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zoom RSS 映画評「ペーパーバード 幸せは翼にのって」

<<   作成日時 : 2012/10/24 11:00   >>

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☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年スペイン映画 監督エミリオ・アラゴン
ネタバレあり

ドイツやイタリアはファシストによる独裁政権が敗戦とともに消滅したので戦後すぐに民主国家になったが、スペインは内戦においてフランコが勝って長期政権になった為国民にとっては他のファシスト国家より不幸な時代が続いたと思われる。最近でこそ内戦終了後のフランコ政権時代を扱った作品もチラホラ観られるものの、我々日本人はその40年近くに及ぶ時代のことはよく知らない。少なくともその間日本に入って来た映画は「汚れなき悪戯」一本くらいだから、むべなるかな。

1975年にフランコが死んでからやがて民主国家に変わり戦後の真のスペイン映画が観られるようになったと言って過言ではないが、本作は内戦末期から政権初期を背景にした点に興味がそそられる。

1930年代末ある劇団のボードヴィリアン、イマノル・アリアスは爆撃で妻子を失って行方をくらます。
 一年後内戦が終って相棒ルイス・オマールと再会した彼は、息子と同じ年頃の少年ロジェール・プリンセプ君が孤児になって入団を希望しているのを知り、三人で暮すことになる。
 一年間の出奔中レジスタンス活動でもしていたのか、アリアスは私服の若い中尉オリオール・ビラに監視されながら芸を続けるうちにプリンセプ君に息子を見るような思いを抱き、ニュース映画で少年が発見した母親を探し当てたものの戦争のショックで廃人同様になっているのを知り、少年には伏せる。三人は軍部の反乱分子により劇団がフランコ総統暗殺に利用されているのに気付いて、逃げ込んだ教会の計らいでアルゼンチンへの渡航が可能になる。

ところが・・・というお話で、残念ながら完全なハッピーエンドではない。彼らが、軍側の要望もありファシズムやフランコ批判を盛り込んだ演芸を見せても大したお咎めがないのには裏があって、中尉の直属上官である大尉フェルナンド・カーヨがフランコ暗殺を画策していたわけである。

彼等と行動を共にしていた中尉は事実関係を重々承知しているので、発車する汽車を追い掛けるアリアスの射殺に逡巡する。その代わりに横にいた兵士が銃撃する。
 何と言うことはないようだが、僕はこの場面の重さにやりきれない気持ちを抑えることができなかった。中尉の本音が彼を汽車に乗せたかったのは言うまでもない。無実だからというだけではない、彼の人生の過ごし方を含めた“芸”に我知らず感化されたものがあったと感じられるのである。

敢えて比較的瑣末なこの部分を取り上げてみたが、見どころと言うべきは、三人の芸とそこに込められた皮肉っぽい風刺であり、戦争で家族を失った者同士が合流し生じる疑似家族の姿が胸に迫らないわけがない。およそ70年後今や老人となった少年が歌を披露するうちに時間が交錯していく幕切れにも胸が熱くなる。

「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年)に似たムードがあり、ジュゼッペ・トルナトーレの鮮やかな話術には及ばないものの、本作がデビューとなるエミリオ・アラゴンとしては上首尾。

サブタイトルで思い出した1967年のヒット曲「恋はリズムにのせて」。アンディ・ウィリアムズが亡くなりましたね。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
フランコの独裁のころのスペインは不思議ですね。
圧政下にありながら、庶民は活気にあふれていたんですから・・・
独裁から民政に移行したのも不思議です。
ひと悶着ありそうなものですが・・・・

カルロス・ルイス・サフォンというスペインの作家の小説『風の影』と『天使のゲーム』を読んでおりますが、ちょうど、このフランコの独裁下の庶民の生活の中で起きるミステリーですが、ファンタジックで、いかにもスペインの不可思議さが出ている小説です。
世界で800万部売れたとか・・・・・・現代の古典と呼ばれているそうです。

アンディ・ウィリアムズ・・・・ムーンリバーを思い出します。オードリーの憂い顔とともに・・・・
ねこのひげ
2012/10/25 05:10
ねこのひげさん、こんにちは。

>独裁から民政へ
これは数年間王政復古して、その王が民主制を希望して実現したようですよ。
現代スペインのことはよく知らないのですが。

>スペインの作家
ふーむ、4〜500年前の悪漢小説とセルバンテスの「ドン・キホーテ」しか読んだことがないですなあ(笑)。
サフォン氏、我が山の図書館にありますか。

>オードリー
「ティファニーで朝食を」を読んでみました。
カポーティはマリリン・モンローをイメージして書いたそうですが、僕はオードリーがどうしても浮かんでしまいましたね^^

アンディ・ウィリアムズは、「ムーン・リバー」の外「ある愛の詩」「ゴッドファーザー愛のテーマ」といった映画音楽に縁がありましたね。
僕の上司だった人が「モア」をよく歌いましたが、あれも「世界残酷物語」の主題曲でした。
オカピー
2012/10/25 22:05

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