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zoom RSS 映画評「30デイズ・ナイト」

<<   作成日時 : 2012/09/15 12:02   >>

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☆☆(4点/10点満点中)
2007年アメリカ映画 監督デーヴィッド・スレイド
ネタバレあり

ゾンビ映画は吸血鬼映画から派生した亜流であるが、その亜流のお陰でご本家の吸血鬼映画が幅を広げながら90年代以降再び隆盛している。しかるに、吸血鬼ものに比べたらルールが適当で悪貨と言わざるを得ないゾンビ/アンデッドものから要素を逆輸入して相対的に良貨だった吸血鬼映画が大分出鱈目になってきたのは困る。“駆逐されないだけまし”と、草葉の陰からグレシャムは仰っているじゃろう。
 そもそも吸血鬼は同じように一度は死んだ者なのにゾンビと違って優秀な頭脳を持っているから人をむやみに襲わない。吸血鬼が余りに増えたら寧ろ困るのは自分たちだからである。確か星新一のショートショートに最後の一人になった人間にはどの吸血鬼も手が付けられないというお話があったような気がするが、それに加えて太陽(光)と十字架とにんにくに弱いというのが古典的原則で、そこからサスペンスを生み出していた。想像力のある人なら余りに力の差のありすぎる者との闘いには却って興が殺がれるであろう。僕がゾンビ映画から受ける印象が正にそれなのである。
 つまり、ネズミ算式に増えるゾンビの類に限られた人間が身を守れる筈がない。それを何とかしようとするところにサスペンスを感じる人もいるだろうが、冷静になって考えて観れば機関銃を持っている相手に竹槍をもって向うようなもので、ゾンビ映画の隆盛は全く理解できないでいる。最後の一人がゾンビ若しくはアンデッドになった時彼らの運命はどうなるかその方が余程知りたいくらいで、是非そういうゾンビ/アンデッド映画を作ってください。その点クラシックな吸血鬼ものは吸血鬼側に色々な制約がある為却って楽しめるのである。
 ところが、昨今太陽にも十字架にも強い吸血鬼が現れ、ゾンビよろしくやたらに襲いまくる輩も出て来て、こうなると吸血鬼映画もつまらなくなるだけ。

そこへ行くと本作の吸血鬼は光に弱い従来型で誠に結構であるし、アラスカの30日間の極夜という長い夜を加えて30日間どう逃げ回り時にどう闘うかというサバイバル形式にしたのも一応良いアイデアである。主人公ジョシュ・ハートネットが最後に取る英雄的行動も【毒を以って毒を制す】方式で面白い部類。
 しかるに、ここに現れた吸血鬼の一群がどうも人間を敵視していて皆殺しを狙っているらしいのには首を傾げざるを得ない。吸血鬼に限らず生物は餌を食べ過ぎては自らが飢えることになる。まして吸血鬼は咬むことで新たな吸血鬼を産み、それを益々進める。他方、小説や古い吸血鬼映画が彼らに知恵を授け多くの制約を設けたのは吸血鬼を無制限に感染していく強力すぎる病原菌にしない為である。本作の場合はそこを無視して、こんな狭い地区の人間を皆殺しにしていこうとする。首を切ることで仲間を増やさない方法も採っているようだが、徹底していない。脳がスカスカで将来のことを考える頭がないゾンビと同じように襲いまくるのは彼らの生存論理からすると変であろう(ただ、彼らは吸血鬼の血も吸っているのでかなり長持ちしそうだが、本来これはルール違反)。ゾンビものとの差別化という意味でも問題が多く、現にゾンビ映画と思っている方がallcinemaにいらした。

映画における吸血鬼の恐怖はヒッチコックの「下宿人」(1926年)のように市井のどこかに殺人犯がいるという恐怖に近かったはずである。そこを一歩譲ってこの町に限り全滅を狙って襲撃するのは良いと認めるとして、画面的に問題が多い。アクションになると例によってカメラが揺れるのである。しかもHDからフィルムへの変換等の問題なのかTVで観ると動きが非常にぎこちなく、肝心のアクションになると見る気が失せるのだから困る。
 2007年製なのでこの辺りは程々にしておくが、この二つの問題点は5年後の今も依然として解決していない。純粋テクノロジーの問題はともかく、見づらいという弊害に加えて映像言語的見地において間違っていると言わざるを得ない考えに基づく、アクション=手持ちカメラという馬鹿の一つ憶えだけは早く捨てるべきである。

地球上の全員がゾンビになった映画を望む。吸血鬼版でも良いよ。誰も観ないだろうなあ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
吸血鬼とか、アンデッドとか、みなさん、お好きなようですね。
現在も『バイオハザード5ルトビューション』が公開されてますし、『リンカーン秘密の書』というリンカーン大統領が、若き日に吸血鬼を退治していたという映画が11月1日から公開されます。
監督がティム・バートンなのでおもしろいかも。
小説は読みましたが、怪作でおもしろかったですよ。アメリカを支配していたのは、実はバンパイアだった・・・・(^_^.)

そうそう銀座シネパトスが来年、2013年3月に閉鎖されます。耐震基準を満たしてないという事らしいです。
昭和レトロが、またひとつ消えて行きます。
ねこのひげ
2012/09/16 05:26
ねこのひげさん、こんにちは。

僕は色々なジャンルが見たいので、同じジャンルや同趣向のものが続くのは嫌なんですよね。
まして、本文で書いたように、ゾンビ物にはサスペンスを感じる要素が全くないので、どうしてこう流行るのか理解に苦しんでおります。

吸血鬼ものの変化球で面白かったのは、「ドラゴンVS7人の吸血鬼」。
珍作で、デタラメも良いところですが、こういう途方もない組合せは上手く作るとおいしい料理になります。

リンカーンと吸血鬼という組合せも奇想天外ですね。面白くなりそうですが、バートンの色調が吉と出るか凶と出るか。

>銀座シネパトス
この名称になったのは僕が東京を離れた後ですが、元々古い映画館ですよね。
僕が通った映画館主に名画座ですが、残っているのは早稲田松竹、飯田橋ギンレイホール(それほど行っていない、飯田橋は佳作座の方が多かった)くらいですか。
オカピー
2012/09/16 22:44

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