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zoom RSS 映画評「アントキノイノチ」

<<   作成日時 : 2012/10/10 10:57   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2011年日本映画 監督・瀬々敬介
ネタバレあり

感染列島」と「ヘヴンズ・ストーリー」ではまるで同じ監督の作品と思えない作風、内容、出来映えを示した瀬々敬介監督が、さだまさしの同名小説を映画化したドラマ。

吃音傾向がある(思うに彼の吃音はそれほど軽くはない。僕も緊張すると言葉が出て来ない時があるが、あそこまでひどくはない。僕程度を軽いと言うべきであろう)二十歳ぐらいの若者・岡田将生が、孤独死を遂げた後誰もいなくなった家若しくは部屋の遺品整理をする“クーパーズ”に勤め始める。同僚は彼の精神科通院といった訳ありをある程度知っている為に優しく接してくれ、これまた訳ありの同年輩の美人・榮倉奈々の指導を受けるうちを互いに過去を話す仲になる。
 彼の訳ありは、一つはロッククライミング部の同級生・松坂桃李のいじめが原因で校舎から飛び降りた友人の染谷将太の死を自分もいじめられていた為に止められなかったこと。もう一つは、その松坂のいじめや彼の嘘を周囲が知りながら何もしてくれなかったこと。結局それで躁鬱病になった彼はそれを半ば克服して仕事に就いたわけだが、人が死んだ後を見ることで相対的に人の生を見ることが出来るようになり積極的に生きる意味を見出すようになる。
 奈々ちゃんの訳ありは、レイプされたことを母親に咎められた上に妊娠した子供をどうするか決めないうちに流産してしまったこと。彼女は「胎児が自殺した」と思って苦悩して自傷行為に走った過去がある。
 突然老人ホームに転職した彼女は住居者の世話に生き甲斐を感じている様子だが、初期認知症を患っていた初老婦人が死んだ時たまたま岡田君が訪れる。彼が急遽遺品整理を行なっているうちに憤懣やるかたないといった夫君・柄本明が態度を急変させる。この後浜辺に出た二人は「あん時の命」からアントニオ猪木を想起し、「元気ですか」と海に向って叫ぶ。

本作で最初に興味を引くのは扱われる職業である。正に「おくりびと」を彷彿とする。死を通して生を見つめるという態度も途中まではしっかりと扱えて悪くなかったと思う。
 非常にデリケートな素材なのでこれでも気に入らない人がいらっしゃるようだが、大衆映画である以上この程度の甘さは大目に見て良い。

が、本作は松山善三が「名もなく貧しく美しく」(1961年)でやった失敗を最後に繰り返している。これがいけない。生の意味に気付いたヒロインを何故に交通事故で殺してしまうのか。いくら最後に岡田君が爽やかに笑っても観客は必ずしも明るい気持ちで映画館を後にすることはできないであろう。仮に出来たとしても、折角良い気持ちになったところで殺すのは作劇上大した意味がなく、こんなことで感動させようとするのは下劣極まりない。
 この為に――原作ではどうなっているか知らないが――本作は下手なお涙頂戴並みの映画になり下がり、やはり「感染列島」の監督の作品だなあという嘆息が出てしまう。少し難しい言い回しで表現すると、“九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)にかいた”典型である。採点は出血大サーヴィスでござるよ。

岡田君を見ると思い出すダルヴィッシュ(レンジャーズ)、惜しくも負けちゃったねえ。

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アントキノイノチ〜反則すれば何でもできる
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佐藤秀の徒然幻視録
2012/10/10 11:46
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□作品オフィシャルサイト 「アントキノイノチ」 □監督・脚本 瀬々敬久□脚本 田中幸子□原作 さだまさし□キャスト 岡田将生、榮倉奈々、松坂桃李、原田泰造、染谷将太、檀 れい、      鶴見辰吾、柄本 明、堀部圭亮、吹越 満、津田寛治、宮崎美子■鑑賞日 1... ...続きを見る
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真紅のthinkingdays
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
劇場公開の前宣伝から、ふざけたタイトルだな〜と思ってましたが・・・・内容は深刻で・・・・
人間、身内などの死を見てはじめて死とか生きているとかをかんじるようで・・・
元気ですか〜と叫ぶところで終わってりゃいいものを・・・
まさに九仞の功を一簣にかきました。

『悪の祭典』という映画が公開されましたが、ダルビッシュの弟が出演しています。
親の七光りならぬ、兄貴の七光りというやつですかな?
ねこのひげ
2012/10/11 04:56
ねこのひげさん、こんにちは。

>ふざけたタイトル
さだまさしとは結びつきませんでしたが、たまたま似ているだけであって、本当にアントニオ猪木に絡ませてくるとは。

本当に「元気ですか〜」で終ってくれれば、と思います。

>『悪の祭典』
ふーむ、野球選手でも芸能界に七光がきく時代ですか(笑)。
オカピー
2012/10/11 22:31

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