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zoom RSS 映画評「アリス・クリードの失踪」

<<   作成日時 : 2012/10/03 13:49   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年イギリス映画 監督J・ブレイクスン
ネタバレあり

ディセント2」を書いたJ・ブレイクスンが自らの脚本を映像化したシチュエーション・サスペンスで、前述作より大分練られている。

刑務所で知り合ったエディー・マーサンとぐっと若いマーティン・コムストンの二人が車で黙々と何かの準備をしている。間もなく、それが金持ちのお嬢さんジェマ・アータートンの営利誘拐と判明していよいよ本番ということになっていくが、黒澤明の「天国と地獄」(1963年)のように警察などは一切表には出て来ず終始この三人でお話が展開していく。

序盤いかにもプロフェッショナルなヤーさんならぬマーサンと素人丸出しのコムストンとの対照が面白味と感じる程度で進んだ後、マーサンがいない間にトイレ事件が発生して局面が俄かに変って来る。若い綺麗なお嬢さんと言えども出る物は出るということでNo.2(大)をしようとしている最中に礼儀正しく後ろを向いた若者にお嬢さんが拳銃を奪って反撃を食らわし形勢逆転するのだが、そこで困った若者は覆面を外して正体を現す。何と彼は恋人なり。
 彼女は「そうならそうとはっきり言って頂戴よ」と油断させて楽しませた後全裸の彼を手錠で繋いでしまう。懸命に訳を話しこのままだと二人とも命が危ないと説得して再び元の状態に戻ったところへマーサンが帰って来る。

ここからのシークエンスで面白いのは、立っているマーサンから僅か数十センチ離れたところに薬莢が落ちているのを発見したコムストンが何とか誤魔化そうとする箇所と、その後水洗便器に流そうとする箇所である。特に前者は若干小手先気味だが素晴らしいサスペンスが味わえる。後者はあの時点で無理に流す必要性があったか疑問の方が先に残ってしまうのが弱いが、若気の至りが感じられてそこはかとなくユーモラスなのが良い。

しかるに、本作の眼目はここからで、何と誘拐犯ペアがホモだちと判明、身代金を巡る妙な三角関係から二転三転するお話となって行く。俗に“金の切れ目が縁の切れ目”と言うが、本作は逆に“縁の切れ目が金の切れ目”をベースに若者の本音をはっきりさせずお話の展開を予測しにくくした点に工夫の跡が見られる。同じソリッド(若しくはワン)・シチュエーションものでも「ソウ」シリーズのように目を背けたくなる描写が殆どないのも有難い。

ただ、「コレクター」(1965年)という誘拐サスペンスの金字塔と比べると、ここ十数年のソリッド・シチュエーション・サスペンスの例に洩れず、スタイルに逃げ込み映画的ムードが淡泊になっているのが物足りない。シチュエーションが限られ登場人物が三名だけなので舞台を見ているような印象をもたらすのは必然なのだが、そこをもう一工夫して変に舞台的な無機質感を取り除ければ傑作という印象に変ったにちがいない。

日本では営利誘拐が成功した例はないと言われていますが、本当ですか?

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アリス・クリードの失踪/マーティン・コムストン
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
日本の場合、成功したという話は聞きませんね。
ヨーロッパや中南米のように誘拐のプロがいないですからね〜
ディンゼル・ワシントンの『マイ・ボディガード』は、その営利目的の誘拐でしたが、現実に中南米では、1秒間に4人誘拐されていると聞くと、ゾッとしますね。
原作の『炎の男』のほうが、話としては怖いですけどね。

六本木で10人の男が男を襲って殺して、いまだに捕まっていない事件を見ると、いずれ日本でも誘拐のプロが出現しそうですがね。
セレブでないこちらとしては関係ないですけど(^^ゞ
ねこのひげ
2012/10/04 05:04
ねこのひげさん、こんにちは。

>『マイ・ボディガード』
先日死んだトニー・スコットの作品ですね。
この辺りから彼は映像をいじりすぎて苦手意識が出始めたわけですが、配役も重量級で見応えはありました。
原作は勿論知らないです(笑)。
しかし、最近映画になった原作を読む機会が少々増えました。

>六本木
不気味な事件ですね。日本もそういう国になりましたか。
中国人は日本人を鬼と形容しますが、戦後治安が非常に良くなった日本を荒らすのは外国人が多いような気がしますね。
僕の大学は留学生が多く、外国人に対して偏見はありませんけど、それを目的に入って来る外国人が多いのだと思います。
オカピー
2012/10/04 22:21

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