマンも元気づけられる一人だが、ヘヴィメタ君、少年が憧れる女性に本当に手を付けるとは、下品な言葉を連発したり物をやたらに破壊するよりさすがに感じが悪いですぜ。

ピエル・パオロ・パゾリーニ監督「テオレマ」(1970年)などを持ち出すまでもなく、住み着いた人間が家族を壊していく構図の逆を行くところに人を食った面白さがあり、一種の寓話たる所以だが、交通事故後遺症ものが続いたこと、青年の言動が過激すぎてどうも僕の肌に合わず、父子が青年と一緒に祖母の棺を(生前一緒にすると言っていた散歩を実行する為に)押し始める、本作で一番素晴らしい場面ももう一つ感銘しきれない。かと言って、青年をもう少しまともにすると、本作の狙いが生かせないわけで、難しいところでございます。

監督は短編に実績があり、本作が長編第一作となるスペンサー・サッサー。

そうそう、おばあちゃんに扮するパイパー・ローリーは60年前の「ミシシッピーの賭博師」(1953年)が印象的だったお嬢さん女優で、「ハスラー」(1961年)で演技派に転向した後なりを潜めて、「キャリー」(1976年)の母親役で大分雰囲気を変えて復帰したのに驚いたのを憶えている。それから30余年経って見事なおばあちゃんになりました。ちょっと太り過ぎかな。

スペンサー監督、さっさと片付けないできちんと作ってはいるようです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
その名はヘッシャー〜『メタルヘッド』
 HESHER ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2012/11/26 21:04
メタルヘッド(2010)◆◇HESHER
  &amp;larr;(20点)ということで80点です。 京都みなみ会館にて鑑賞。 今回からちょっと点数をつけてみました。あくまでも好みの作品かどうかで点数つけます。 ...続きを見る
銅版画制作の日々
2012/11/30 13:24

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
異色ではありましたが、賛否が分かれる作品ではありますな〜
作り方が、いいのかわるいのか悩む作品であります。

今朝の朝刊の、テレビの番組表を見ていたら、テレビ東京で、ゲーリー・クーパーの『首吊りの木』をやるそうですよ。
『ミシシッピーの賭博師』より新しいですが、1959年であります。
あのころのほうが、作り方としては、すっきりしておりました。
ねこのひげ
2012/11/27 06:41
ねこのひげさん、こんにちは。

ちょっとした寓話なんでしょうけど、僕は人間が上品でしてね(笑)

>ゲーリー・クーパー
「縛り首の木」ですね^^
ジョン・フォードは勿論、アンソニー・マンにもちょっと及ばないですが、デルマー・デーヴズの西部劇も中級で割合好きだったです。
どうしようかと思いましたが、結局吹き替えなのでスルーしてしまいました。
昔一度出ているので、またNHK−BSに出るのを待っていましょう。

昔の映画は、当時ダメと言われているものでもやっぱり明快で良いですよね。
オカピー
2012/11/27 21:29
首吊りの木・・・・縛り首の木・・・・またやってしまいました・・・・
ぼけてきたのか?

昔の映画、わかりやすいですね。セットみたいなところがありましたが・・・・
今朝、「最後の忠臣蔵」やってましたが、午前1時20分から午前4時25分・・・
映像はよかったですが、30分は切りつめられたのでは?と思いましたよ。
ねこのひげ
2012/11/28 05:39
ねこのひげさん、こんにちは。

ブログを始めて三千本以上の映画を取上げまして、そのうち10本くらいは当初タイトルをほんの少し間違えてUPしたことがありますね。
特に問題なのはTBを送った後に気付くと、恥ずかしいTT
本文における間違いはないほうが珍しい。通常記事を上げてから、三回くらいは直しますね^^;

>セット
が殆どなくなったのはアメリカでは、1967年に始まるアメリカン・ニュー・シネマからですね。
それ以降の映画はまずセットらしいセットは使わなくなりました。
尤も今は、映画によっては殆どCGだからある意味セット以上のセットですが。

>「最後の忠臣蔵」
わっ、本当だ。一行だから気付きませなんだ。
来月14日にNHK−BSで市川崑の「忠臣蔵 四十七人の刺客」をやりますので、これを観ようと思っております。
オカピー
2012/11/28 21:02

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文
映画評「メタルヘッド」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる