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zoom RSS 映画評「千年の祈り」

<<   作成日時 : 2012/11/12 15:52   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2007年アメリカ=日本合作映画 監督ウェイン・ワン
ネタバレあり

所謂アメリカ人たちの行動を点出した「スモーク」の滋味溢れる作風と見事な呼吸に素直に脱帽させられた在米中国人監督ウェイン・ワン監督が、中国人女性作家イーユン・リーの小説をベースに、今度はアメリカにおける異邦人の心の交流を描き上げている。

アメリカの図書館で働いている娘フェイ・ユーに12年ぶりに会いに来た老父ヘンリー・オーは、再会した娘が熱烈な恋愛の末に結婚した夫と別れて口数少なくなっているのに失望を禁じ得ない。娘とのコミュニケーションは一向に捗らないのに、英語が殆どできない父親は何故か近所の人々とは気持ちが通じ合う。特に親しくなるイランの婦人とは互いに英語が喋れないのに肉親のいる有難味を互いに分かち合う。

即ち、父娘を隔てているのは言葉ではなく、自分が相手に対して勝手に抱いている思い込みである。

娘はロケット工学士を自認する父親がただの事務職で愛人までいたと信じているが、父親は不当な不倫疑惑による工学士からのありえべからざる降格だったと主張する。片や、娘が離婚した理由も実はロシア人との不倫が原因である。不倫と言っても迫る相手に「枕を共にするは3000年祈らなければならない」という中国の諺を引用する精神的なものに過ぎない。結局父娘は同じ道を歩んでいることを知り、限られた言葉のうちに二人の間の溝は徐々に埋まって行く。

「スモーク」の名状しがたいムードには些か及ばないながら、相手を中途半端に知っているが故に近づけない父娘を通して、言葉の壁を時にユーモアの道具として、時に相手と通じ合うに必要なのは必ずしも言葉ではないことのシンボルとして上手く使い、最終的に断ち難い肉親の情を滋味たっぷりに浮かび上がらせる。父親が娘の薦めるツアーを実施するに際して飛行機ではなくゆっくりとアメリカが見られる列車を選ぶ幕切れも、娘の名前を駅名から付けた父親らしさが表れていて味わい深い。

固定カメラで落ち着いて見られる映画は良い。

ヘンリー・オー主演だけに、オー・ヘンリーみたいな味わいでした。本当?

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千年の祈り
公式サイト。英題:A Thousand Years of Good Prayers。ウェイン・ワン監督、フェイ・ユー、ヘンリー・オー、パヴェル・リチニコフ。娘には無口のお父さんは、実はおしゃべりで浮世を生き延び ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2012/11/12 18:41
mini review 10459「千年の祈り」★★★★★★★☆☆☆
世界中から注目を集める中国人女性作家イーユン・リーのデビュー短編集に収められた一編を映画化。わだかまりを抱えて離れ離れになった父娘が、本当の親子のきずなを築くようになるまでを描く。監督は『スモーク』のウェイン・ワン。父を『ロミオ・マスト・ダイ』のヘンリ... ...続きを見る
サーカスな日々
2012/11/26 10:06

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
中国人監督なので、米中合作と思ったら、日米合作・・・・なぜだろう?
親子の間は、単純に割り切れないものがありますな〜
列車というのも旅情があってよろしいですな〜

日曜日『三銃士・・・・・』を地上波で観ましたが、ああいう映画は大画面がよろしいようで・・・・アラがめだって…・
ねこのひげ
2012/11/13 06:52
ねこのひげさん、こんにちは。

中国との合作ならまだ解りますが、日本はお金だけ出したのかな。

>親子の間
親とは非常に仲が良いと思っていましたが、二人とも我慢をする人でしたから、僕の知らないところでストレスを感じていたのだろうな、と今は思いますね。

>『三銃士・・・・・』
色々な作品評で述べておりますが、最近のメジャー系の映画は画面で誤魔化している作品が多いと思いますね。画面は勿論大事なんですが。
先般論評したように、残念ながらお話の整合性が取れていない作品でした。
オカピー
2012/11/13 22:15
こんにちは。
僕にもひとり息子がいますが、たぶん彼との親密さと疎まれ方は、そんなにこの映画の親子と異なっているわけではないなと思ったりもします。
kimion20002000
URL
2012/11/26 10:11
kimion20002000さん、こんにちは。

僕の経験から言っても、今の若い人は親と話しませんね。
帰っても「ただ今」も「疲れた」もない。
僕自身が親に対してあることないこと話し合うタイプだったので、考え込んでしまいますよ。
オカピー
2012/11/26 21:19

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