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zoom RSS 映画評「ラビット・ホール」

<<   作成日時 : 2012/10/31 10:28   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督ジョン・キャメロン・ミッチェル
ネタバレあり

昨年四月母を失った時僕は自分を責めて苦しんだ。喪失感より罪悪感が強かった。姉があるキリスト教絡みのしおりを持ってきて、同じような人即ち家族を失った者には罪悪感を覚える人が多いことを知って少し気が楽になった。母と同じ墓に入ることを願ってやまない不信心の仏教徒の僕にとってキリスト教の考え自体は全く関係ない。

本作のヒロイン、ニコール・キッドマンは8か月前に4歳の息子を失ったばかりで、彼女のまた喪失感と罪悪感の両者から責められている。だから、喪失感だけを味わっている夫君アーロン・エッカートと苦悩のあり方は違い、自ずと対処の仕方も変わってくる。夫君はキリスト教的な発言ばかり出てくるグループセラピーに参加して他人の話を聞くことで痛みを無くす努力をするが、彼女にはそうした形から入るやり方は馬鹿らしいだけなのである。

この後の二人の行動はこういう時には何気なく話を聞いてくれる人の必要性を示している。夫婦や親子でも上手く行く場合もあろうが、悲しみが近すぎてこの夫婦や母娘のように傷付け合ってしまいがちであろう。
 ヒロインが人生再生の取っ掛かりを得るのが交通事故で息子を轢いた少年マイルズ・テラーというのが実に興味深い。恐らく彼女は「たられば」を深層心理的に考えていて、少年が死んだ父親をパラレル・ワールドに探しに行くコミックを書いているテラー君に同じ匂いを感じ取ったのかもしれない。加害者を責める定石の代わりに加害者を人生再生の触媒のように扱っているのが新鮮である。

夫君は旦那に逃げられたセラピー仲間のサンドラ・オーとマリファナをやって以来昵懇になって行くのだが、母ダイアナ・ウィーストから「悲しみという石は小さくなるが決して消えない。しかし、その石は亡くなった人の代わりである」という含蓄のある言葉を聞いたニコールが同病相憐れむ少年を自分の慰みにすることの過ちに気付いて現実に目を向けるのと歩調を合わせるかのように、夫君はサンドラとの逢い引きへの思いを断ち切る。

結局現実を見ることが悲しみという石を小さくする唯一の方法なのであろう。悲しみを完全に消そうとすると親近者ではダメだが、悲しみを分かち合い小さくするのは親近者でなければダメなのかもしれない。そういう余韻を漂わせた幕切れにはじーんとしてしまう。

何と言っても原作の戯曲を書き、映画用に脚色したデーヴィッド・リンジー=アベアーの殊勲であるが、映像化した異色作「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェルのタッチも落ち着きがあって秀逸。演技陣も好調。

うさぎの次もうさぎでした。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
変則コメント・・・・・またウェブリがおかしくなって、朝入れたコメントが消えていたのであります。

こういうドラマの場合、被害者側の恨み辛みが描かれることが多いので、やめとくかと思ったけど、ニコール・キッドマンなので・・・・(^^ゞ
これは、そうきたかと感心しました。
ただ、グループセラピだけは、我慢ならないな〜かえって悪化しそうですけどね。

ディズニーが、スタウォーズを買ったようですね。これでpart7、8、9が、制作されることは確実になりましたね。
ねこのひげ
2012/11/01 12:27
ねこのひげさん、こんにちは。

長いトンネルをやっと抜けた感じですね。
またおかしくならなければ良いですが。

>被害者側
加害者側との関連のもたせ方が興味深かったですね。
つまり、被害者も加害者も「たられば」という思いに共通点がある、という視線が新鮮でした。
そう思わない加害者は尼崎事件ではないですが、本当の悪党ですよ。

>グループセラピ
アルコールとか麻薬ならまだ良いかもしれませんが、本作のヒロインのように、家族の喪失ではダメではないかなあ。

>スターウォーズ
元来9作の予定でしたけど、せめて20年くらいの間にやってくれないと・・・
このまま行くと第一作から45年くらいかかる計算!
1980年頃は危なかったディズニーも持ち直したなあ。
オカピー
2012/11/05 22:04

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