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zoom RSS 映画評「嘆きの天使」

<<   作成日時 : 2012/11/21 15:42   >>

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☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1930年ドイツ映画 監督ジョゼフ・フォン・スタンバーグ
ネタバレあり

原作は有名だがまだ読むチャンスに恵まれていないハイリッヒ・マンの小説「ウンラート教授」。三十数年前TVで観た時に圧倒されたジョゼフ・フォン・スタンバーグの秀作である。
 若い時に渡米してサイレント時代からアメリカで既に秀作を幾つか作っていたスタンバーグがこの映画撮影の為にヒトラーが台頭する前のドイツに渡って作ったのだが、本作が暫くコンビ作を作ることになるマレーネ・ディートリッヒとの出会いとなった。

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厳格な余り学生に嫌われているラート教授(エミール・ヤニングス)が、道楽趣味の学生たち数名の通い詰めているキャバレー“青い天使”に行き、彼らを熱狂させている女歌手ローラ・ローラ(マレーネ)に説教しに行ったところが、ミイラ取りがミイラになってしまい、結婚宣言をして学校を呆気なく追い出された為彼女のプロマイド売りになり、それでも追い付かないので遂には道化に落ちぶれる。しかし、“青い天使”での出演となって以前の知り合いの前で道化を演ずる屈辱と相変わらず蠱惑的な妻の浮気に発狂、昔通った教壇にうつ伏して死ぬ。

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昔の僕はこの残酷な終盤に打ちのめされたのだが、勿論今も強烈な印象を残す。ただ、教授がローラにのめり込むシークエンスには描き足りない恨みがあるし、彼女がこのうだつの上がらない中年教授と結婚する理由も余りはっきりしない。ここをもっときちんと描いていたら次に撮る「モロッコ」(1930年)や「間諜X27」(1931年)にも優るとも劣らない大傑作になったに違いない。

ただ、スタンバーグだけにさすがに上手いところが多い。まず序盤小鳥が死んで家政婦が「歌わなくなったのね」と言って捨てる何気ないシーンがある。一つは彼が鳥に慰みを見出していた孤独が解り、一つはこれが次の“歌い手”を求めることになる伏線になっている。ここを指摘する人は殆どいないので敢えて優れたシーンとして挙げておきたい。
 キャバレーで道化がうろちょろするショットが何回も挟まれる。これも主人公の未来への暗示となっている。教室が朝明るく描かれる序盤に呼応する形で幕切れでは対照的に薄暗く描かれ、悲劇性を強調する辺りも映画的に鮮やかである。

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ヤニングスはサイレント時代そのままに些かオーヴァーアクトで臭いが、さすがの貫録と言うべきか。それより、可愛らしさの中に妖艶さを、妖艶さの中に退廃を醸し出すマレーネの魅力が抜群。有名な劇中歌“Falling in Love Again"は今聴いても断然良い。

ウンラートは、RathにUnをつけることで、“汚物”といった意味になるらしい。

傑作と言われても読めない本の多いことよ。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
描き足りない・・・・あの時代では仕方ないでありましょう。今の作品のように過激にしたら上映禁止になったでしょうからね。
マレーネ・デートリッヒ・・・・いまでいえば魔性の女というところでしょうか?
この歌は、ほんとうにいいでありますね。耳に残ります。
ねこのひげ
2012/11/22 05:02
ねこのひげさん、こんにちは。

今日UPした「恋のページェント」のように暗示の積み重ねで可能だったのではないかなあと思いました。映画的には「嘆きの天使」のほうが明らかに上ですけどね。

>魔性の女
特に本作ではそうでしたね。
何となく可愛らしいところもあって、そこがまた恐ろしいのかもしれません。
オカピー
2012/11/22 22:09
嘆きの天使・・・残酷な物語でした。 そう、何気なく映るピエロさんや鳴かない鳥が、あの先生の末路を暗示してたんですよね(;_;)  最期は、教壇から離れなかった先生が可哀想過ぎます(- -;)辛いけど、また観たいです。
ぬえ
2012/12/12 19:41
ぬえさん、初めまして。

残酷なお話でした。
若き僕も衝撃を受けた作品で、三十数年ぶりに見直して、やはり感銘を受けましたね。
オカピー
2012/12/12 22:04

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