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zoom RSS 映画評「家族の庭」

<<   作成日時 : 2012/11/16 10:57   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2010年イギリス映画 監督マイク・リー
ネタバレあり

マイク・リーお得意の人生観照劇。

彼は即興演出を取り入れているらしいのだが、他監督の即興演出作品に比べると物語の結構がしっかりしているので実感だけでなく面白さでも勝負できる。

序盤のしりとりのような人物紹介から全く鮮やかで、まず不眠症の老婦人イメルダ・ストーントンを内科医から紹介されたるのがカウンセラーのルース・シーンで、彼女の同僚の事務員がレスリー・マンデルといった具合。
 お話の中心となるのはルースとジム・ブロートベントの夫婦で、男運の悪いレスリーの愚痴を聞いている。というのが春のエピソードで、夏になって遊びに来た知人ピーター・ワイトはレスリーに関心を持つが、彼女が秋波を送るのは夫婦の独身息子オリヴァー・モルトマン。しかし、彼に恋人カリーナ・フェルナンデスが出来たと知ってがっかり。冬、ブロートベントの兄デーヴィッド・ブラッドリーの妻が死んで一族でしんみりとしたいところへ場違いのレスリーが訪れ、夫婦をうんざりさせる。

冒頭に記したようにお話の中心は酸いも甘いも三十数年に渡って味わってきた夫婦であるが、冬のエピソードになって真の主人公はレスリーであることが判る。季節に合わせるかのように、男運が悪いと嘆く彼女の気分と夫婦の態度が変化していくのが興味深く、最後のエピソードで描かれるレスリーは正に葉の落ちた枯れ木のようにしおれて孤立している。
 夫婦の姿に理想に極めて近い老人の残照風景を示しているのに対し、彼らより若干若いらしいレスリーからは家庭を持たない人が老いた時に迎える孤独を浮き彫りにする。それも小津安二郎のように諦観を伴ってしんみりとさせるのではなく、幸福な家族の中で浮いている様子を皮肉っぽく辛辣に見せ、観客をドキッとさせるのである。

先進国ではこの種の人々が増加中であるから、タッチこそ違え小津が戦前から1950年代にかけて予言的に【家の崩壊】を見せた映像作家としての心境に似たものを覚える。マイク・リーとしては代表作とみなされる「秘密と嘘」(1996年)に優るとも劣らない、研ぎ澄まされた傑作と言って良いのではあるまいか。

原題の"Another Year"は色々解釈できるが、ポール・マッカートニーの名曲"Another Day"に準じて考えれば、「またいつもと変わらぬ年=十年一日のごとく」といった意味になる。「明日は明日の風が吹く」というより、多分こちらの意味だろう。

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内 容 ニックネーム/日時
わが友人にも独身が多く。わが団地にも男女を問わず独身が多いです。
一人でいても困らないということがあるのでしょうな〜
ねこのひげ
2012/11/19 05:08
ねこのひげさん、こんにちは。

若いうちは一人が気楽で良いやということでしょうが、ある程度年齢を重ねると帰る実家もなくなったり、段々寂しくなってくると思いますがねえ。
そういうのに強い人は良いですね。
オカピー
2012/11/19 16:27

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