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zoom RSS 映画評「ウィンターズ・ボーン」

<<   作成日時 : 2012/10/28 11:22   >>

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☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2010年アメリカ映画 監督デブラ・グラニク
ネタバレあり

本作は色々な作品と比較されているようだが、近作でコミュニティの性格において一番似ているのは韓国映画「黒く濁る村」ではあるまいか。違うのはあちらの村が作られたコミュニティであるのに対して、こちらは歴史的にそうならざるを得なかったことである。それが作品の性格にそのまま反映されている。

ミズーリ州オザーク山脈地帯の寒村、17歳の少女ジェニファー・ローレンスは、保釈中の父親が失踪、母親が精神を病んでいる為に、母親、12歳の弟アイザイア・ストーンと5歳の妹アシュリー・トンプスンをその細腕で養っていかなければならないが、保釈金として自宅と森林を担保に入れた為に翌週に控える裁判に父親が出廷しないと没収されると保安官に言われ、保証会社の人間も現れる。
 そうなっては困ると父親の居場所を探るべく伯父ジョン・ホークスを始め遠い親戚などを尋ねて回るが、殺されかねない勢いで追い返されたりする始末。現にキー・マンの老人に接近しようとするとその娘たちから半殺しの目に遭い、ホークスに何とか助けて貰う。
 ところが、この辺りから様相が変って来る。暴力を奮った女たちが彼女に父親の死体の在り処に案内し、死亡の証拠として両腕を切り落とすのを手伝わせる。少女はこれにより担保から解放され、しかも保証会社の人からも誰かが保釈用に出したという金を渡される。

僕がCDを買おうと思っているカントリー・ロックの中堅にOzark Mountain Daredevils(オザーク山脈の向こう見ず)というグループがあるのだが、正にそれを地で行くヒロイン像である。必要は発明の母ならで行動の要因なり。
 自分が軍隊に入った時のことまで考えて幼い弟や妹にまで動物の獲り方を教える姿に、不毛の地と言われるオザーク山脈における村のあり様(よう)が浮かび上がり、彼らの生活を支えているのが村を挙げての麻薬製造であることが極めておぼろげながら判って来る。つまり、彼の父は逮捕され、恐らくは司法取引をしようとしたところで釈放され殺されたのである。恐らくは村の誰かが彼に不動産の担保を薦め、足りない現金を支払って釈放させたのであろう、村の掟を破った男の口を封じる為に。思うに、不足金を払った理由が善意とは限らない。

村は徹底した男尊女卑ながら、女に対しては女が全てやるという掟もあるのだろう。また、困った者には掟を破らないことを条件に互助する精神が序盤から垣間見える。だから、実力者の娘たちは彼女を懲らしめ、同時に、彼女の窮状を察して援助の手を差し伸べたのであろう。

軍隊にも入れない未成年のヒロインは村の実態を知らないまま行動し、ある程度理解することになる。その精神力に頭が下がる。あの強さがあれば彼女の母親のようには決してなるまい。オザーク山脈の村々では恐らくこれに近い状態の生活が実際に行なわれているに違いなく、常識がある方なら、実話ではないにしても広大なアメリカの一面を見て衝撃を受ける筈である。

ジェニファー・ローレンス熱演。

今アメリカは女性監督の方が手応えのある映画を作っていますな。

尼崎事件はあらゆる映画を越えた。必要に迫られて悪行に手を染めるこちらの人たちには良心がある。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
アメリカにもこういうところがあるんだと認識させられる映画でありました。
ねこのひげも、アメリカを車で移動した時に、小さな町で、町から一歩も外に出たことのない女の子に会いました。
ロスからラスベガス・・・フェニックスと説明してやると羨ましがってました。

沖縄あたりで、事件を起こしている米兵というのは、こういうところから来たのが多いようです。
ロスアンゼルスもニューヨークも行ったことがないようなアメリカ人・・・・そういうのに声をかけては軍隊に入れるみたいで・・・必然的に事件は起きる・・・・。

尼崎事件・・・・まさに事実は小説よりも奇なりという謳い文句を思い出します。
オウムやあさま山荘と同じように、止める人間がいないと、人は暴走していくようで・・・
ねこのひげ
2012/10/29 05:25
ねこのひげさん、こんにちは。

アメリカを車で移動ですか。
僕は上司の運転で、ロサンゼルス界隈を数時間回ってくらいです。東海岸には取引先がなく行ったことがないです。
高校時代の映画友達が新婚旅行で、ブロードウェイで観劇して感激したそう(笑)で、羨ましかったであります。

>米兵
本作の少女も軍隊に入ろうとしていますものね。
確かに環境がいびつな人間を作る可能性は否定できません。
今日の新聞に米兵の鉄道死亡事故が報道されていました。泥酔の末の哀れな最期だったようです。

>尼崎事件
悲劇の種類は過激派のリンチ事件に近いでしょうね。
こちらはあくまで金銭欲、あちらはトップの自己顕示欲がもたらした悲劇でしょうか。
しかし、何の非もない複数の家族が底なしに金を欲しがる異常者により巻き込まれた尼崎事件の悲劇性は際立っている感じがします。言いがかりをつけられて何百万も搾取された飲食店など数え上げれば切りがないようです。
オカピー
2012/10/29 20:00

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